20 / 51
20.お屋敷にて(ルドルフ視点)①
しおりを挟む
やっと私の屋敷に一緒に行く約束をする事ができた。少し強引な手を使ったがこうでもしないと無理だったので気にしない事にした。
行きの馬車内で「お前覚えてろよ!」とは言われたが本当に嫌ならとっとと逃げ出しているはずなので(それをできるだけの能力はある)その言葉も気にしない。でも一応美味しい食事でもてなす(ごまかす)予定にしているのでご勘弁願いたい。いつも一緒に食堂で食事をしているので好みはリサーチ済み。今頃屋敷のコックが準備に勤しんでいる事だろう。
学園の馬車は王族が乗る事もあるので乗り心地は素晴らしく数時間の道中も苦にならなかった。
「おぉー本当にお屋敷だー。緊張する…」
使用人たちが出迎えてくれるなか屋敷に入る。久しぶりの我が家はいつも通り暖かい雰囲気に包まれている。
「やあ、君がルドルフの言ってたリュ君だね。初めまして。父のエルンストだ。こちらは妻のルイーゼ。今日は来てくれて本当に嬉しい。是非我が家でゆっくりしていってくれたまえ」
父と母が現れた。
リュはどのように反応するのか?と思って横を見ると
スッと作法通りの礼をし
「リュと申します。お招きありがとうございます」
『突貫工事で何とか覚えた』と本人は言っていたがなかなかサマになっている。ぎこちなさは否めないが、何だろう?筋が通っているというか綺麗な形になっているのが不思議だ。後で父に聞いたら『身体をキチンと鍛えているから姿勢が保てて礼が崩れず美しく見えるのだよ』と教えてくれた。私も図書館ばかり行かずに少しは運動をするかな…
「…あとこちら大した物ではございませんが滞在のお礼に是非お受け取り下さい」
リュは執事に何かを渡した。それは薬草だった。
「我が村の特産品です。この薬草はどの薬に混ぜてもその薬の効き目を上げる効果がございます。執事様が薬草に大変お詳しいとお聞きしましたのでご確認いただけたら」
父に目で促された執事は薬草を確認し
「これは!なかなか手に入れるのが難しい貴重な薬草です!実物を見るのは私も久しぶりです」と驚いた。
「それからこちらは使用人の皆さんでお使い下さい。伯母の薬草店の商品で、ちょっとした傷やあかぎれならこれを塗ると1日で治ると評判になっている物です」
と猫のシルエットが描かれた入れ物に入った物も渡した。
「これはひょっとしてあの『ゲルダの薬草店』の『ピピの塗り薬』では?」
母の側に控えてた侍女長が声をあげた。彼女に言うところによると『売れすぎていてなかなか手に入らないレア商品』のようだ。馬車に乗る前にゲルダさんの店に寄り道したのはこの為か…しかしこれだけ高価な品物買って大丈夫なのか?とリュに耳打ちすると『薬草はおばばが持ってけってくれた。塗り薬は宣伝になるからタダでいいって』と小声で返ってきた。やはりゲルダさん商売人だ…
応接室に場所を移し、ゆったりとお茶をしながら話がはずんだ。彼の緊張も少しほぐれたように見える。
「そう言えばルドルフから聞いたのだが、ハインリヒ君が不正入学だった事を暴かれる前から知っていたようだったと…本当かね?」身を乗り出す父。
「あ!それ私も知りたかったんだ。教えてくれないか?」
リュは目をぱちくりして
「えーどこから話せば…」
私の父は森に入る時私に常々
『いいか、森に入ったら周りを良く観察しろ。昨日と違う所はないか?周りと様子がおかしい所はないか?と気を配れ。それが出来ない奴は森で仕事をする事は出来ない。絶対だ、分かったな』と言ってます。
学園という新しい環境に入るのは新しい森に入るようなものと考えて良く周りを観察するようにしていたら気がついたのです。
入学式の後クラスで自己紹介の時間があり、仮面のルドルフ君の時、半分くらいの学生は『あぁ魅了の…』という反応。残りは『仮面の理由は?』『本人がいうまで聞かない方がいいかも』といった感じで変な先入観がなさそう、少なくともマイナスな感じは受けなかったんです。
学園の選抜基準は『人格』。クラスの様子を見るに変な先入観を持たず差別的な考えも持たない又は持ったとしても表には出さない人格が選ばれているのではと私は判断しました。考えてみれば当たり前ですよね。貴族の子弟に家名を名乗るのも禁止しているくらい身分差をなくして教育をする場なのですから。
それなのに私の番になった時クラスで誰も浮かべてない『差別的』な『嫌悪感』たっぷりの表情をこちらに向けている学生が1人だけいたので驚きました。それが羽…ハインリヒ君でした。これだけなら『選抜が甘かったのかな?』と思われるのですが、他の学年の学生さんたちと話したり接触したりしているうちに他に誰1人そんな学生はいない事に気がついてしまい…『選抜が甘い』ではなく『選抜の不正』の可能性に至ったわけです。
なるほど筋が通ってる…でもハインリヒ君の名前は覚える気がないのか…
話を頷きながら聞いていた父はいたく感心した様子で
「12歳とは思えないくらいの思考力だね。ルドルフいい友人を得たな。ところでリュ君」
椅子から身を乗り出して
「うちの遠縁に後継のいない家があって…」
「ちょっと…」と私と母が話を止めようとしたその時
急にドアが開けられた。
「私もお話に参加したいわ」
それは『我が家で1番の美形』『女傑だった曽祖母の生まれ変わり』『我が家の後継者』『話さなければ聖女のような』と色々言われている私の姉ーシャルロッテだった。
行きの馬車内で「お前覚えてろよ!」とは言われたが本当に嫌ならとっとと逃げ出しているはずなので(それをできるだけの能力はある)その言葉も気にしない。でも一応美味しい食事でもてなす(ごまかす)予定にしているのでご勘弁願いたい。いつも一緒に食堂で食事をしているので好みはリサーチ済み。今頃屋敷のコックが準備に勤しんでいる事だろう。
学園の馬車は王族が乗る事もあるので乗り心地は素晴らしく数時間の道中も苦にならなかった。
「おぉー本当にお屋敷だー。緊張する…」
使用人たちが出迎えてくれるなか屋敷に入る。久しぶりの我が家はいつも通り暖かい雰囲気に包まれている。
「やあ、君がルドルフの言ってたリュ君だね。初めまして。父のエルンストだ。こちらは妻のルイーゼ。今日は来てくれて本当に嬉しい。是非我が家でゆっくりしていってくれたまえ」
父と母が現れた。
リュはどのように反応するのか?と思って横を見ると
スッと作法通りの礼をし
「リュと申します。お招きありがとうございます」
『突貫工事で何とか覚えた』と本人は言っていたがなかなかサマになっている。ぎこちなさは否めないが、何だろう?筋が通っているというか綺麗な形になっているのが不思議だ。後で父に聞いたら『身体をキチンと鍛えているから姿勢が保てて礼が崩れず美しく見えるのだよ』と教えてくれた。私も図書館ばかり行かずに少しは運動をするかな…
「…あとこちら大した物ではございませんが滞在のお礼に是非お受け取り下さい」
リュは執事に何かを渡した。それは薬草だった。
「我が村の特産品です。この薬草はどの薬に混ぜてもその薬の効き目を上げる効果がございます。執事様が薬草に大変お詳しいとお聞きしましたのでご確認いただけたら」
父に目で促された執事は薬草を確認し
「これは!なかなか手に入れるのが難しい貴重な薬草です!実物を見るのは私も久しぶりです」と驚いた。
「それからこちらは使用人の皆さんでお使い下さい。伯母の薬草店の商品で、ちょっとした傷やあかぎれならこれを塗ると1日で治ると評判になっている物です」
と猫のシルエットが描かれた入れ物に入った物も渡した。
「これはひょっとしてあの『ゲルダの薬草店』の『ピピの塗り薬』では?」
母の側に控えてた侍女長が声をあげた。彼女に言うところによると『売れすぎていてなかなか手に入らないレア商品』のようだ。馬車に乗る前にゲルダさんの店に寄り道したのはこの為か…しかしこれだけ高価な品物買って大丈夫なのか?とリュに耳打ちすると『薬草はおばばが持ってけってくれた。塗り薬は宣伝になるからタダでいいって』と小声で返ってきた。やはりゲルダさん商売人だ…
応接室に場所を移し、ゆったりとお茶をしながら話がはずんだ。彼の緊張も少しほぐれたように見える。
「そう言えばルドルフから聞いたのだが、ハインリヒ君が不正入学だった事を暴かれる前から知っていたようだったと…本当かね?」身を乗り出す父。
「あ!それ私も知りたかったんだ。教えてくれないか?」
リュは目をぱちくりして
「えーどこから話せば…」
私の父は森に入る時私に常々
『いいか、森に入ったら周りを良く観察しろ。昨日と違う所はないか?周りと様子がおかしい所はないか?と気を配れ。それが出来ない奴は森で仕事をする事は出来ない。絶対だ、分かったな』と言ってます。
学園という新しい環境に入るのは新しい森に入るようなものと考えて良く周りを観察するようにしていたら気がついたのです。
入学式の後クラスで自己紹介の時間があり、仮面のルドルフ君の時、半分くらいの学生は『あぁ魅了の…』という反応。残りは『仮面の理由は?』『本人がいうまで聞かない方がいいかも』といった感じで変な先入観がなさそう、少なくともマイナスな感じは受けなかったんです。
学園の選抜基準は『人格』。クラスの様子を見るに変な先入観を持たず差別的な考えも持たない又は持ったとしても表には出さない人格が選ばれているのではと私は判断しました。考えてみれば当たり前ですよね。貴族の子弟に家名を名乗るのも禁止しているくらい身分差をなくして教育をする場なのですから。
それなのに私の番になった時クラスで誰も浮かべてない『差別的』な『嫌悪感』たっぷりの表情をこちらに向けている学生が1人だけいたので驚きました。それが羽…ハインリヒ君でした。これだけなら『選抜が甘かったのかな?』と思われるのですが、他の学年の学生さんたちと話したり接触したりしているうちに他に誰1人そんな学生はいない事に気がついてしまい…『選抜が甘い』ではなく『選抜の不正』の可能性に至ったわけです。
なるほど筋が通ってる…でもハインリヒ君の名前は覚える気がないのか…
話を頷きながら聞いていた父はいたく感心した様子で
「12歳とは思えないくらいの思考力だね。ルドルフいい友人を得たな。ところでリュ君」
椅子から身を乗り出して
「うちの遠縁に後継のいない家があって…」
「ちょっと…」と私と母が話を止めようとしたその時
急にドアが開けられた。
「私もお話に参加したいわ」
それは『我が家で1番の美形』『女傑だった曽祖母の生まれ変わり』『我が家の後継者』『話さなければ聖女のような』と色々言われている私の姉ーシャルロッテだった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
【書籍化進行中、完結】私だけが知らない
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
髪の色は愛の証 〜白髪少年愛される〜
あめ
ファンタジー
髪の色がとてもカラフルな世界。
そんな世界に唯一現れた白髪の少年。
その少年とは神様に転生させられた日本人だった。
その少年が“髪の色=愛の証”とされる世界で愛を知らぬ者として、可愛がられ愛される話。
⚠第1章の主人公は、2歳なのでめっちゃ拙い発音です。滑舌死んでます。
⚠愛されるだけではなく、ちょっと可哀想なお話もあります。
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

【完結】浅い眠りのなかで
ここ
ファンタジー
次代の聖女として教育されていたカティアだが、実は聖女ではなかったことがわかる。暮らしていたお城から出て冒険者になった。
しかし、婚約者だった第一王子は納得してなくて??
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる