神獣様の愛し子

夏野 紅琳

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第0話『昔話』

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むかしむかし、ある所に心優しい少女がいた。彼女は白き獣と共に魔を斥け国々に魔除けの結界をつくる旅をしていた。ある海沿いの街では人々の傷を治癒の歌で治し、ある山沿いの街では森林伐採のせいで怒り狂う山神様の怒りを沈めるために山を癒した。

しかし旅の途中、少女の力を奇跡の力だと思った人間のひとりが少女の血を飲むことで不老不死になれるという噂を流す。そのせいでひとりと一匹の旅は大変なものとなった。

魔を倒すために振るわれた力を持つ白き獣には人を傷つけることは容易かったが、少女の否定により白き獣の力は人に振るわれることは無く少女は攫われ傷つけられてしまう。それでも少女は血ぐらいならと助けに来た白き獣の背にまたがり逃げ続けるだけで人を傷つけることはなかった。

そんなふたりぼっちの旅はついに最後の国へ辿り着いたが、結界をはる途中、国王様に捕まってしまう。国王様に妻にと望まれた少女は否定をするが強欲な王様は否定するなど!と怒り狂い少女を牢屋に閉じ込めてしまう。それでも少女は歌を歌い国に結界を貼り終えた。

しかし少女は牢屋に閉じ込められたまま不老不死になれると噂を聞いた国王様に血を抜かれ続け弱ってゆく、そこをやっと白き獣が少女を見つけ助けるが、逃げる際に放たれた王国軍の攻撃により互いに傷を負ってしまう。

どうにか命からがら逃げ切れた先は小さな森、しかしそこにはまだ魔が残り傷ついた2人に襲いかかる。全てを倒し終えた時には少女も白き獣も、立ち上がることすら出来ずそのままその森でなくなったという。

2人は後に歌巫女と神獣と呼ばれ、2人が亡くなった森は200年だった後から真っ白な獣が見かけられることから神獣様の森と言われている。

           『聖教国3000年の歴史より』
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