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第2部 消えた志求磨
8 名刀変化
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ボボボッ、と槍を振り回し、周りの木をなぎ倒す。
レオの猛攻にわたしは防戦一方。
練気で防御力を高めているが、それでも吹っ飛ばされた。
だったら──わたしは大きくバックステップして距離を取る。
刀を両手持ちにし、正眼に構える。
願望の力を集中──刀を中心に。イメージを浸透させる。
いつもの使い慣れた名刀飛蝶がグググ、と変化していく。刃の厚さが増し、刀身の長さはわたしの背丈以上に。鞘と柄の部分が深黄色へと変わっていた。
大太刀──名刀鋼牙。
そう、わたしの新しい力。名刀変化だ。
跳躍からの強烈な打ち下ろしが迫る。わたしはむん、と下から鋼牙を振り上げた。
レオの槍とぶつかり、派手な衝撃音。相手の体重がかかっている分、いつものわたしなら押し潰されていただろうが──。
レオごと上へ弾き飛ばす。
おおっ!? と声をあげたのを聞いた。
驚くのはまだこれからだ。落下するヤツめがけ、今度は上段より振り下ろす。
ゴオッッ、と大気を裂くような一撃。
レオは槍を一文字にして受けたが、その勢いを止められずに背中から地面に叩きつけられた。
ぐふうっ、と呻く声が聞こえる。
この鋼牙のフォームは常時わたしに攻撃力、防御力アップの効果。いわば練気の強力版だ。
その分スピードは大幅にダウンし、太刀風も使えない。変化時間もそう長くはないが、コイツを倒すのには十分だろう。
じりじりと近づき、横薙ぎの一閃。周りの木ごとズパアッ、と斬り裂いた。
だが──レオの姿は消えていた。一瞬、赤い壁に囲まれたのを見たような気がする……仲間の願望者の能力か。
わたしは鋼牙のフォームからいつもの刀に戻す。はじめてにしてはうまくいった。
《断ち斬る者》は超強力な状態だが暴走の危険があるし、いまいち不安定だ。
変化不能は想定していなかったが、それに頼らない戦い方は考えていたのだ。
とりあえず敵は撃退したが、華叉丸を探さなければ。
あの空間転移……そこまで遠くには移動していないはず。相当な願望の力を使うと以前カーラさんに聞いたことがあるからだ。
せいぜいこの森のどこか。転移先で新たな敵に襲われているかもしれない。
わたしはその場にある一番高い木の上へ移動。ここからなら森の広範囲を見渡せるはず。
あれは……森のあちこちで赤い光が点滅している。
術者がああやって兵や願望者を送り込んでいるのだろう。
ポッ、ポポッ、と赤く光る範囲の中心。ひときわ強い光がある。あそこに狙いを定めてみるか──。
地面に降り、走る。
さっきの光の強い場所まで。そう遠い距離ではない。
バラバラァッ、と敵兵が出現。わたしは刀をガチッ、と持ち直す。
敵兵の剣や槍をくぐり抜けながら峰打ちで蹴散らしていく。
さらに敵兵が出現。やはりさっきの光のところが怪しい。わたしを近づけさせないつもりか。
数は20程。まず矢を射かけてきた。
バババッ、と難なく叩き落とし、接近。
峰打ちで叩きのめし、無造作に掴んでブン投げる。
半数程倒したところであとは逃げ出した。
そしてついに赤い光の場所まで辿り着く。
そこには赤い壁に囲まれた華叉丸。そしてひとりの男──いや、少年か。見た目からして願望者なのは間違いない。
《天才卓球少年》橋本君。
わたしの頭の中にダダダダ、と文字が打ち込まれた。これはまた変わったヤツが現れた。
格好は二つ名の通り卓球選手そのまんまだ。手にはラケット……あんなんでどうやって戦うんだ。それに名前がすでに君付け……タダ者ではない。
橋本君は卓球のボールをカッ、カッ、と飛ばす。
森の中へ落ちたボールは赤く光り、そこからぞわっと敵兵が現れ、散らばっていった。
間違いない。コイツが空間転移の術者だ。
「来たな、《剣聖》……僕を追いつめたつもりだろうが、都合がいい。お前もこうやって捕まえてやる」
橋本君はラケットで華叉丸をさす。
あのショウを倒した華叉丸が捕らえられたのか……コイツの強さとは一体……。
「由佳殿、そやつもテンプルナイツのひとり。対願望者用捕縛部隊。まともに勝負しても勝てんぞ」
華叉丸の忠告。よく見れば華叉丸を囲んでいる半透明の赤い壁は卓球台を縦にしたものだ。
「フ、フフ……この男を取り返したいなら、僕を倒さないといけない。だが僕には直接攻撃は通じないよ。この一帯は僕の願望が支配している。僕のルールに従うしかないんだ」
わたしと橋本君の間にズズズズ、と四角の台がせりあがってくる。これは──本物の卓球台だ。以前カードゲームで勝負した願望者がいたが、同じタイプなのだろう。
「1ゲームだ。その間に1ポイントでも僕から奪えればお前の勝ち。フフ、かなりサービス満点な勝負だろう?」
卓球で勝負? マジでか……。
わたし、遊び程度でしかやった事ないんだけど。でも1ポイントだけでも取れればこっちの勝ちなら望みはある。
「よし、勝負だ。1ポイントでも取ったら約束通り華叉丸を解放してもらうぞ」
わたしは卓球台の上にあるラケットを手に取った。
レオの猛攻にわたしは防戦一方。
練気で防御力を高めているが、それでも吹っ飛ばされた。
だったら──わたしは大きくバックステップして距離を取る。
刀を両手持ちにし、正眼に構える。
願望の力を集中──刀を中心に。イメージを浸透させる。
いつもの使い慣れた名刀飛蝶がグググ、と変化していく。刃の厚さが増し、刀身の長さはわたしの背丈以上に。鞘と柄の部分が深黄色へと変わっていた。
大太刀──名刀鋼牙。
そう、わたしの新しい力。名刀変化だ。
跳躍からの強烈な打ち下ろしが迫る。わたしはむん、と下から鋼牙を振り上げた。
レオの槍とぶつかり、派手な衝撃音。相手の体重がかかっている分、いつものわたしなら押し潰されていただろうが──。
レオごと上へ弾き飛ばす。
おおっ!? と声をあげたのを聞いた。
驚くのはまだこれからだ。落下するヤツめがけ、今度は上段より振り下ろす。
ゴオッッ、と大気を裂くような一撃。
レオは槍を一文字にして受けたが、その勢いを止められずに背中から地面に叩きつけられた。
ぐふうっ、と呻く声が聞こえる。
この鋼牙のフォームは常時わたしに攻撃力、防御力アップの効果。いわば練気の強力版だ。
その分スピードは大幅にダウンし、太刀風も使えない。変化時間もそう長くはないが、コイツを倒すのには十分だろう。
じりじりと近づき、横薙ぎの一閃。周りの木ごとズパアッ、と斬り裂いた。
だが──レオの姿は消えていた。一瞬、赤い壁に囲まれたのを見たような気がする……仲間の願望者の能力か。
わたしは鋼牙のフォームからいつもの刀に戻す。はじめてにしてはうまくいった。
《断ち斬る者》は超強力な状態だが暴走の危険があるし、いまいち不安定だ。
変化不能は想定していなかったが、それに頼らない戦い方は考えていたのだ。
とりあえず敵は撃退したが、華叉丸を探さなければ。
あの空間転移……そこまで遠くには移動していないはず。相当な願望の力を使うと以前カーラさんに聞いたことがあるからだ。
せいぜいこの森のどこか。転移先で新たな敵に襲われているかもしれない。
わたしはその場にある一番高い木の上へ移動。ここからなら森の広範囲を見渡せるはず。
あれは……森のあちこちで赤い光が点滅している。
術者がああやって兵や願望者を送り込んでいるのだろう。
ポッ、ポポッ、と赤く光る範囲の中心。ひときわ強い光がある。あそこに狙いを定めてみるか──。
地面に降り、走る。
さっきの光の強い場所まで。そう遠い距離ではない。
バラバラァッ、と敵兵が出現。わたしは刀をガチッ、と持ち直す。
敵兵の剣や槍をくぐり抜けながら峰打ちで蹴散らしていく。
さらに敵兵が出現。やはりさっきの光のところが怪しい。わたしを近づけさせないつもりか。
数は20程。まず矢を射かけてきた。
バババッ、と難なく叩き落とし、接近。
峰打ちで叩きのめし、無造作に掴んでブン投げる。
半数程倒したところであとは逃げ出した。
そしてついに赤い光の場所まで辿り着く。
そこには赤い壁に囲まれた華叉丸。そしてひとりの男──いや、少年か。見た目からして願望者なのは間違いない。
《天才卓球少年》橋本君。
わたしの頭の中にダダダダ、と文字が打ち込まれた。これはまた変わったヤツが現れた。
格好は二つ名の通り卓球選手そのまんまだ。手にはラケット……あんなんでどうやって戦うんだ。それに名前がすでに君付け……タダ者ではない。
橋本君は卓球のボールをカッ、カッ、と飛ばす。
森の中へ落ちたボールは赤く光り、そこからぞわっと敵兵が現れ、散らばっていった。
間違いない。コイツが空間転移の術者だ。
「来たな、《剣聖》……僕を追いつめたつもりだろうが、都合がいい。お前もこうやって捕まえてやる」
橋本君はラケットで華叉丸をさす。
あのショウを倒した華叉丸が捕らえられたのか……コイツの強さとは一体……。
「由佳殿、そやつもテンプルナイツのひとり。対願望者用捕縛部隊。まともに勝負しても勝てんぞ」
華叉丸の忠告。よく見れば華叉丸を囲んでいる半透明の赤い壁は卓球台を縦にしたものだ。
「フ、フフ……この男を取り返したいなら、僕を倒さないといけない。だが僕には直接攻撃は通じないよ。この一帯は僕の願望が支配している。僕のルールに従うしかないんだ」
わたしと橋本君の間にズズズズ、と四角の台がせりあがってくる。これは──本物の卓球台だ。以前カードゲームで勝負した願望者がいたが、同じタイプなのだろう。
「1ゲームだ。その間に1ポイントでも僕から奪えればお前の勝ち。フフ、かなりサービス満点な勝負だろう?」
卓球で勝負? マジでか……。
わたし、遊び程度でしかやった事ないんだけど。でも1ポイントだけでも取れればこっちの勝ちなら望みはある。
「よし、勝負だ。1ポイントでも取ったら約束通り華叉丸を解放してもらうぞ」
わたしは卓球台の上にあるラケットを手に取った。
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