はなれ小島のぐー

みくもっち

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12 フリマの帰り

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 キツネがシャム猫をヒジでつつきながら笑います。

「おまえ、ぐーのことをよくからかってたよな。まあ、オレたちもだがよ」

 シャム猫はタバコをふかしながら言いました。

「だってよ、アイツ、休み時間に絵なんて描いてるんだぜ。だいたい絵とかマンガ描いてるようなヤツってよ、暗くてキモいだろ」
 
 ブルドックがサングラスを外し、胸のポケットへ入れました。そしてふたりに言います。

「なあ、今からぐーのところに行ってみねえか。学生んときみたいによ、アイツの絵をからかってみようぜ。引きやぶったりしてよ」

 シャム猫とキツネはそりゃあいい、と喜びました。
 
「どうせやられても何も言えねぇんだぜ、あの雑巾ネコは。オドオドしてみっともなくてよ。前みたいに2、3発なぐってやろうぜ」

 そのとき、カーン、とかん高い音がひびきました。
 3人の車の上に空き缶が当たった音です。

 3人は何が起こったのか一瞬わからなかったのですが、すぐに飛んできた方向をにらみつけました。

「なんだあ、テメー……!」

 空き缶を投げたのはコタローです。
 襟をただしながらコタローは答えます。

「ああ、すまない。ゴミ箱とかんちがいしてしまったよ。なにせゴミが集まっているものだから──」

 3人の男たちは顔を見合せ、それから大股でコタローに近づいていきました。



 フリマも終わってぐーは港近くのパン屋に寄っていました。今日は少しぜいたくをするつもりです。
 フリマではポストカードが全部売れたので嬉しかったのです。
 とくに最後にきた優しそうなヤギの老夫婦は、海の夕焼けの絵をスゴく褒めてくれました。
 ウサギのソーネには会えませんでしたが、こうやってフリマに参加していれば、またきっと会えるとぐーは思いました。

 サン・レオというおしゃれなパン屋。
 ぐーが学生のときからあるお店です。主人のライオンは無口で恐そうな顔をしていますが、そこのパンはとてもおいしいのです。

 ぐーはそこでメロンパンとウインナーパン、サンドイッチを買いました。
 少し離れていますが、次は本屋に向かいます。前から欲しかった小説を買おうと思いました。

 街の通りを歩いていると、ブオオーン、と1台のスポーツカーとすれ違いました。とても高そうな車です。
 運転手はカッコいい狼の男。助手席には──ソーネです。まちがいありません。
 ちらっ、とぐーと目が合った気がしました。
 
 ぐーは振り返ります。車は通りの角をブオオ、と曲がっていきました。
 ぐーはしばらくその場に立ち尽くしていました。
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