101 / 185
第1部 剣聖 羽鳴由佳
101 破滅
しおりを挟む「イカれてる。こんなヤツ、この世界にいちゃいけない」
志求磨の身体を白銀色の光が包む。その瞳の色も同じように変化する。
「……うん。ここで仕留めなくちゃ……」
アルマが呟き、二刀ダガーをヒュヒュヒュッ、と回転させる。
「まさに外道。一切の情けは必要なし。活ッ!」
ビノッコが構え、足元の床を踏み砕く。
「一時とはいえ、貴様の下についた自分が許せん……喰らえ」
ショウの願望の力が炎と化し、背後からゴアッ、と集まる。
突き出した両掌から巨大な炎の気弾が飛んだ。
「獄炎鬼砲拳!」
「よっしゃ、俺も乗った!」
レオニードが孔雀緑色のオーラをまとった矢を追うように放った。
アルマの二刀ダガーからもバチバチィッ、と電撃が放射される。
元五禍将三人のパワー。その攻撃を葉桜溢忌は左の盾で受け止める。
「チートスキル、神器練精で作った熾天の盾。まあ、こんなので防がなくても俺、物理無効、魔法無効なんスけど」
盾でグアッ、と払うとそのエネルギーは上へ。天井をぶち破り、外へ飛び出していった。
「飽きたんでそろそろ真面目に戦うっスよ。あ、出来るだけ苦しまないようにはするっス」
「破ァッ!」
踏み込んで下から突き上げるようなビノッコの発勁。溢忌の身体が浮き上がった。
そこから拳、手刀、肘、足刀の連打。
ガガガガッ、と入ったが、溢忌は笑いながらビノッコの顔を両手で挟み──ゴキャッ、とひねる。
崩れ落ちるビノッコ。叫びながら日之影宵子が走る。
痺れが収まったわたしも走った。
葉桜溢忌の姿は消えていた。どこだ──。
呻き声。見ると、ショウの背後。ショウの胸板からは溢忌の手刀が飛び出している。
血を吐きながら倒れるショウ。溢忌の姿はまた消えていた。
「上だっ、レオニード!」
今度は見逃さなかった。レオニードの頭上で溢忌は剣を抜いた。
「ちいっ!」
レオニードは弓で受けたが──両断され、腰まで剣で斬り裂かれる。
ドシャアッ、と倒れるレオニード。
葉桜溢忌は剣の血を払いながら次の標的を目で追う。
「シッ!」
太刀風を放つ。
ヴンッ、と残像を残して溢忌は回避。
いや、途中で止まった。セプティミアの状態異常を引き起こすボカロ曲だ。動きが鈍くなっている。
すぐに神速で突っ込む。そこから無数の突きを放った。
ズガガガガッ、と溢忌の身体が衝撃で踊るように震え、倒れる。
そこから全身鎧に身を包んだサイラスが跳躍。ハルバートに全体重をかけ、落下。
溢忌の身体を串刺しにして床に縫いつける。
「まだだっ、どけっ、油断すんじゃねえっ!」
ズギャギャギャギャギャッ、とクレイグの回転式多銃身機関銃が火を吹く。
飛び退いてかわしたサイラス。残された溢忌は凄まじい銃弾の雨をハルバートに貫かれたまま受けた。
ひとしきり撃ち終えたクレイグ。キンキンッ、と薬莢が床に落ちる音。
クレイグの足元には踏み場もないほどに転がっている。
硝煙が晴れてきた。葉桜溢忌は──いない。いびつな形に変形したハルバートの残骸が床に刺さっているだけだ。
ボンッ、と爆発音。
サイラスからだ。全身鎧が砕け落ち、その身体が火に包まれている。
「サイラスッ!」
セプティミアがすかさず癒しのバラード曲。いや、バチン、と鍔鳴りの音とともにその喉が斬り裂かれていた。
「────ッ!」
セプティミアは自分の喉を押さえながらヨロヨロと歩き、燃え盛るサイラスのもとへ。
倒れるように抱きつき、自らの身体も炎に包まれた。
「うあああっ!」
白銀色の閃光。
志求磨の体当たり。これは消失の技だ。
溢忌の姿を捉えて、まともに入った。
「へえ、これが消失の技っスか……残念、俺は《完全なる転生者》。アンタらみたいな半端な転移者とは違う。効かないっスね」
軽く手刀を振り下ろす。
志求磨の身体はボッ、と吸い込まれるように床にめり込んだ。その上からゴシャッ、と踏みつける。
「綾あっ!」
元の世界での名前を呼んでいた。
なんだ……何が起こっている……あっという間に大勢……死んだ。
わたしはその場に膝をつく。あまりの絶望感に。
「あらら、あまりの鬱展開に萎えちゃったっスか。これでも遠慮してんスけどね、残酷な殺し方しないように。アルマちゃんが引いちゃうんで」
「クソがあっ!」
ダンダン、ダンダンッ、と銃弾を撃ち込みながら近づくクレイグ。溢忌の目の前まで来たときにガチガチ、ガチガチッ、と弾切れの音。
「ち、戻ったところでクソみてえな死に方だったな」
溢忌の剣に貫かれ、クレイグは前のめりに倒れる。
「おい」
ナギサが後ろから組み付いた。願望の力を高め、そのまま身体をへし折ろうとする勢い。
「お、こんなカワイイ娘に抱き締められて嬉しいっスね。アルマちゃんと一緒にハーレムに入れてあげるっス」
「僕は──男だっ!」
「知ってるっスよ。《覇王》の息子さんスよね。父親と同じように自爆でもするんスか? 言っとくけど無駄死にっスよ」
「バカヤロウが……それより確実な方法がある。アルマっ!」
呼ばれたアルマ。こちらも異様な願望の高まり。二刀ダガーを目の前で交差し、決死の表情。
やめろ、まさか──死ぬ気か。
志求磨の身体を白銀色の光が包む。その瞳の色も同じように変化する。
「……うん。ここで仕留めなくちゃ……」
アルマが呟き、二刀ダガーをヒュヒュヒュッ、と回転させる。
「まさに外道。一切の情けは必要なし。活ッ!」
ビノッコが構え、足元の床を踏み砕く。
「一時とはいえ、貴様の下についた自分が許せん……喰らえ」
ショウの願望の力が炎と化し、背後からゴアッ、と集まる。
突き出した両掌から巨大な炎の気弾が飛んだ。
「獄炎鬼砲拳!」
「よっしゃ、俺も乗った!」
レオニードが孔雀緑色のオーラをまとった矢を追うように放った。
アルマの二刀ダガーからもバチバチィッ、と電撃が放射される。
元五禍将三人のパワー。その攻撃を葉桜溢忌は左の盾で受け止める。
「チートスキル、神器練精で作った熾天の盾。まあ、こんなので防がなくても俺、物理無効、魔法無効なんスけど」
盾でグアッ、と払うとそのエネルギーは上へ。天井をぶち破り、外へ飛び出していった。
「飽きたんでそろそろ真面目に戦うっスよ。あ、出来るだけ苦しまないようにはするっス」
「破ァッ!」
踏み込んで下から突き上げるようなビノッコの発勁。溢忌の身体が浮き上がった。
そこから拳、手刀、肘、足刀の連打。
ガガガガッ、と入ったが、溢忌は笑いながらビノッコの顔を両手で挟み──ゴキャッ、とひねる。
崩れ落ちるビノッコ。叫びながら日之影宵子が走る。
痺れが収まったわたしも走った。
葉桜溢忌の姿は消えていた。どこだ──。
呻き声。見ると、ショウの背後。ショウの胸板からは溢忌の手刀が飛び出している。
血を吐きながら倒れるショウ。溢忌の姿はまた消えていた。
「上だっ、レオニード!」
今度は見逃さなかった。レオニードの頭上で溢忌は剣を抜いた。
「ちいっ!」
レオニードは弓で受けたが──両断され、腰まで剣で斬り裂かれる。
ドシャアッ、と倒れるレオニード。
葉桜溢忌は剣の血を払いながら次の標的を目で追う。
「シッ!」
太刀風を放つ。
ヴンッ、と残像を残して溢忌は回避。
いや、途中で止まった。セプティミアの状態異常を引き起こすボカロ曲だ。動きが鈍くなっている。
すぐに神速で突っ込む。そこから無数の突きを放った。
ズガガガガッ、と溢忌の身体が衝撃で踊るように震え、倒れる。
そこから全身鎧に身を包んだサイラスが跳躍。ハルバートに全体重をかけ、落下。
溢忌の身体を串刺しにして床に縫いつける。
「まだだっ、どけっ、油断すんじゃねえっ!」
ズギャギャギャギャギャッ、とクレイグの回転式多銃身機関銃が火を吹く。
飛び退いてかわしたサイラス。残された溢忌は凄まじい銃弾の雨をハルバートに貫かれたまま受けた。
ひとしきり撃ち終えたクレイグ。キンキンッ、と薬莢が床に落ちる音。
クレイグの足元には踏み場もないほどに転がっている。
硝煙が晴れてきた。葉桜溢忌は──いない。いびつな形に変形したハルバートの残骸が床に刺さっているだけだ。
ボンッ、と爆発音。
サイラスからだ。全身鎧が砕け落ち、その身体が火に包まれている。
「サイラスッ!」
セプティミアがすかさず癒しのバラード曲。いや、バチン、と鍔鳴りの音とともにその喉が斬り裂かれていた。
「────ッ!」
セプティミアは自分の喉を押さえながらヨロヨロと歩き、燃え盛るサイラスのもとへ。
倒れるように抱きつき、自らの身体も炎に包まれた。
「うあああっ!」
白銀色の閃光。
志求磨の体当たり。これは消失の技だ。
溢忌の姿を捉えて、まともに入った。
「へえ、これが消失の技っスか……残念、俺は《完全なる転生者》。アンタらみたいな半端な転移者とは違う。効かないっスね」
軽く手刀を振り下ろす。
志求磨の身体はボッ、と吸い込まれるように床にめり込んだ。その上からゴシャッ、と踏みつける。
「綾あっ!」
元の世界での名前を呼んでいた。
なんだ……何が起こっている……あっという間に大勢……死んだ。
わたしはその場に膝をつく。あまりの絶望感に。
「あらら、あまりの鬱展開に萎えちゃったっスか。これでも遠慮してんスけどね、残酷な殺し方しないように。アルマちゃんが引いちゃうんで」
「クソがあっ!」
ダンダン、ダンダンッ、と銃弾を撃ち込みながら近づくクレイグ。溢忌の目の前まで来たときにガチガチ、ガチガチッ、と弾切れの音。
「ち、戻ったところでクソみてえな死に方だったな」
溢忌の剣に貫かれ、クレイグは前のめりに倒れる。
「おい」
ナギサが後ろから組み付いた。願望の力を高め、そのまま身体をへし折ろうとする勢い。
「お、こんなカワイイ娘に抱き締められて嬉しいっスね。アルマちゃんと一緒にハーレムに入れてあげるっス」
「僕は──男だっ!」
「知ってるっスよ。《覇王》の息子さんスよね。父親と同じように自爆でもするんスか? 言っとくけど無駄死にっスよ」
「バカヤロウが……それより確実な方法がある。アルマっ!」
呼ばれたアルマ。こちらも異様な願望の高まり。二刀ダガーを目の前で交差し、決死の表情。
やめろ、まさか──死ぬ気か。
0
お気に入りに追加
153
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★
ブレイブエイト〜異世界八犬伝伝説〜
蒼月丸
ファンタジー
異世界ハルヴァス。そこは平和なファンタジー世界だったが、新たな魔王であるタマズサが出現した事で大混乱に陥ってしまう。
魔王討伐に赴いた勇者一行も、タマズサによって壊滅してしまい、行方不明一名、死者二名、捕虜二名という結果に。このままだとハルヴァスが滅びるのも時間の問題だ。
それから数日後、地球にある後楽園ホールではプロレス大会が開かれていたが、ここにも魔王軍が攻め込んできて多くの客が殺されてしまう事態が起きた。
当然大会は中止。客の生き残りである東零夜は魔王軍に怒りを顕にし、憧れのレスラーである藍原倫子、彼女のパートナーの有原日和と共に、魔王軍がいるハルヴァスへと向かう事を決断したのだった。
八犬士達の意志を継ぐ選ばれし八人が、魔王タマズサとの戦いに挑む!
地球とハルヴァス、二つの世界を行き来するファンタジー作品、開幕!
Nolaノベル、PageMeku、ネオページ、なろうにも連載しています!
異世界の餓狼系男子
みくもっち
ファンタジー
【小説家は餓狼】に出てくるようなテンプレチート主人公に憧れる高校生、葉桜溢忌。
とあるきっかけで願望が実現する異世界に転生し、女神に祝福された溢忌はけた外れの強さを手に入れる。
だが、女神の手違いにより肝心の強力な108のチートスキルは別の転移者たちに行き渡ってしまった。
転移者(願望者)たちを倒し、自分が得るはずだったチートスキルを取り戻す旅へ。
ポンコツな女神とともに無事チートスキルを取り戻し、最終目的である魔王を倒せるのか?
「異世界の剣聖女子」より約20年前の物語。
バトル多めのギャグあり、シリアスあり、テンポ早めの異世界ストーリーです。
*素敵な表紙イラストは前回と同じく朱シオさんです。 @akasiosio
ちなみに、この女の子は主人公ではなく、準主役のキャラクターです。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
アイムキャット❕~異世界キャット驚く漫遊記~
ma-no
ファンタジー
神様のミスで森に住む猫に転生させられた元人間。猫として第二の人生を歩むがこの世界は何かがおかしい。引っ掛かりはあるものの、猫家族と楽しく過ごしていた主人公は、ミスに気付いた神様に詫びの品を受け取る。
その品とは、全世界で使われた魔法が載っている魔法書。元人間の性からか、魔法書で変身魔法を探した主人公は、立って歩く猫へと変身する。
世界でただ一匹の歩く猫は、人間の住む街に行けば騒動勃発。
そして何故かハンターになって、王様に即位!?
この物語りは、歩く猫となった主人公がやらかしながら異世界を自由気ままに生きるドタバタコメディである。
注:イラストはイメージであって、登場猫物と異なります。
R指定は念の為です。
登場人物紹介は「11、15、19章」の手前にあります。
「小説家になろう」「カクヨム」にて、同時掲載しております。
一番最後にも登場人物紹介がありますので、途中でキャラを忘れている方はそちらをお読みください。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-
ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。
困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。
はい、ご注文は?
調味料、それとも武器ですか?
カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。
村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。
いずれは世界へ通じる道を繋げるために。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる