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第2部 消えた志求磨
36 タモツの飼い葉
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ビノッコを加え、わたし達は3階へとあがる。
3階──そこにはヘルメットにプロテクターを着けた集団が待ち構えていた。
警備員みたいなテンプルナイツ兵だ。ざっと十数名。
警棒を振りかざし、襲いかかってくる。
「ここはそれがしに任せられよ」
スッ、とビノッコが前に出る。
「怒ンッッ!」
踏み込みながら一直線に突き。
一発で複数のテンプルナイツ兵が吹っ飛び、壁に叩きつけられる。
おお、強い……残りの兵たちもボッコボコだ。あっという間に片付いてしまった。
「この階には兵しかいないようですな。正規のテンプルナイツはおそらく囚人のいる階層を守っているのかと」
次の階段に向かいながらビノッコが言った。
たしかにこの階にはさっきみたいな扉はない。
続く4階──ここには2階と同じように壁沿いに扉が並んでいる。
そして中央には15歳くらいの少年の姿。
花札のような耳飾りに額に火傷の痕。市松模様の羽織を着ている。
新たなテンプルナイツの願望者だ。わたしの頭の中にさっそくダダダダ、と文字が打ち込まれた。
《心優しき長男》雨戸反治郎。
と同時に聞いたことのある女性ボーカルのBGMが響き渡る。
あ、これなんか最近流行ってるアニメの主題歌だ。TVなんかでも流れていた。アニメの内容はよく知らないが。
わたしは小声でアルマに聞いてみる。
「アルマ、知ってる? あれなんのキャラクターだっけ? わたし最近のはあんまり知らなくて」
「うん。今アニメとかでスゴい人気の【タモツの飼い葉】って作品。ギャンブルで家族崩壊した反治郎が復讐のために競馬のジョッキーになって、愛馬のネグコに合う飼い葉をもらうために、飼い葉作りの名人タモツさんを探すって話」
なんてつまらなさそうな話だ……。なんでギャンブルで崩壊した家族の復讐でジョッキーになるんだ。
「でもジョッキーなんかがどうやって戦うんだ」
見たところ、雨戸反治朗の腰には刀が差してある。ジョッキーなのにアレを使うのか? あと背中に木箱を背負っているが……。
「俺はお前たちを許さない。俺の家族をギャンブル漬けにした鬼のようなお前らを……」
反治朗が刀を抜く。柄の先は刃ではなかった。ジョッキーの持つ鞭だ。
いろいろとツッコみたいが……なんだこれ、普通に戦っていいのか?
「よし、ネグコ、俺に力を貸してくれ」
反治朗の背中の木箱から何かが出てきた。
うお、なんと馬だ。なぜか竹を咥えた可愛らしいちっこい馬。ポニーどこじゃないな。あれじゃマキ○オーみたいだ。
と思っていたらネグコと呼ばれたそのちっこい馬はグググと大きくなり、普通の馬のサイズになった。
「ネグコはなあ、普通の馬じゃない。だからタモツさんの飼い葉が必要なんだ。それをジャマするなら容赦しない」
いや、そんなジャマなんてしないが……。
わたしは首を横に振るが、反治朗は聞く耳を持たない。
ネグコにまたがると、ピシィッ、と鞭をふるった。
「いくぞっ、俺たちの人馬一体となった連携技を見せてやるっ! 水の息吹、はじめの型っ!」
が、鞭で叩かれたネグコはその場で棹立ちになり、反治朗を振り落とす。
しかも落馬した反治朗を後ろ足でパカアッ、と蹴り、パカラパカラとわたし達を通りすぎて階段へ。そのまま去ってしまった。
顔面血まみれになった反治朗。ぶるぶる震える手で起き上がろうとしている。
「頑張れ反治朗! 頑張れ! 俺は今までよくやってきた! 俺はできるやつだ! そして今日も! これからも! 折れていても! 俺がくじけることは絶対に──ふぐうっ!」
セリフの途中でアルマが頭を踏みつけた。
反治朗は悲鳴をあげ、ギブアップを宣言。
あ、勝ったみたいだ……何もしてないが。
「おい、日之影宵子という方が捕らえられているはずだ。どの階にいる?」
ビノッコが反治郎の胸ぐらをつかみ、尋問する。
「あ、ああ。あの女医か。有名な罪人だから知っている。数々の少年に対するハラスメント、ストーカー、誘拐なんかでかなり重い罪だ。ヤツは8階に捕らえられている」
「くっ、先生……! 待っていてください。必ずこのビノッコが救いだしてみせますぞ」
ビノッコがぐぐっ、とつかむ手に力をこめる。反治朗が真っ赤な顔でタップしている。
反治朗が気を失ったところで気付き、ビノッコは手を放した。
それにしてもあの女医……捕まったのは無実の罪なんかじゃない。もうこのまま閉じ込められてたほうがいいんじゃないのか。
わたしはそんなことを考えつつ、アルマ、ビノッコとともに5階へ。
5階はテンプルナイツ兵の控え所のようだ。
大型の盾を持ったヤツらに取り囲まれたが、ビノッコは盾をぶち抜き、警棒をへし折り、敵をお手玉のようにポンポン投げ捨てる。
ものの数分で制圧してしまった。こんなに強いのにどうやってコイツらに捕まったんだ……?
無傷のまま6階へ。
さっきまでのパターンだと、1階おきに囚人のいる階があるようだ。だとしたらテンプルナイツが待ち構えているはず──。
3階──そこにはヘルメットにプロテクターを着けた集団が待ち構えていた。
警備員みたいなテンプルナイツ兵だ。ざっと十数名。
警棒を振りかざし、襲いかかってくる。
「ここはそれがしに任せられよ」
スッ、とビノッコが前に出る。
「怒ンッッ!」
踏み込みながら一直線に突き。
一発で複数のテンプルナイツ兵が吹っ飛び、壁に叩きつけられる。
おお、強い……残りの兵たちもボッコボコだ。あっという間に片付いてしまった。
「この階には兵しかいないようですな。正規のテンプルナイツはおそらく囚人のいる階層を守っているのかと」
次の階段に向かいながらビノッコが言った。
たしかにこの階にはさっきみたいな扉はない。
続く4階──ここには2階と同じように壁沿いに扉が並んでいる。
そして中央には15歳くらいの少年の姿。
花札のような耳飾りに額に火傷の痕。市松模様の羽織を着ている。
新たなテンプルナイツの願望者だ。わたしの頭の中にさっそくダダダダ、と文字が打ち込まれた。
《心優しき長男》雨戸反治郎。
と同時に聞いたことのある女性ボーカルのBGMが響き渡る。
あ、これなんか最近流行ってるアニメの主題歌だ。TVなんかでも流れていた。アニメの内容はよく知らないが。
わたしは小声でアルマに聞いてみる。
「アルマ、知ってる? あれなんのキャラクターだっけ? わたし最近のはあんまり知らなくて」
「うん。今アニメとかでスゴい人気の【タモツの飼い葉】って作品。ギャンブルで家族崩壊した反治郎が復讐のために競馬のジョッキーになって、愛馬のネグコに合う飼い葉をもらうために、飼い葉作りの名人タモツさんを探すって話」
なんてつまらなさそうな話だ……。なんでギャンブルで崩壊した家族の復讐でジョッキーになるんだ。
「でもジョッキーなんかがどうやって戦うんだ」
見たところ、雨戸反治朗の腰には刀が差してある。ジョッキーなのにアレを使うのか? あと背中に木箱を背負っているが……。
「俺はお前たちを許さない。俺の家族をギャンブル漬けにした鬼のようなお前らを……」
反治朗が刀を抜く。柄の先は刃ではなかった。ジョッキーの持つ鞭だ。
いろいろとツッコみたいが……なんだこれ、普通に戦っていいのか?
「よし、ネグコ、俺に力を貸してくれ」
反治朗の背中の木箱から何かが出てきた。
うお、なんと馬だ。なぜか竹を咥えた可愛らしいちっこい馬。ポニーどこじゃないな。あれじゃマキ○オーみたいだ。
と思っていたらネグコと呼ばれたそのちっこい馬はグググと大きくなり、普通の馬のサイズになった。
「ネグコはなあ、普通の馬じゃない。だからタモツさんの飼い葉が必要なんだ。それをジャマするなら容赦しない」
いや、そんなジャマなんてしないが……。
わたしは首を横に振るが、反治朗は聞く耳を持たない。
ネグコにまたがると、ピシィッ、と鞭をふるった。
「いくぞっ、俺たちの人馬一体となった連携技を見せてやるっ! 水の息吹、はじめの型っ!」
が、鞭で叩かれたネグコはその場で棹立ちになり、反治朗を振り落とす。
しかも落馬した反治朗を後ろ足でパカアッ、と蹴り、パカラパカラとわたし達を通りすぎて階段へ。そのまま去ってしまった。
顔面血まみれになった反治朗。ぶるぶる震える手で起き上がろうとしている。
「頑張れ反治朗! 頑張れ! 俺は今までよくやってきた! 俺はできるやつだ! そして今日も! これからも! 折れていても! 俺がくじけることは絶対に──ふぐうっ!」
セリフの途中でアルマが頭を踏みつけた。
反治朗は悲鳴をあげ、ギブアップを宣言。
あ、勝ったみたいだ……何もしてないが。
「おい、日之影宵子という方が捕らえられているはずだ。どの階にいる?」
ビノッコが反治郎の胸ぐらをつかみ、尋問する。
「あ、ああ。あの女医か。有名な罪人だから知っている。数々の少年に対するハラスメント、ストーカー、誘拐なんかでかなり重い罪だ。ヤツは8階に捕らえられている」
「くっ、先生……! 待っていてください。必ずこのビノッコが救いだしてみせますぞ」
ビノッコがぐぐっ、とつかむ手に力をこめる。反治朗が真っ赤な顔でタップしている。
反治朗が気を失ったところで気付き、ビノッコは手を放した。
それにしてもあの女医……捕まったのは無実の罪なんかじゃない。もうこのまま閉じ込められてたほうがいいんじゃないのか。
わたしはそんなことを考えつつ、アルマ、ビノッコとともに5階へ。
5階はテンプルナイツ兵の控え所のようだ。
大型の盾を持ったヤツらに取り囲まれたが、ビノッコは盾をぶち抜き、警棒をへし折り、敵をお手玉のようにポンポン投げ捨てる。
ものの数分で制圧してしまった。こんなに強いのにどうやってコイツらに捕まったんだ……?
無傷のまま6階へ。
さっきまでのパターンだと、1階おきに囚人のいる階があるようだ。だとしたらテンプルナイツが待ち構えているはず──。
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