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29 嵐の前触れ
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しばらく家でのんびりしていると、ヤドカリのジョーが訪ねてきました。
ぐーは先ほどのコタローのことをジョーに話しました。
「あの人はボクがここにいるのが気にくわないんだ。いままで親切にしてきたのも、油断させていつか追い出そうとしていたからだよ。カラスのギギと一緒さ。友達のフリをしていただけなんだよ」
ぐーの話をジョーはめずらしく黙って聞いています。
ひとしきりコタローへの批判を言い終えたぐーに、ジョーは言いました。
「ホントにそう思ってるんならオメーはどうしようもないバカだな。オイラはあのコタローのことをそう知ってるわけじゃないけどよ、アイツはそんなヤツじゃねーよ」
「でも、ボクはこの家もここの生活も本当に気に入ってるんだ。ここから離れろなんて、イジワルにしか思えないよ」
「だから、オメーに嫌われるのを覚悟で言ってるんだよ。そんだけ心配してんだよ、アイツは」
ジョーにそう言われ、ぐーはうつむきます。でもすぐに顔をあげて言い返しました。
「そうかな……すごい大きな嵐がくるってのも、信じられないし……」
「嵐か。たしかにこの時期は毎年のようにくるけどな……いや、待てよ。そういや、遠い海から見たことないような魚がたくさんこっちにきてるぜ。もしかしたら……」
ジョーは急いで家の外へ向かいます。
「海の仲間が心配だ。念のために用心するように言っておくぜ。ぐー、オメーもへんな意地はってねーで友達の忠告には耳を貸しな」
海へ戻っていくジョーを見送りながら、ぐーはつぶやきました。
「それでもボクはここが好きなんだ。ここからは絶対に離れないぞ」
数日後の朝──ガタガタと揺れる窓の音でぐーは目が覚めました。
風が強いようです。ぐーは窓から外の景色を見て、あっ、と声をあげます。
まだ距離はありますが、むこうの空。巨大で真っ黒な雲が渦を巻いています。
ぐーは怖くなって、物置から防災用の道具を取り出しました。
雨戸を閉めてさらに窓にはガムテープを貼ります。
ハシゴを用意して屋根の四隅にロープをつけ、それを杭で地面に打ちつけました。
土のう袋に畑の土をつめて、ドアのうしろに積みました。
懐中電灯や携帯食をリュックに入れ、ベッドの横に置きます。
ベッドの上でシーツにくるまれながらぐーはぶるぶる震えました。
この家にきてはじめての嵐です。たいしたことない、と思いたいのですが、コタローやジョーの言ったことが気になります。もし本当に何十年に一度の大きな嵐だったら──。
ぐーは先ほどのコタローのことをジョーに話しました。
「あの人はボクがここにいるのが気にくわないんだ。いままで親切にしてきたのも、油断させていつか追い出そうとしていたからだよ。カラスのギギと一緒さ。友達のフリをしていただけなんだよ」
ぐーの話をジョーはめずらしく黙って聞いています。
ひとしきりコタローへの批判を言い終えたぐーに、ジョーは言いました。
「ホントにそう思ってるんならオメーはどうしようもないバカだな。オイラはあのコタローのことをそう知ってるわけじゃないけどよ、アイツはそんなヤツじゃねーよ」
「でも、ボクはこの家もここの生活も本当に気に入ってるんだ。ここから離れろなんて、イジワルにしか思えないよ」
「だから、オメーに嫌われるのを覚悟で言ってるんだよ。そんだけ心配してんだよ、アイツは」
ジョーにそう言われ、ぐーはうつむきます。でもすぐに顔をあげて言い返しました。
「そうかな……すごい大きな嵐がくるってのも、信じられないし……」
「嵐か。たしかにこの時期は毎年のようにくるけどな……いや、待てよ。そういや、遠い海から見たことないような魚がたくさんこっちにきてるぜ。もしかしたら……」
ジョーは急いで家の外へ向かいます。
「海の仲間が心配だ。念のために用心するように言っておくぜ。ぐー、オメーもへんな意地はってねーで友達の忠告には耳を貸しな」
海へ戻っていくジョーを見送りながら、ぐーはつぶやきました。
「それでもボクはここが好きなんだ。ここからは絶対に離れないぞ」
数日後の朝──ガタガタと揺れる窓の音でぐーは目が覚めました。
風が強いようです。ぐーは窓から外の景色を見て、あっ、と声をあげます。
まだ距離はありますが、むこうの空。巨大で真っ黒な雲が渦を巻いています。
ぐーは怖くなって、物置から防災用の道具を取り出しました。
雨戸を閉めてさらに窓にはガムテープを貼ります。
ハシゴを用意して屋根の四隅にロープをつけ、それを杭で地面に打ちつけました。
土のう袋に畑の土をつめて、ドアのうしろに積みました。
懐中電灯や携帯食をリュックに入れ、ベッドの横に置きます。
ベッドの上でシーツにくるまれながらぐーはぶるぶる震えました。
この家にきてはじめての嵐です。たいしたことない、と思いたいのですが、コタローやジョーの言ったことが気になります。もし本当に何十年に一度の大きな嵐だったら──。
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