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第3話 『彼の過去』

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マスターside

全ての始まりを、君には話そうか、愛しい僕の『家族』の話を、

僕の娘のロゼリアは貴族のよくある政略結婚のはてに生まれたたった一人の娘で、本来ならば幸せに、人並な生活を過ごせるはずだったんだ。確かに政略結婚だったけれど、僕と妻のセレナは互いに夫婦として幸せな家庭を作ろうと約束していた。

でも、王家主催の夜会にて、僕らより上の爵位の公爵にセレナが見初められてしまったんだ。そいつはセレナが僕の妻と知ると僕に商談を持ちかけてきたんだ、「もし君の妻セレナを俺にくれるのなら君にセレナの結納金の5倍の金貨をやろう」と、妻のセレナは嫌がっていたし、何より僕自身も嫌だったから丁寧に拒否しておいた。

だけど、それだけで終わる筈がなかったんだ、僕とセレナに否定された公爵は、何がなんでもセレナを手に入れてやると火がついてしまい、僕達への嫌がらせが始まった。

最初は、僕の領と公爵領の取引が徐々に減少して行っただけだったのだが、なんの反応も返さないと、公爵家の紋章を黒く塗りつぶしただけの鎧を纏った『盗人』が僕の館に攻め入ったこともあった。

でも、何とかセレナとロゼリアだけは守って来たんだ。『盗人』が僕の館に来たことをきにセレナとロゼリアをを1度セレナの生家レトナークに帰らせることにした。全て終わったら、迎えに行くと約束して、先にセレナを帰し、次にロゼリアを避難させる予定だった。

ロゼリアが遅れた理由としては、学園の試験があり、その日はどうしても休んで欲しくないという学園側の主張のせいだったのだ。でもセレナから遅れること一週間後には、ロゼリアを送り出した。

ロゼリアがレトナークへ向かったその日、2つの伝令が来た、ロゼリアがセレナの生家へつかない、消息不明だと、そして、セレナが原因不明の病により亡くなったと、

僕は絶望した、僕の元へ帰って来たセレナはとても冷たくもう二度と笑いかけてはくれないのだと。

レトナークへ向かったまま消えたロゼリアを探して、僕の領ルズベリーからセレナの故郷レトナークに繋がる街道を隅々まで探したし、自ら行くことは護衛にとめられたが山や谷、森の中まで捜索を依頼した。

でも何年待ってもロゼリアは見つからなかった。全てを掛けて捜索をしていたために気付いたら領主の仕事は遠い親戚の男がこなしており、僕の居場所は完全に無くなっていた。

薄汚いスラム街の奥深くでいまもロゼリアを探し求めて過ごす日々だった。

そんな日々の中ある話を風の噂で耳にしたんだ、スラムに落ちている赤ん坊を拾って自我を芽生えさせないままなくした人が生前に大切にしていたものと融合させると魂が戻ってきて生き返りを行えると。

僕は慌てて実験室を作り上げた、まず自我を芽生えさせないというところに苦労し、01はダメだった。02は融合時自我は芽生えなかったが、息もしていなかった。

2つのことを踏まえて、03、04の制作時には自我の芽生えを遅らせることに集中したがあえなく失敗。

05で自我の形成を遅らせることに成功、しかし、融合を急速に進めたことが原因で失敗。06は、融合を緩やかに進めることに成功し、人格形成時にロゼリアに近い個体が出来たが、1年と持たず、魔力切れを起こし、実験失敗。

これらを踏まえ、07制作時には、魔素を多く流しての制作を試み成功、06に較べて緩やかな魔力の消費を感知し、調整と称し魔物の体内から出る、魔石ないの魔力を入れ込む実験に挑戦中だ、なお07制作時ロゼリアに近い人格を持たせることに成功、結果を追い求めるあまり07に鞭打ちをしてしまったことを反省し、しばらく距離を置くことにした、よって07には定期的に『お使い』を頼むことにした。07には、依頼主が~と話したけれど、僕の個人的な復讐の依頼も紛れ込ませてあるんだ。しっかりこなしてくれて良かったよ。ルブローネの領主はロゼリアのことをいやらしい目で見てたんだぁ。とってもいい成果だったね?

でも、魔石融合後しばらく生死をさまよっていることから、実験は失敗するのではと推測し、08の制作に着手した。やっぱり魔物の魔石からの魔素も、緩やかな魔力調整のがよかったかなぁ?

07は実験的には成功だけどロゼリアとしては微妙に違ったからちゃんと『ロゼ』を作ってあげよう?何度失敗しても、ちゃんと僕の大切で愛しいロゼリアを、完璧に作って見せるよ?

ねぇ、セレナ、ちゃんとみててね、いつかセレナのことも迎えに行くよ。僕は歪んだ笑みをたたえながら愛しい家族に誓を立てる。

全ては僕の愛おしい家族を取り戻すために。
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