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21.プレゼント
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清らかな風が入ってきた。
彼女が部屋に入って来た時俺はそう感じた。
その人はルドルフのお姉さんのシャルロッテ様。今日は他の会場で開催されている『姉の誕生会という名のお見合いパーティー』(参加者はほぼ適齢期の男性)に出席しているので、顔を合わせるのは夕食後の予定だったはずなんだけど…それにしてもルドルフ以上の綺麗な顔があるとは思ってなくって口をポカーンと開けて彼女を眺めてしまった。俺今すっごい馬鹿な顔になってる!いけないいけない!礼儀!
「ルドルフの姉のシャルロッテです。あなたが『あの』リュ君?」
「はい。リュと申します。お初にお目にかかります…ところで『あの』とはどういう?」
礼儀は何とか取り戻したが『あの』とは何だ?ルドルフは俺の事なんて言ってるんだ?ルドルフをちらっと見ると目をそらされた。
「ルドルフの魅了が効かなくて、不正に入学した学生をやっつけて、石壁壊してーーそんな感じですわ」
間違ってはいない…
「あぁこの間女性の先生にお姫様抱っこされたとか」
それも正しいがもうちょっと伝え方を考えて欲しいなぁ、美味しい食事くらいじゃ許さんぞルドルフ。
「それよりもあなたパーティはどうしたの?まだ終了の時間ではないはずよ」戸惑いを浮かべたルイーゼ様がシャルロッテ様に話しかけた。
「つまらないので強制的に終了にいたしました」
使用人を含む全員に衝撃が走る。立ち直りが早かったのはエルンスト様だった。
「つまらないとは?皆さんあなたのお祝いに来てくれたのですよ?どうしてそんな…」
「つまらないものはつまらないのです。どの殿方も何とか自分を少しでも良く見せようと必死でみっともないですわ。そんな物を見せられて嬉しい訳ないでしょう?」
言い切った!素晴らしい!でも、他の人からは『気持ちはわかるがもう少し穏便に』という雰囲気が滲んでいる。まあそうだよな、貴族だから付き合いってものがあるだろうし。とりあえず強制的に帰らされた方達にお詫びの手紙を出すようにエルンスト様は執事さんに指示を出した。
あ!そう言えば俺誕生日のプレゼント持って来たんだった。夕食後の予定だったけど、このゴタゴタに紛れて渡してしまおう。
「お誕生日おめでとうございます。これは私からのささやかなプレゼントです。受けとっていただけると幸いです」
包みを渡す事が出来た。これで俺のミッションの大半は終了!でもプレゼント本当にこれでいいのかな?おばばの占い通りにしてみたけど…
美しい所作で彼女は包みを受け取りそっと開けた。
「あら!」声が上がった。
やばい、おばばの占い外れたか?
「素晴らしいわ!これどこで手に入れたの?」
数日前、ルドルフのお姉さんへのプレゼントに悩んでいた俺におばばからの手紙が届いた。
『図書館に行け』
訳がわからない…でも行くしかないか、他に考えもないし。行ってみると、いつもは静粛な雰囲気の図書館が今日は何かが違っていた。
「何だあれ?」
一角に人だかりが出来ていて盛り上がっているようだ。いつも通り定位置で勉強しているルドルフを発見して尋ねてみた。
「あぁあれは本の下げ渡しだよ」
学園の図書館は本の寄贈も多く棚はいつも満員御礼状態。その為何冊も同じ本が被ったりした場合は「必要な方がいたらどうぞ」=下げ渡し、らしい。本の愛好家が多い学園内ではちょっとしたイベントの様になっているとルドルフ談。おばばの言ってたのはこれか!俺も参加しよう。
ざわついている学生&先生の隙間から覗くと今正に何冊かの本の下げ渡しが行われている。すでに取り合いになっている本もあるようだが…どれを選べばいいのか?
と悩んでいるとふと1冊のオンボロ古書が目に入った。かなり年季の入った表紙は題名すら読み取れず、そのせいか誰も欲しいと手をあげていない。でも俺を呼んでる気がするんだよなアレ。
「この本俺に下さい!」
そうして無事にそのオンボロ古書が手に入った。表紙の埃をそっとはらうと金色の文字で題名らしき綴りがあらわれたが掠れて読めないし、中を開くと紙が破れそうなパリパリという音がして恐ろしくて中身を確認する事さえ出来なかった。仕方ないので埃だけは取り除き包装紙に(俺にしては)丁寧に包んでプレゼントにしたのだった。
「これ初版本よ!ありがとう嬉しいわ」
シャルロッテ様はオンボロ古書を大事に抱きしめて大喜びしている。どうやらシャルロッテ様もルドルフと同じで勉強好きで本好き。特に歴史書がお好みらしく、俺が渡した本は好みにピッタリだったらしい。おばばの占い恐るべし。何となく穏やかな雰囲気に戻ったなと思ったその時
「ご主人様申し上げます!」
と執事さんが部屋に駆け込んできた。
「何ですかそのような大声を上げて。お客様の前ですよ」
とエルンスト様がたしなめたが、執事さんの慌てっぷりは止まらない。
「メヒティルト様のお家の…御当主様がいらっしゃいました。ルドルフ様のご帰宅もご存知のようで、この間のリュ様の村での騒動の謝罪をと仰ってますがいかがなさいますか?」
次から次へとびっくりな事が起こりすぎ…
彼女が部屋に入って来た時俺はそう感じた。
その人はルドルフのお姉さんのシャルロッテ様。今日は他の会場で開催されている『姉の誕生会という名のお見合いパーティー』(参加者はほぼ適齢期の男性)に出席しているので、顔を合わせるのは夕食後の予定だったはずなんだけど…それにしてもルドルフ以上の綺麗な顔があるとは思ってなくって口をポカーンと開けて彼女を眺めてしまった。俺今すっごい馬鹿な顔になってる!いけないいけない!礼儀!
「ルドルフの姉のシャルロッテです。あなたが『あの』リュ君?」
「はい。リュと申します。お初にお目にかかります…ところで『あの』とはどういう?」
礼儀は何とか取り戻したが『あの』とは何だ?ルドルフは俺の事なんて言ってるんだ?ルドルフをちらっと見ると目をそらされた。
「ルドルフの魅了が効かなくて、不正に入学した学生をやっつけて、石壁壊してーーそんな感じですわ」
間違ってはいない…
「あぁこの間女性の先生にお姫様抱っこされたとか」
それも正しいがもうちょっと伝え方を考えて欲しいなぁ、美味しい食事くらいじゃ許さんぞルドルフ。
「それよりもあなたパーティはどうしたの?まだ終了の時間ではないはずよ」戸惑いを浮かべたルイーゼ様がシャルロッテ様に話しかけた。
「つまらないので強制的に終了にいたしました」
使用人を含む全員に衝撃が走る。立ち直りが早かったのはエルンスト様だった。
「つまらないとは?皆さんあなたのお祝いに来てくれたのですよ?どうしてそんな…」
「つまらないものはつまらないのです。どの殿方も何とか自分を少しでも良く見せようと必死でみっともないですわ。そんな物を見せられて嬉しい訳ないでしょう?」
言い切った!素晴らしい!でも、他の人からは『気持ちはわかるがもう少し穏便に』という雰囲気が滲んでいる。まあそうだよな、貴族だから付き合いってものがあるだろうし。とりあえず強制的に帰らされた方達にお詫びの手紙を出すようにエルンスト様は執事さんに指示を出した。
あ!そう言えば俺誕生日のプレゼント持って来たんだった。夕食後の予定だったけど、このゴタゴタに紛れて渡してしまおう。
「お誕生日おめでとうございます。これは私からのささやかなプレゼントです。受けとっていただけると幸いです」
包みを渡す事が出来た。これで俺のミッションの大半は終了!でもプレゼント本当にこれでいいのかな?おばばの占い通りにしてみたけど…
美しい所作で彼女は包みを受け取りそっと開けた。
「あら!」声が上がった。
やばい、おばばの占い外れたか?
「素晴らしいわ!これどこで手に入れたの?」
数日前、ルドルフのお姉さんへのプレゼントに悩んでいた俺におばばからの手紙が届いた。
『図書館に行け』
訳がわからない…でも行くしかないか、他に考えもないし。行ってみると、いつもは静粛な雰囲気の図書館が今日は何かが違っていた。
「何だあれ?」
一角に人だかりが出来ていて盛り上がっているようだ。いつも通り定位置で勉強しているルドルフを発見して尋ねてみた。
「あぁあれは本の下げ渡しだよ」
学園の図書館は本の寄贈も多く棚はいつも満員御礼状態。その為何冊も同じ本が被ったりした場合は「必要な方がいたらどうぞ」=下げ渡し、らしい。本の愛好家が多い学園内ではちょっとしたイベントの様になっているとルドルフ談。おばばの言ってたのはこれか!俺も参加しよう。
ざわついている学生&先生の隙間から覗くと今正に何冊かの本の下げ渡しが行われている。すでに取り合いになっている本もあるようだが…どれを選べばいいのか?
と悩んでいるとふと1冊のオンボロ古書が目に入った。かなり年季の入った表紙は題名すら読み取れず、そのせいか誰も欲しいと手をあげていない。でも俺を呼んでる気がするんだよなアレ。
「この本俺に下さい!」
そうして無事にそのオンボロ古書が手に入った。表紙の埃をそっとはらうと金色の文字で題名らしき綴りがあらわれたが掠れて読めないし、中を開くと紙が破れそうなパリパリという音がして恐ろしくて中身を確認する事さえ出来なかった。仕方ないので埃だけは取り除き包装紙に(俺にしては)丁寧に包んでプレゼントにしたのだった。
「これ初版本よ!ありがとう嬉しいわ」
シャルロッテ様はオンボロ古書を大事に抱きしめて大喜びしている。どうやらシャルロッテ様もルドルフと同じで勉強好きで本好き。特に歴史書がお好みらしく、俺が渡した本は好みにピッタリだったらしい。おばばの占い恐るべし。何となく穏やかな雰囲気に戻ったなと思ったその時
「ご主人様申し上げます!」
と執事さんが部屋に駆け込んできた。
「何ですかそのような大声を上げて。お客様の前ですよ」
とエルンスト様がたしなめたが、執事さんの慌てっぷりは止まらない。
「メヒティルト様のお家の…御当主様がいらっしゃいました。ルドルフ様のご帰宅もご存知のようで、この間のリュ様の村での騒動の謝罪をと仰ってますがいかがなさいますか?」
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