勇者だった俺は時をかけて魔王の最愛となる

ちるちる

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序章

1 終末の時

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 勇者レイは世界で最後の一人となった。

 正確に言えば、世界に、レイともう一人。終末をもたらした者がいた。

「何のために戦い続けるのか……」

 俺は、聖剣を握り、自嘲した。

 最後の仲間、王子アレクが死にどれくらいの月日が経ったか。俺は異界の狭間に辿り着き、渦をなす闇に飛び込んだ。

 闇の中心には、一人の男が佇んでいる。

 魔王となった男。眠るように目を閉じる。凄みすらあるほどの美貌。

 俺は、聖剣を振りかぶり、切りかかった。

 人が誰もいなくなったとしても、死んでいった仲間たちのためにも、諦めることは許されない。

 聖剣が男を切り裂こうとしたときに、周囲を揺蕩たゆたう闇が、俺に纏わりつく。

 男がゆっくりと目を開いた。

 禍々しいまでの深紅の瞳が、俺を見る。

 俺と目が合ったとき、その瞳の色は、紺碧こんぺきになった。海よりも空よりも蒼い・・・。

 次の瞬間、俺は、濁流に飲み込まれたようにもみくちゃにされながら、闇に吸い込まれた。

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