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第16話『歯車』
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ふと、目が覚めて体を起こす。部屋の中は真っ暗でまるで屋敷に1人かのように物音1つしなかった。
自分がいつ眠ったのか覚えていなくて、でも長い時間寝ていたのだろうか、喉がからからに乾いていた。水を飲みに行こうと水差しを片手にとったけれどいつの間にか空っぽになっていたことに気がつく。
「ご用があったら鳴らしてくださいね?」とメリナさんに言われたベルも、こんな夜中にならずには気が引けて、静かに部屋を出て暗い廊下をぺたぺた歩く。階段へ向かって歩いていくと下の部屋はあかりが着いていてまだ誰か起きているのだとぼんやり思った。
水差しを落とさないように腕に抱え階段をよろよろと降りる。前にメリナさんと一緒に行った厨房で水差しが沢山置いてあったのを思い出した私はぺたぺたと足音を響かせて暗い廊下を歩いていく。
すると部屋から仄かなあかりと喧嘩するような声が聞こえてきた。
「ねぇメリナ、もう時間が無いんだ、わかってくれないか、」「ですがそれではかなちゃんがあまりにも、」「私だって嫌だと思っている、だが逆らえばどうなるか、」「そう、ですね、、でも!」「あぁわかっている、最前は尽くそう。」
2人のあまりにも悲痛なくらい声に私は何か聞いてはいけないことを聞いてしまった気がして慌てて部屋に戻った。水を貰うのも忘れて手には空っぽの水差しと、うるさい心臓の音と息遣い、それだけが残った。
私はベッドの中に潜り込むと全ての考えを頭から追いやって必死に目を瞑る。
だけど、暗くなれば寝ようとすればする程眠れなくなって、追いやろうとした考えが頭の中でぐちゃぐちゃになって1番最悪な考えに向かっていく。悶々と毛布の中で考え続けてしまって眠れないまま空が明るくなっていく
。
「おはようございます!かなちゃん」そうにこやかに笑うメリナさんの目じりはどこか赤みがさしていたけれど、眠れない夜を過ごした私はメリナさんを見るのが怖くて、顔を上げられなくて気づくことも無かった。
いつも通りの朝ごはん、お勉強、いつも通りの筈なのに、かすかに感じる違和感と、緊張の気配に私は、3人で暮らした日常がまるで古い時計の歯車が抜けたかのように上手く噛み合わさることがなくなって行くような気配を感じた。
自分がいつ眠ったのか覚えていなくて、でも長い時間寝ていたのだろうか、喉がからからに乾いていた。水を飲みに行こうと水差しを片手にとったけれどいつの間にか空っぽになっていたことに気がつく。
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水差しを落とさないように腕に抱え階段をよろよろと降りる。前にメリナさんと一緒に行った厨房で水差しが沢山置いてあったのを思い出した私はぺたぺたと足音を響かせて暗い廊下を歩いていく。
すると部屋から仄かなあかりと喧嘩するような声が聞こえてきた。
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だけど、暗くなれば寝ようとすればする程眠れなくなって、追いやろうとした考えが頭の中でぐちゃぐちゃになって1番最悪な考えに向かっていく。悶々と毛布の中で考え続けてしまって眠れないまま空が明るくなっていく
。
「おはようございます!かなちゃん」そうにこやかに笑うメリナさんの目じりはどこか赤みがさしていたけれど、眠れない夜を過ごした私はメリナさんを見るのが怖くて、顔を上げられなくて気づくことも無かった。
いつも通りの朝ごはん、お勉強、いつも通りの筈なのに、かすかに感じる違和感と、緊張の気配に私は、3人で暮らした日常がまるで古い時計の歯車が抜けたかのように上手く噛み合わさることがなくなって行くような気配を感じた。
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