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第3章 奪還
13 幼女
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第2隊が無事にビジネスホテルへ到着したのを魔導書のマップで確認した葵は、マルグリットへリッカの加勢へ行くように指示を出していた。
こちらでは信じられない光景が広がっていた。
まさに80メートル級の巨大怪獣と化したC級魔族。
それが戦姫フレイア・グラムロックの攻撃で──一撃である。
縦に両断された身体は瞬時に崩壊。周りの道路や建物に被害を出すことなく、バラバラになった小さな破片が黒い雪のように降っていた。
「やっぱり脆いね。まあこんなもんか。さて次は──」
フレイアは竜殺剣バルムンクの先を上に向けた。
ビルの上で眺めていたS級魔族テネスリードは鼻をポリポリかきながら首をかしげる。
「ん~? おかしいな。かなりの再生力があったはずなのに、たった一撃なんて。ケタはずれの破壊力か、その武器か本人の特性なのかな。興味深いね~」
「余裕カマしている場合かなぁ。次はアンタにブチかますつもりなんだけど。アタシ、子供相手でも手加減しないから」
フレイアはまずそのビルに向かって突進。大剣を突き出した姿勢でビルのどてっ腹を貫いた。
ゴッ、とビルが積み木が崩れるように分解。屋上にいたテネスリードは真っ逆さまに落下する。
「へえ~、なんか結合崩壊を促す力っぽいね。そんなの当たったら僕らでも危ないかもねー」
「多分死ぬだろうねぇ。ほらいくよ、竜撃──」
空中──逆さまのテネスリードとフレイアののんびりした会話。そこからブン、と大剣が振り下ろされた。
テネスリードの両手から光る壁のようなものが飛び出す。
バシイッ、と大剣の一撃を防いだが一瞬で粉々に。その反動でテネスリードは後方へ弾き飛ばされる。
「ふわー、驚いた。魔力でも防げないんだ。ここはいったん退いたほうがよさそうだね。対策を考えなきゃあ」
「逃げんの? どうしよっかな……ん~、立場上、追わせてもらおっか」
空間を縦に裂き、その歪みから逃れようとするテネスリード。その姿が吸い込まれ、空間が閉じようとしているところにフレイアが大剣をねじ込んだ。
「わわっ、無茶しないでよ。どうなってるの、それ。次元の裂け目が閉じるのを物理的に妨害するなんて。常識外れもいいとこだよ」
空間の中からテネスリードの慌てた声。フレイアは無表情でゴリゴリと大剣を動かして裂け目を広げようとしている。
そこへ、ババババ、と無数の黒い塊がフレイアへ迫る。
テネスリードの召喚したC級魔族の群れ。フレイアを空間の裂け目から引き剥がそうと手を伸ばす。
「ジャマ」
フレイアは背を向けたまま、闘気を発する。
フヴォッ、と熱線に触れた雪のように魔族たちは消し飛んだ。
だが──その瞬間、ガキンッ、と大剣が裂け目から外れて宙を舞う。そのままぐるぐる回りながら消えてしまった。
裂け目は閉じ、テネスリードは完全に姿を消した。いや、そんなことよりもフレイア自身の身体に劇的な変化が起こっていた。
コロンと道路に転がってジタバタしている。
その姿は3、4歳の赤髪の幼女。服装までも幼女サイズに縮まっている。
「ひゃわわ……やびゃい。死ぬ」
幼女フレイアは慌てた様子でこちらへ向かおうとしているが、数歩走ったところで転んでしまった。
彼女を狙い、道路脇からC級魔族が湧き出てくる。その黒い凶悪な爪と牙で無力な幼女を切り裂こうと襲いかかる──が、ドドドッ、とツァイシーの矢が魔族どもを貫く。
さらに驚愕の速さで接近した雛形結。白妙のような斬閃が描かれると残りの魔族どもは次々と両断され、消滅した。
「ふいー、助かった。あ、けど礼はゆわないかやな。アタチが最初にデカイの倒したんやから」
こちらに戻ってきたフレイアはふんぞり返りながら言い放つ。結もツァイシーもどう言い返したものか反応に困っているようだ。
そう、数多の悪竜、邪竜を倒してきた竜討伐者であり、自身も竜の力を宿すフレイア・グラムロックの正体はこの幼女の姿なのである。
単純な戦闘能力では戦神八姫の中では最強。だがその17歳ほどの姿でいられるのはランダムで1分から5分ほど。
次にまたその姿になれるのはインターバルを挟まなければいけないのだが、それもまたランダムで数分から1時間と予測がつかず、本人にもわからない。なんとも使い勝手の悪い戦姫なのであった。
ともかくも魔族を撃退できた葵たち第1隊は急いで国道を進み、ビジネスホテルまであと数百メートルというところで召喚時間切れ。
結、ツァイシー、フレイアは本に戻ってしまい、葵はおおいに焦ったのだが、そこから先は魔族に襲撃されることなく無事ホテルへ到着したのだった。
こちらでは信じられない光景が広がっていた。
まさに80メートル級の巨大怪獣と化したC級魔族。
それが戦姫フレイア・グラムロックの攻撃で──一撃である。
縦に両断された身体は瞬時に崩壊。周りの道路や建物に被害を出すことなく、バラバラになった小さな破片が黒い雪のように降っていた。
「やっぱり脆いね。まあこんなもんか。さて次は──」
フレイアは竜殺剣バルムンクの先を上に向けた。
ビルの上で眺めていたS級魔族テネスリードは鼻をポリポリかきながら首をかしげる。
「ん~? おかしいな。かなりの再生力があったはずなのに、たった一撃なんて。ケタはずれの破壊力か、その武器か本人の特性なのかな。興味深いね~」
「余裕カマしている場合かなぁ。次はアンタにブチかますつもりなんだけど。アタシ、子供相手でも手加減しないから」
フレイアはまずそのビルに向かって突進。大剣を突き出した姿勢でビルのどてっ腹を貫いた。
ゴッ、とビルが積み木が崩れるように分解。屋上にいたテネスリードは真っ逆さまに落下する。
「へえ~、なんか結合崩壊を促す力っぽいね。そんなの当たったら僕らでも危ないかもねー」
「多分死ぬだろうねぇ。ほらいくよ、竜撃──」
空中──逆さまのテネスリードとフレイアののんびりした会話。そこからブン、と大剣が振り下ろされた。
テネスリードの両手から光る壁のようなものが飛び出す。
バシイッ、と大剣の一撃を防いだが一瞬で粉々に。その反動でテネスリードは後方へ弾き飛ばされる。
「ふわー、驚いた。魔力でも防げないんだ。ここはいったん退いたほうがよさそうだね。対策を考えなきゃあ」
「逃げんの? どうしよっかな……ん~、立場上、追わせてもらおっか」
空間を縦に裂き、その歪みから逃れようとするテネスリード。その姿が吸い込まれ、空間が閉じようとしているところにフレイアが大剣をねじ込んだ。
「わわっ、無茶しないでよ。どうなってるの、それ。次元の裂け目が閉じるのを物理的に妨害するなんて。常識外れもいいとこだよ」
空間の中からテネスリードの慌てた声。フレイアは無表情でゴリゴリと大剣を動かして裂け目を広げようとしている。
そこへ、ババババ、と無数の黒い塊がフレイアへ迫る。
テネスリードの召喚したC級魔族の群れ。フレイアを空間の裂け目から引き剥がそうと手を伸ばす。
「ジャマ」
フレイアは背を向けたまま、闘気を発する。
フヴォッ、と熱線に触れた雪のように魔族たちは消し飛んだ。
だが──その瞬間、ガキンッ、と大剣が裂け目から外れて宙を舞う。そのままぐるぐる回りながら消えてしまった。
裂け目は閉じ、テネスリードは完全に姿を消した。いや、そんなことよりもフレイア自身の身体に劇的な変化が起こっていた。
コロンと道路に転がってジタバタしている。
その姿は3、4歳の赤髪の幼女。服装までも幼女サイズに縮まっている。
「ひゃわわ……やびゃい。死ぬ」
幼女フレイアは慌てた様子でこちらへ向かおうとしているが、数歩走ったところで転んでしまった。
彼女を狙い、道路脇からC級魔族が湧き出てくる。その黒い凶悪な爪と牙で無力な幼女を切り裂こうと襲いかかる──が、ドドドッ、とツァイシーの矢が魔族どもを貫く。
さらに驚愕の速さで接近した雛形結。白妙のような斬閃が描かれると残りの魔族どもは次々と両断され、消滅した。
「ふいー、助かった。あ、けど礼はゆわないかやな。アタチが最初にデカイの倒したんやから」
こちらに戻ってきたフレイアはふんぞり返りながら言い放つ。結もツァイシーもどう言い返したものか反応に困っているようだ。
そう、数多の悪竜、邪竜を倒してきた竜討伐者であり、自身も竜の力を宿すフレイア・グラムロックの正体はこの幼女の姿なのである。
単純な戦闘能力では戦神八姫の中では最強。だがその17歳ほどの姿でいられるのはランダムで1分から5分ほど。
次にまたその姿になれるのはインターバルを挟まなければいけないのだが、それもまたランダムで数分から1時間と予測がつかず、本人にもわからない。なんとも使い勝手の悪い戦姫なのであった。
ともかくも魔族を撃退できた葵たち第1隊は急いで国道を進み、ビジネスホテルまであと数百メートルというところで召喚時間切れ。
結、ツァイシー、フレイアは本に戻ってしまい、葵はおおいに焦ったのだが、そこから先は魔族に襲撃されることなく無事ホテルへ到着したのだった。
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