178 / 185
第2部 消えた志求磨
70 頼もしい仲間
しおりを挟む
あの遠くに見える光……その《女神》が目覚めたから起きている現象か。
葉桜溢忌との最終決戦で見たことある。《女神》シエラ=イデアル。
自爆してこの世界そのものを吹っ飛ばそうとした葉桜溢忌を、その破壊のエネルギーごと吸収した。
カーラさんが言うには、あの時はまだ半覚醒状態だったらしい。
完全に目覚めた《女神》はどれだけの力を秘めているのだろうか。
「あの《女神》が甦ったんなら、お前も魔王も終わりだな。世界に危機をもたらそうとするヤツを放っておくわけがない」
わたしがざまあみろ、といった調子でそう言うが、華叉丸はフフ、と余裕の表情を崩さない。
「そんなことより己が身を心配してはどうか。先程の攻撃も我には通用しなかったのだ。意地を張らずに《断ち斬る者》になればよかろう」
「……黙れ、お前の挑発には乗らない。このままで戦う!」
宙に浮いている華叉丸めがけ、跳ぶ。
空中で抜刀──。華叉丸がアイスブランドで受け、流す。
体勢を崩したわたしに剣の刺突。
身をよじってかわす。アイスブランドの冷気が肌に刺さるようだ。
落下中に居合いの一撃。飛ぶ斬撃、太刀風。
これは華叉丸の肩にヒット。ヤツは宙から床に落下した。好機──。
「はああっ!」
着地からすぐに跳躍。練気で攻撃力を上げ、上段からの打ち下ろし。
だが──ビシビシビシッ、とヤツに触れる前から刀身が凍っていく。わたしは慌てて後退。
華叉丸は服の埃を払いながら優雅に立ち上がる。
「分からぬ……たとえ今の攻撃が当たっていたとしても我にダメージは与えられないだろう。なぜ無駄にあがく? 我はまだこの剣の力を1割程も出してないぞ」
え……そうなの? 怒りにまかせてがむしゃらに攻撃してたから、効いてるとか効いてないとか気にしてなかった。
ちょっと冷静になってヤバいかもと思ったけど、それは顔に出さない。
ここはとにかく……時間を稼ごう。どこかつけいるスキがあるはずだ。
「シッ!」
太刀風。ヤツに近付かずに攻撃するのがベストだ。
さらに連続で放つ。刀から放たれる衝撃波が華叉丸に次々にヒット。
だが──ヤツの周囲に白い冷気の壁。届いていない。
「だったら──」
練気。刀へ願望の力を集中。鍔と鞘の隙間から気の光がキイイイ、と漏れる。
「くらえっ」
抜刀。三日月状の巨大な剣閃が華叉丸に向かって飛ぶ。
白い冷気の壁にぶつかるが、それを突破。まともに華叉丸へ。
「むうううっ!」
アイスブランドの剣身を盾に防御する華叉丸。ザザザザ、とヤツを城壁の際まで押し込む。
「ぬうんっっ!」
華叉丸は剣を両手で振り上げた。ビッキイイイッ、と目の前にデカイ氷の柱が出現。
わたしの放った真・太刀風の剣閃はその柱に沿うように上昇。夜空の彼方へ消えてしまった。
「くそっ」
真・太刀風すら通じなかった。願望の力もだいぶ消費してしまった。
やっぱり今のわたしでは勝てない。でも《断ち斬る者》にはもうなれない。あんな暴走、二度と起こすわけには……。
華叉丸がアイスブランドを振る。
小範囲の吹雪が発生し、わたしは吹き飛ばされる。
床に倒れこむと、ビキビキと手足が凍って張り付いてしまった。
動けない──!
「終いだな、由佳殿。我が統治するこの世界を見せてやれないのは残念だったが」
華叉丸が剣を突き出すと、無数の氷刃が発射された。マズイ、防御しなければ……。
なんとか少ない願望の力を振り絞り練気の技。防御力を高める。
ガガガガッ、と氷刃がわたしの身体に当たって砕ける。いけない、限界だ。この最初の一撃しか防げない。
華叉丸はすでに二撃目を放つモーション。
わたしは目をつぶる。
…………氷刃が発射される音は聞いた。でもわたしの身体に突き刺さる様子はない。
わたしが目を開けると──。
飛んでくる氷刃は次々蒸発している。
わたしをかばうように目の前にいるのは、アルマだ。アルマの周囲には赤く光ったナイフが何本も浮遊している。
「よかった、由佳。間に合った」
振り向いて笑うアルマ。わたしの頭の中にダダダダ、と文字が打ち込まれた。
《アサシン》《スパイラルエッジ》アルマ・イルハム。
新しい二つ名……アルマの。まさか超越者になったのか。
「その娘は……」
華叉丸がさらに氷刃を飛ばそうとしている。
アルマが走りだした。周囲のナイフがビビビビッ、と先行して飛ぶ。
「かあっ!」
華叉丸はとっさに攻撃から防御に転じた。氷の壁を作り、ナイフを防ぐ。
アルマは走りながらダガーを交差して構える。その身体がゴオッ、と燃え上がった。
氷の壁を突き破った。さらに華叉丸を通り抜けるような高速アタック。
「ぐうっ」
華叉丸がヒザをついた。しかもヤツの傷口がボボッ、と燃えている。
炎はアイスブランドの力ですぐに消えてしまったが……スゴい、ヤツにダメージを与えたぞ。
「由佳は……あたしが守る」
アルマがこちらにダガーの先を向けると、おお、手足の氷が溶けた。
離れたところから属性付与できるのか。
わたしの刀も赤い光を放ちだす。
「由佳、一緒に倒そう。華叉丸と魔王の剣を」
葉桜溢忌との最終決戦で見たことある。《女神》シエラ=イデアル。
自爆してこの世界そのものを吹っ飛ばそうとした葉桜溢忌を、その破壊のエネルギーごと吸収した。
カーラさんが言うには、あの時はまだ半覚醒状態だったらしい。
完全に目覚めた《女神》はどれだけの力を秘めているのだろうか。
「あの《女神》が甦ったんなら、お前も魔王も終わりだな。世界に危機をもたらそうとするヤツを放っておくわけがない」
わたしがざまあみろ、といった調子でそう言うが、華叉丸はフフ、と余裕の表情を崩さない。
「そんなことより己が身を心配してはどうか。先程の攻撃も我には通用しなかったのだ。意地を張らずに《断ち斬る者》になればよかろう」
「……黙れ、お前の挑発には乗らない。このままで戦う!」
宙に浮いている華叉丸めがけ、跳ぶ。
空中で抜刀──。華叉丸がアイスブランドで受け、流す。
体勢を崩したわたしに剣の刺突。
身をよじってかわす。アイスブランドの冷気が肌に刺さるようだ。
落下中に居合いの一撃。飛ぶ斬撃、太刀風。
これは華叉丸の肩にヒット。ヤツは宙から床に落下した。好機──。
「はああっ!」
着地からすぐに跳躍。練気で攻撃力を上げ、上段からの打ち下ろし。
だが──ビシビシビシッ、とヤツに触れる前から刀身が凍っていく。わたしは慌てて後退。
華叉丸は服の埃を払いながら優雅に立ち上がる。
「分からぬ……たとえ今の攻撃が当たっていたとしても我にダメージは与えられないだろう。なぜ無駄にあがく? 我はまだこの剣の力を1割程も出してないぞ」
え……そうなの? 怒りにまかせてがむしゃらに攻撃してたから、効いてるとか効いてないとか気にしてなかった。
ちょっと冷静になってヤバいかもと思ったけど、それは顔に出さない。
ここはとにかく……時間を稼ごう。どこかつけいるスキがあるはずだ。
「シッ!」
太刀風。ヤツに近付かずに攻撃するのがベストだ。
さらに連続で放つ。刀から放たれる衝撃波が華叉丸に次々にヒット。
だが──ヤツの周囲に白い冷気の壁。届いていない。
「だったら──」
練気。刀へ願望の力を集中。鍔と鞘の隙間から気の光がキイイイ、と漏れる。
「くらえっ」
抜刀。三日月状の巨大な剣閃が華叉丸に向かって飛ぶ。
白い冷気の壁にぶつかるが、それを突破。まともに華叉丸へ。
「むうううっ!」
アイスブランドの剣身を盾に防御する華叉丸。ザザザザ、とヤツを城壁の際まで押し込む。
「ぬうんっっ!」
華叉丸は剣を両手で振り上げた。ビッキイイイッ、と目の前にデカイ氷の柱が出現。
わたしの放った真・太刀風の剣閃はその柱に沿うように上昇。夜空の彼方へ消えてしまった。
「くそっ」
真・太刀風すら通じなかった。願望の力もだいぶ消費してしまった。
やっぱり今のわたしでは勝てない。でも《断ち斬る者》にはもうなれない。あんな暴走、二度と起こすわけには……。
華叉丸がアイスブランドを振る。
小範囲の吹雪が発生し、わたしは吹き飛ばされる。
床に倒れこむと、ビキビキと手足が凍って張り付いてしまった。
動けない──!
「終いだな、由佳殿。我が統治するこの世界を見せてやれないのは残念だったが」
華叉丸が剣を突き出すと、無数の氷刃が発射された。マズイ、防御しなければ……。
なんとか少ない願望の力を振り絞り練気の技。防御力を高める。
ガガガガッ、と氷刃がわたしの身体に当たって砕ける。いけない、限界だ。この最初の一撃しか防げない。
華叉丸はすでに二撃目を放つモーション。
わたしは目をつぶる。
…………氷刃が発射される音は聞いた。でもわたしの身体に突き刺さる様子はない。
わたしが目を開けると──。
飛んでくる氷刃は次々蒸発している。
わたしをかばうように目の前にいるのは、アルマだ。アルマの周囲には赤く光ったナイフが何本も浮遊している。
「よかった、由佳。間に合った」
振り向いて笑うアルマ。わたしの頭の中にダダダダ、と文字が打ち込まれた。
《アサシン》《スパイラルエッジ》アルマ・イルハム。
新しい二つ名……アルマの。まさか超越者になったのか。
「その娘は……」
華叉丸がさらに氷刃を飛ばそうとしている。
アルマが走りだした。周囲のナイフがビビビビッ、と先行して飛ぶ。
「かあっ!」
華叉丸はとっさに攻撃から防御に転じた。氷の壁を作り、ナイフを防ぐ。
アルマは走りながらダガーを交差して構える。その身体がゴオッ、と燃え上がった。
氷の壁を突き破った。さらに華叉丸を通り抜けるような高速アタック。
「ぐうっ」
華叉丸がヒザをついた。しかもヤツの傷口がボボッ、と燃えている。
炎はアイスブランドの力ですぐに消えてしまったが……スゴい、ヤツにダメージを与えたぞ。
「由佳は……あたしが守る」
アルマがこちらにダガーの先を向けると、おお、手足の氷が溶けた。
離れたところから属性付与できるのか。
わたしの刀も赤い光を放ちだす。
「由佳、一緒に倒そう。華叉丸と魔王の剣を」
0
お気に入りに追加
153
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★
ブレイブエイト〜異世界八犬伝伝説〜
蒼月丸
ファンタジー
異世界ハルヴァス。そこは平和なファンタジー世界だったが、新たな魔王であるタマズサが出現した事で大混乱に陥ってしまう。
魔王討伐に赴いた勇者一行も、タマズサによって壊滅してしまい、行方不明一名、死者二名、捕虜二名という結果に。このままだとハルヴァスが滅びるのも時間の問題だ。
それから数日後、地球にある後楽園ホールではプロレス大会が開かれていたが、ここにも魔王軍が攻め込んできて多くの客が殺されてしまう事態が起きた。
当然大会は中止。客の生き残りである東零夜は魔王軍に怒りを顕にし、憧れのレスラーである藍原倫子、彼女のパートナーの有原日和と共に、魔王軍がいるハルヴァスへと向かう事を決断したのだった。
八犬士達の意志を継ぐ選ばれし八人が、魔王タマズサとの戦いに挑む!
地球とハルヴァス、二つの世界を行き来するファンタジー作品、開幕!
Nolaノベル、PageMeku、ネオページ、なろうにも連載しています!
異世界の餓狼系男子
みくもっち
ファンタジー
【小説家は餓狼】に出てくるようなテンプレチート主人公に憧れる高校生、葉桜溢忌。
とあるきっかけで願望が実現する異世界に転生し、女神に祝福された溢忌はけた外れの強さを手に入れる。
だが、女神の手違いにより肝心の強力な108のチートスキルは別の転移者たちに行き渡ってしまった。
転移者(願望者)たちを倒し、自分が得るはずだったチートスキルを取り戻す旅へ。
ポンコツな女神とともに無事チートスキルを取り戻し、最終目的である魔王を倒せるのか?
「異世界の剣聖女子」より約20年前の物語。
バトル多めのギャグあり、シリアスあり、テンポ早めの異世界ストーリーです。
*素敵な表紙イラストは前回と同じく朱シオさんです。 @akasiosio
ちなみに、この女の子は主人公ではなく、準主役のキャラクターです。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
アイムキャット❕~異世界キャット驚く漫遊記~
ma-no
ファンタジー
神様のミスで森に住む猫に転生させられた元人間。猫として第二の人生を歩むがこの世界は何かがおかしい。引っ掛かりはあるものの、猫家族と楽しく過ごしていた主人公は、ミスに気付いた神様に詫びの品を受け取る。
その品とは、全世界で使われた魔法が載っている魔法書。元人間の性からか、魔法書で変身魔法を探した主人公は、立って歩く猫へと変身する。
世界でただ一匹の歩く猫は、人間の住む街に行けば騒動勃発。
そして何故かハンターになって、王様に即位!?
この物語りは、歩く猫となった主人公がやらかしながら異世界を自由気ままに生きるドタバタコメディである。
注:イラストはイメージであって、登場猫物と異なります。
R指定は念の為です。
登場人物紹介は「11、15、19章」の手前にあります。
「小説家になろう」「カクヨム」にて、同時掲載しております。
一番最後にも登場人物紹介がありますので、途中でキャラを忘れている方はそちらをお読みください。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-
ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。
困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。
はい、ご注文は?
調味料、それとも武器ですか?
カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。
村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。
いずれは世界へ通じる道を繋げるために。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる