12 / 12
11(完)
しおりを挟む
「尊、任せてたあの書類どうなってる?」
「もうできてるよー、会長。今データ送っといた。あ、遥。議事録上がったらチェックするから一応見せて」
「了解しました。もうすぐ出来上がります」
「OK、確認する」
あれから時が経ち、俺たちは高校三年生になった。
付き合い出したことで、校内でいつも二人で過ごすようになり、セット扱いされた。
新しい役員を決める今年度の人気投票では俺が一位、尊が二位を獲り、俺は二期連続の会長に就任。
尊は副会長の座に就いたのだった。
副会長になった尊は、以前に増して仕事をバリバリこなしている。
ぶっちゃけ、尊が優秀すぎるので、以前より格段に仕事量が減り、楽になった。
生徒会メンバーは、学年が上がり順位が変わってしまったので役職は大幅に入れ替わった。
書記だった上村が三位で会計になり、副会長だった西園寺が四位で書記に、会計だった南は五位で庶務になった。
……実際、仕事の出来は後輩だけど上村の方がいいから問題無さすぎる。
前年度庶務を務めてくれた渡辺は、惜しくも順位から外れたが、次期生徒会役員として必要な存在なことは確かな為、俺が会長補佐につけた。
「会長、この書類って風紀に提出するもので合ってますか?」
「あぁ…そうだった…まずい、提出期限が今日までだ。渡辺、今から風紀室に持っていってほしいんだけど、頼めるか?」
「もちろんです。すぐに行ってきますね!」
「頼んだ。気をつけて」
俺が微笑みかけて頭を撫でると、渡辺はボッと顔を赤くしてそれを振り払うと、急いで生徒会室から出て行った。
そんなに変な行動をしてしまっただろうか、と不安になる。
自分的にはお使いにいく我が子を愛でるイメージだったのに…。
「…尊、あれ許していいんですか?」
「慶くんのタラシ具合には本当参ってるよね。毎日心配すぎて胃に穴が空きそう」
「正直、尊がDV化するのも納得できるくらい、会長ってタラシすぎだよね~」
「でしょ?出会った時から慶くんはずっとああなんだから。嫉妬しちゃうって訳」
「あなたのはやり過ぎですけどね」
三年生組の三人が何か言っていたが、振り払われたショックで落ち込んでいた俺には何も聞こえていなかった。
尊と付き合ったことが広まってから、本当に色々な人から告白された。
星崎からもう一度、改めて告白を受けたが正式に断り、それから一週間もたたないうちに尾崎、俺の親衛隊隊長、西園寺、名前も知らない人まで本当に毎日、違う人から。
理由が皆一様に口を揃えて、『あのDV男に取られるくらいなら自分の方が幸せにできる』というものだったので、尊の印象悪すぎるだろ、とあいつの自業自得すぎて思わず笑ってしまった。
でも、俺のことを幸せに出来るのは、俺のことを全身全霊で受け止めてくれるのは。
どう考えても尊以外にはいなくて。
それを言葉は濁しながら皆に伝えていくうちに俺たちの関係は認められ、そのうち告白はなくなっていった。
生徒会からの帰り道、わざと皆より少しだけ仕事を遅く終わらせて二人きりで歩く。
俺は、尊の手をぎゅっと握って声のトーンを落とした。
「尊、今日食堂寄っていかないか?」
これは、俺たちにしか分からない合図。
今日、気持ちいいことがしたい。
その為の準備に過ぎない時間。
「……また?3日前も行かなかった?」
尊が呆れたような顔で少し笑いだから俺を見る。
わざと冷たくするような態度を取る尊に、俺は甘えた声を出して反論した。
「だって今日、全然尊がこっちみてくれなかったから、寂しくて……駄目?」
尊は、俺のお願いにめちゃくちゃ弱く、頭をガシガシと掻きながら、あっさりと折れた。
「あ~、もう。いいよ、今日こそは負けないから」
「ふふ、ありがとう、尊」
俺は期待感から妖しく笑った。
尊がうっと言葉につまり、顔が赤くなる。
「……慶くんはどんどんエッチになるね」
だって、尊とするのが気持ち良すぎるから仕方ないだろう。
俺は今日も好きな人に暴かれる、本当の自分を。
どんな自分だって愛してもらえるのは心地良いし、気持ちいい。
こんな俺を受け止められるのは一人だけでいい。
これからも、尊のどんな想いも、俺の抱えている秘密もなんだって曝け出しあいたいと思うんだ。
「もうできてるよー、会長。今データ送っといた。あ、遥。議事録上がったらチェックするから一応見せて」
「了解しました。もうすぐ出来上がります」
「OK、確認する」
あれから時が経ち、俺たちは高校三年生になった。
付き合い出したことで、校内でいつも二人で過ごすようになり、セット扱いされた。
新しい役員を決める今年度の人気投票では俺が一位、尊が二位を獲り、俺は二期連続の会長に就任。
尊は副会長の座に就いたのだった。
副会長になった尊は、以前に増して仕事をバリバリこなしている。
ぶっちゃけ、尊が優秀すぎるので、以前より格段に仕事量が減り、楽になった。
生徒会メンバーは、学年が上がり順位が変わってしまったので役職は大幅に入れ替わった。
書記だった上村が三位で会計になり、副会長だった西園寺が四位で書記に、会計だった南は五位で庶務になった。
……実際、仕事の出来は後輩だけど上村の方がいいから問題無さすぎる。
前年度庶務を務めてくれた渡辺は、惜しくも順位から外れたが、次期生徒会役員として必要な存在なことは確かな為、俺が会長補佐につけた。
「会長、この書類って風紀に提出するもので合ってますか?」
「あぁ…そうだった…まずい、提出期限が今日までだ。渡辺、今から風紀室に持っていってほしいんだけど、頼めるか?」
「もちろんです。すぐに行ってきますね!」
「頼んだ。気をつけて」
俺が微笑みかけて頭を撫でると、渡辺はボッと顔を赤くしてそれを振り払うと、急いで生徒会室から出て行った。
そんなに変な行動をしてしまっただろうか、と不安になる。
自分的にはお使いにいく我が子を愛でるイメージだったのに…。
「…尊、あれ許していいんですか?」
「慶くんのタラシ具合には本当参ってるよね。毎日心配すぎて胃に穴が空きそう」
「正直、尊がDV化するのも納得できるくらい、会長ってタラシすぎだよね~」
「でしょ?出会った時から慶くんはずっとああなんだから。嫉妬しちゃうって訳」
「あなたのはやり過ぎですけどね」
三年生組の三人が何か言っていたが、振り払われたショックで落ち込んでいた俺には何も聞こえていなかった。
尊と付き合ったことが広まってから、本当に色々な人から告白された。
星崎からもう一度、改めて告白を受けたが正式に断り、それから一週間もたたないうちに尾崎、俺の親衛隊隊長、西園寺、名前も知らない人まで本当に毎日、違う人から。
理由が皆一様に口を揃えて、『あのDV男に取られるくらいなら自分の方が幸せにできる』というものだったので、尊の印象悪すぎるだろ、とあいつの自業自得すぎて思わず笑ってしまった。
でも、俺のことを幸せに出来るのは、俺のことを全身全霊で受け止めてくれるのは。
どう考えても尊以外にはいなくて。
それを言葉は濁しながら皆に伝えていくうちに俺たちの関係は認められ、そのうち告白はなくなっていった。
生徒会からの帰り道、わざと皆より少しだけ仕事を遅く終わらせて二人きりで歩く。
俺は、尊の手をぎゅっと握って声のトーンを落とした。
「尊、今日食堂寄っていかないか?」
これは、俺たちにしか分からない合図。
今日、気持ちいいことがしたい。
その為の準備に過ぎない時間。
「……また?3日前も行かなかった?」
尊が呆れたような顔で少し笑いだから俺を見る。
わざと冷たくするような態度を取る尊に、俺は甘えた声を出して反論した。
「だって今日、全然尊がこっちみてくれなかったから、寂しくて……駄目?」
尊は、俺のお願いにめちゃくちゃ弱く、頭をガシガシと掻きながら、あっさりと折れた。
「あ~、もう。いいよ、今日こそは負けないから」
「ふふ、ありがとう、尊」
俺は期待感から妖しく笑った。
尊がうっと言葉につまり、顔が赤くなる。
「……慶くんはどんどんエッチになるね」
だって、尊とするのが気持ち良すぎるから仕方ないだろう。
俺は今日も好きな人に暴かれる、本当の自分を。
どんな自分だって愛してもらえるのは心地良いし、気持ちいい。
こんな俺を受け止められるのは一人だけでいい。
これからも、尊のどんな想いも、俺の抱えている秘密もなんだって曝け出しあいたいと思うんだ。
10
お気に入りに追加
50
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
双葉病院小児病棟
moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。
病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。
この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。
すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。
メンタル面のケアも大事になってくる。
当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。
親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。
【集中して治療をして早く治す】
それがこの病院のモットーです。
※この物語はフィクションです。
実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
待てって言われたから…
ふみ
BL
Dom/Subユニバースの設定をお借りしてます。
//今日は久しぶりに津川とprayする日だ。久しぶりのcomandに気持ち良くなっていたのに。急に電話がかかってきた。終わるまでstayしててと言われて、30分ほど待っている間に雪人はトイレに行きたくなっていた。行かせてと言おうと思ったのだが、会社に戻るからそれまでstayと言われて…
がっつり小スカです。
投稿不定期です🙇表紙は自筆です。
華奢な上司(sub)×がっしりめな後輩(dom)
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
小スカが性癖で何気なく読ませて頂いたのですが、
ストーリーまでとっても素敵で思わず
コメントしてしまいました💗
続き気になります(*´艸`*)