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5 ウサギのソーネ
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ぐーは収穫したナバンの野菜をキレイに洗い、自分が食べる分以外は売りに出そうと計画しました。
収穫したのは半分でしたが、それでも10個あります。8個を箱につめて、波が穏やかな日を選んでボートにのせました。
手こぎのボートで街の港まで行くのは大変ですが、ぐーはがんばってオールを漕ぎました。
順調にボートは進みます。途中、イルカの群れにあいました。
ぐーを応援するようにボートの横を並んで泳ぎます。
目指す街の港はまだ遠いですが、元気をもらったぐーは力強くオールを漕ぎます。
港が見えてきました。イルカたちはキューキューと鳴いて沖のほうへ戻っていきます。
「またね、ありがとうイルカさんたち」
ぐーは手を振って見送りました。
港に着いてボートから荷物を降ろします。
たくましい体の港の作業員が手伝ってくれました。
「ごくろうさま。おや、あんたはたしか……」
作業員のトラ猫がぐーの顔をのぞきこみます。
ぐーも見覚えがありました。
あの小島に引っ越すとき、舟に家具なんかを積んでくれた人です。
「ああ、今日は野菜を売りにきたのか。だったらもうすぐフリマがはじまるから、あの場所を取っておいたらいい」
トラ猫は倉庫の横を指さしました。街へ続く道路に面していて、たしかにあの場所なら人通りも多そうです。
ぐーはお礼を言ってその場所にシートを敷いて荷物をおろしました。
周りにぞろぞろと同じように売り物を出す人が集まってきます。
港だけあって魚や魚の加工品が多いようです。ぐーの隣に腰かけたのは貝で出来たアクセサリーを売りに出しているウサギでした。
女優がかぶるようなつばの広い帽子にサングラス。
花柄の派手なワンピースに赤いハイヒール。
ウサギはぐーを見て話しかけてきます。
「あら、あなた見ない顔ね。このフリマははじめて?」
ぐーは無言でうなずきます。とてもキレイなウサギなので緊張してしまったのです。服もそうですが、真っ白な毛なみはまるで雪のようです。
ぐーの格好といえば、畑仕事からそのまま出てきたような服装です。サバ缶とプリントしてあるTシャツに短パン、サンダル。
もう少しおしゃれな服を着てくればよかったと後悔しました。
それにぐーは自分の毛の色も好きではありません。
サビ色……黒とオレンジの混ざったわけのわからない毛色です。
べっこうの色とほめられることもありますが、ぐーはそうは思いません。
どうせなら真っ白だとか、カッコいいグレーとかがよかったのです。
「わたしはソーネ。ここでよくハンドメイド品を出してるの。よろしくね」
ソーネは帽子とサングラスを取り、あいさつしてきます。ぐーは、自分の名前をうつむきながら言うのがやっとでした。
収穫したのは半分でしたが、それでも10個あります。8個を箱につめて、波が穏やかな日を選んでボートにのせました。
手こぎのボートで街の港まで行くのは大変ですが、ぐーはがんばってオールを漕ぎました。
順調にボートは進みます。途中、イルカの群れにあいました。
ぐーを応援するようにボートの横を並んで泳ぎます。
目指す街の港はまだ遠いですが、元気をもらったぐーは力強くオールを漕ぎます。
港が見えてきました。イルカたちはキューキューと鳴いて沖のほうへ戻っていきます。
「またね、ありがとうイルカさんたち」
ぐーは手を振って見送りました。
港に着いてボートから荷物を降ろします。
たくましい体の港の作業員が手伝ってくれました。
「ごくろうさま。おや、あんたはたしか……」
作業員のトラ猫がぐーの顔をのぞきこみます。
ぐーも見覚えがありました。
あの小島に引っ越すとき、舟に家具なんかを積んでくれた人です。
「ああ、今日は野菜を売りにきたのか。だったらもうすぐフリマがはじまるから、あの場所を取っておいたらいい」
トラ猫は倉庫の横を指さしました。街へ続く道路に面していて、たしかにあの場所なら人通りも多そうです。
ぐーはお礼を言ってその場所にシートを敷いて荷物をおろしました。
周りにぞろぞろと同じように売り物を出す人が集まってきます。
港だけあって魚や魚の加工品が多いようです。ぐーの隣に腰かけたのは貝で出来たアクセサリーを売りに出しているウサギでした。
女優がかぶるようなつばの広い帽子にサングラス。
花柄の派手なワンピースに赤いハイヒール。
ウサギはぐーを見て話しかけてきます。
「あら、あなた見ない顔ね。このフリマははじめて?」
ぐーは無言でうなずきます。とてもキレイなウサギなので緊張してしまったのです。服もそうですが、真っ白な毛なみはまるで雪のようです。
ぐーの格好といえば、畑仕事からそのまま出てきたような服装です。サバ缶とプリントしてあるTシャツに短パン、サンダル。
もう少しおしゃれな服を着てくればよかったと後悔しました。
それにぐーは自分の毛の色も好きではありません。
サビ色……黒とオレンジの混ざったわけのわからない毛色です。
べっこうの色とほめられることもありますが、ぐーはそうは思いません。
どうせなら真っ白だとか、カッコいいグレーとかがよかったのです。
「わたしはソーネ。ここでよくハンドメイド品を出してるの。よろしくね」
ソーネは帽子とサングラスを取り、あいさつしてきます。ぐーは、自分の名前をうつむきながら言うのがやっとでした。
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