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第13話『侵入』

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サーンクタの城下町は、色々な種族の人と、カラフルな建物、美味しそうな果物やパッと見美味しくなさそうな食材など、見たことの無いものが沢山あるらしい。

昼間に着いていればもっと活気があったのだろうが、生憎、私が着いたのは夜で市場どころか、外を歩いている人すらまばらだった。

まあ観光に来たわけじゃないしいいか、と思いながら王都の外れの城壁まで歩くことにした。

城の裏側に回るまでにだいぶ手間取ったが、ようやく見張りのいない場所を見つけた。城壁には登れるような出っ張りなどもちろんなく、私は浮遊魔法で城壁内に侵入しようと思ったのだが、周りに結界が貼られており、割らないと入れなくなっていた。

結界に綻びを作って侵入するのも大変だし、そう考え違う作戦を考えることにした。

朝になるのを待ち、作戦を始める。朝になると城の門が開かれる、そしたらチャンスだ、透過魔法を自分にかけ、城に侵入する、そして夜まで再び待つ、という簡単なものだ。無事、城に侵入できた私はホッと一息ついた。

しかし、いきなりの激痛が私を襲った。おかしい、今まで痛くもなんともなかったのに、なんでなんで混乱しながら呻くが、誰かに気づかれる訳もなく、私はその場に倒れ込んだ。


むにゃむにゃと寝ぼけながら寝返りをうつ、おかしい、今まで寝たこともないようなふわふわな落ち着くベッドに、肌触りのいい掛け布団がかかっている、おかしい、私は確か城に侵入したところで、そこまで考えたところでハッと目が覚めた。

ガバッと起き上がると真横に人の気配がした。恐る恐る横を眺めた先にいたのは白銀の髪に青の瞳、近衛騎士団長のヴィンセントだった。思わず身構えた私に彼は困ったように笑いかけると「具合はどうだ、大丈夫か?」と優しく声をかけてくれた。「えっと、大丈夫です」とあちこち確認しながら返事をする。

「そうか、よかった、お前鳥人だよな、どうして城内になんて倒れていたんだ?」と言われて、ぽかんとしたあと、返事をしないでいると、彼は何を思ったか、優しく頭を撫で始めた。「よしよし、辛い事があったんだな?大丈夫だ、ここなら人族は来れない。」そう言い始めた、彼の中で、私は人族に捕まり、逃げてきたというシナリオが出来ているらしい。

「あの、私、レイナ、あの、どうしてここに、」と、じっと彼を見つめると、「あぁすまない、自己紹介が遅れたな、俺はヴィンセントだ、君は先程何故か城内で倒れていたのを俺が発見してな、呼吸も荒く、危ない状態だったからこうして、俺の部屋に運んで、医者に見てもらったところだ。」そう言いながら私の頭を撫でる手は止まらない。

「それと、背中の傷も見させてもらった、痛かっただろう、よく耐えたな」と彼の方が泣きそうな顔で話していた。そして「説明はまた、後でいいもう少し寝るといい。」と、とんとんされてるうちに眠っていた。
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