14 / 66
第2章 壊れていく世界
7 ショッピングモール内の戦闘
しおりを挟む
魔族の集団。20体ほどが結に殺到。
ガアアッ、と獣のような咆哮に混じってコロス、クワセロ、といったザラついた人語が聞こえた。
結が踏み込み、袈裟懸けに斬りつける。
白妙のような美しい斬閃。瞬時に8体が切り裂かれて地面に転がる。
神刀──鬼屠破斬魔ノ華叉丸。
普通の太刀の間合いならばせいぜい一度に1、2体を斬るのが普通だが、この太刀は違う。
太刀を振ることによって結の破邪の気を増幅させて刀身より発し、実際の間合いより伸びて相手を斬ることができる。
怯んだ魔族めがけて刺突。ここでも間合いが伸び、3体貫いた。
そこから回転し、背後に回った魔族相手に横薙ぎの一閃。残りの魔族を両断した。
「外の魔族は片付けました。残るはあの建物の中です」
あいかわらずの圧倒的な強さに、葵は息をのんだ。
もしいつか自分が8人同時に戦姫を喚び出すことができるようになれば、もっと多くの魔族を──大軍ですら倒すことができる。
シノが言ったように、本当にこの世界を救うことができるかもしれない。
「本当にスゴいな、この本は。あんな力を持つ人物を具現化できるんだから」
葵が魔導書【アンカルネ・イストワール】をパラパラめくりながらシノに言うと、シノはいいえ、とそれを否定した。
「スゴいのはあなたの創造力なのデス。他の人間ではあれほどの力を持つ人物……いえ、具現化することさえ難しいでショウ。わたしが魔族の侵攻より早くあなたに会うことができて幸運でシタ」
シュウシュウと消滅していく魔族の残骸を指さしながらシノは続ける。
「魔族は人間を食らっているように見えますが、実際はその創造力を糧としているのデス。低級の魔族ほどその方法が雑で、補食という形で創造力を得ているのでスガ。あなたのような創作者は魔族に狙われやスイ。普通の人間より豊富で純度の高い創造力を持っているカラ」
それを聞いて葵はぞっとする。
戦姫から守られているとはいえ、あの恐ろしい魔族に狙われやすい特性を持っていたとは。そういうことはもっと早く教えてほしい。
「葵様、あの建物内にはさらに多くの敵が潜んでおります。しかもより強く、大きな反応が感じられます。中へ入るのならばそれなりのお覚悟を」
結が太刀をブンと振り、刀身に付いた魔族の体液を払い落としながら言った。
ここまで来てあとには引けないと、葵は歩きだす。
ショッピングモールの中。やはり人の姿はない。
1階手前にはハンバーガーショップやレストラン、カフェ。奥にはアパレルショップが並んでいる。
葵たちが中に入ると同時にカウンターやテーブルの下からグモモモ、と黒い塊が現れ、ギロギロと赤い目を光らせる。
魔族──数が多い。しかも屋内で囲まれやすい。結には不利な状況だと判断した葵はアンカルネ・イストワールを発動させようとする。
「葵様、お待ちください。この状況はわたくしに有利です」
結がそれを止めた。そして魔族の集団の中に飛び込む。
ガアッ、と四方から迫る爪や牙を回転しながら叩き落とし、斬り飛ばす。
それから床に太刀を突き立て、破邪の陣を発生──パパパパッ、と周りの魔族を消滅させた。
結の破邪の力はさらに壁、柱にも伝導。そこに触れていた魔族の身体も崩壊させる。
「これが結の言っていた有利な状況か。たしかにこれなら──」
だがズズン、ゴッ、と2階の通路からも魔族の群れが飛び降りてきた。フロアにひしめくような数。
葵のほうにも複数の魔族が押し寄せてきた。
シノが火球を飛ばして前進を止めた。その隙に結が斬り進みながら戻ってくる。
「はあっっ!」
太刀を突き出して踏み込み、そこから一気に斬り上げた。
ズバンッッ、と葵の目の前で魔族の集団が打ち上げられながら消滅。
だが敵にうしろを見せた状態。ついに結の頭や肩に魔族の爪が届いた。
あっという間に複数の魔族にのしかかれ、倒れる結。魔族どもは狂喜の声をあげながら爪を振るい、牙を突き立てる。
「ゆっ、結っ! まずいっ! ぐえっ」
アンカルネ・イストワールを発動させるのも忘れて葵は駆け寄ろうとし、襟首をシノに思い切り引っ張られる。
「落ち着イテ。死ぬ気ですか、葵サン」
「でもっ、結が!」
「よく見てくだサイ。無事なようデス」
山のように重なりあった魔族の群れ。中央から火山が噴火したように白い光が飛び出す。
太刀を振りかざした結だ。宙に舞った魔族たちをメッタ斬りにしながら落下。
着地点で待ち構えている魔族を両断。その破邪の力は床一面に広がり、残りの魔族を一掃した。
「この階にいる敵はこれで終いのようです。あとは2階……強い反応はそこからです」
しゃらん、と柄に付いた鈴を鳴らしながら結は太刀の先を2階のほうへ向けた。その身体はキズひとつ付いていなかった。
ガアアッ、と獣のような咆哮に混じってコロス、クワセロ、といったザラついた人語が聞こえた。
結が踏み込み、袈裟懸けに斬りつける。
白妙のような美しい斬閃。瞬時に8体が切り裂かれて地面に転がる。
神刀──鬼屠破斬魔ノ華叉丸。
普通の太刀の間合いならばせいぜい一度に1、2体を斬るのが普通だが、この太刀は違う。
太刀を振ることによって結の破邪の気を増幅させて刀身より発し、実際の間合いより伸びて相手を斬ることができる。
怯んだ魔族めがけて刺突。ここでも間合いが伸び、3体貫いた。
そこから回転し、背後に回った魔族相手に横薙ぎの一閃。残りの魔族を両断した。
「外の魔族は片付けました。残るはあの建物の中です」
あいかわらずの圧倒的な強さに、葵は息をのんだ。
もしいつか自分が8人同時に戦姫を喚び出すことができるようになれば、もっと多くの魔族を──大軍ですら倒すことができる。
シノが言ったように、本当にこの世界を救うことができるかもしれない。
「本当にスゴいな、この本は。あんな力を持つ人物を具現化できるんだから」
葵が魔導書【アンカルネ・イストワール】をパラパラめくりながらシノに言うと、シノはいいえ、とそれを否定した。
「スゴいのはあなたの創造力なのデス。他の人間ではあれほどの力を持つ人物……いえ、具現化することさえ難しいでショウ。わたしが魔族の侵攻より早くあなたに会うことができて幸運でシタ」
シュウシュウと消滅していく魔族の残骸を指さしながらシノは続ける。
「魔族は人間を食らっているように見えますが、実際はその創造力を糧としているのデス。低級の魔族ほどその方法が雑で、補食という形で創造力を得ているのでスガ。あなたのような創作者は魔族に狙われやスイ。普通の人間より豊富で純度の高い創造力を持っているカラ」
それを聞いて葵はぞっとする。
戦姫から守られているとはいえ、あの恐ろしい魔族に狙われやすい特性を持っていたとは。そういうことはもっと早く教えてほしい。
「葵様、あの建物内にはさらに多くの敵が潜んでおります。しかもより強く、大きな反応が感じられます。中へ入るのならばそれなりのお覚悟を」
結が太刀をブンと振り、刀身に付いた魔族の体液を払い落としながら言った。
ここまで来てあとには引けないと、葵は歩きだす。
ショッピングモールの中。やはり人の姿はない。
1階手前にはハンバーガーショップやレストラン、カフェ。奥にはアパレルショップが並んでいる。
葵たちが中に入ると同時にカウンターやテーブルの下からグモモモ、と黒い塊が現れ、ギロギロと赤い目を光らせる。
魔族──数が多い。しかも屋内で囲まれやすい。結には不利な状況だと判断した葵はアンカルネ・イストワールを発動させようとする。
「葵様、お待ちください。この状況はわたくしに有利です」
結がそれを止めた。そして魔族の集団の中に飛び込む。
ガアッ、と四方から迫る爪や牙を回転しながら叩き落とし、斬り飛ばす。
それから床に太刀を突き立て、破邪の陣を発生──パパパパッ、と周りの魔族を消滅させた。
結の破邪の力はさらに壁、柱にも伝導。そこに触れていた魔族の身体も崩壊させる。
「これが結の言っていた有利な状況か。たしかにこれなら──」
だがズズン、ゴッ、と2階の通路からも魔族の群れが飛び降りてきた。フロアにひしめくような数。
葵のほうにも複数の魔族が押し寄せてきた。
シノが火球を飛ばして前進を止めた。その隙に結が斬り進みながら戻ってくる。
「はあっっ!」
太刀を突き出して踏み込み、そこから一気に斬り上げた。
ズバンッッ、と葵の目の前で魔族の集団が打ち上げられながら消滅。
だが敵にうしろを見せた状態。ついに結の頭や肩に魔族の爪が届いた。
あっという間に複数の魔族にのしかかれ、倒れる結。魔族どもは狂喜の声をあげながら爪を振るい、牙を突き立てる。
「ゆっ、結っ! まずいっ! ぐえっ」
アンカルネ・イストワールを発動させるのも忘れて葵は駆け寄ろうとし、襟首をシノに思い切り引っ張られる。
「落ち着イテ。死ぬ気ですか、葵サン」
「でもっ、結が!」
「よく見てくだサイ。無事なようデス」
山のように重なりあった魔族の群れ。中央から火山が噴火したように白い光が飛び出す。
太刀を振りかざした結だ。宙に舞った魔族たちをメッタ斬りにしながら落下。
着地点で待ち構えている魔族を両断。その破邪の力は床一面に広がり、残りの魔族を一掃した。
「この階にいる敵はこれで終いのようです。あとは2階……強い反応はそこからです」
しゃらん、と柄に付いた鈴を鳴らしながら結は太刀の先を2階のほうへ向けた。その身体はキズひとつ付いていなかった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
魔王復活!
大好き丸
ファンタジー
世界を恐怖に陥れた最悪の魔王ヴァルタゼア。
勇者一行は魔王城ヘルキャッスルの罠を掻い潜り、
遂に魔王との戦いの火蓋が切って落とされた。
長き戦いの末、辛くも勝利した勇者一行に魔王は言い放つ。
「この体が滅びようと我が魂は不滅!」
魔王は復活を誓い、人類に恐怖を与え消滅したのだった。
それから時は流れ―。
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった
白藍まこと
恋愛
主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。
クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。
明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。
しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。
そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。
三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。
※他サイトでも掲載中です。
悠久の機甲歩兵
竹氏
ファンタジー
文明が崩壊してから800年。文化や技術がリセットされた世界に、その理由を知っている人間は居なくなっていた。 彼はその世界で目覚めた。綻びだらけの太古の文明の記憶と機甲歩兵マキナを操る技術を持って。 文明が崩壊し変わり果てた世界で彼は生きる。今は放浪者として。
※現在毎日更新中
騎士学院のイノベーション
黒蓮
ファンタジー
この世界では、人間という種が生存できる範囲が極めて狭い。大陸の大部分を占めているのは、魔物蔓延る大森林だ。魔物は繁殖能力が非常に高く、獰猛で強大な力を有しており、魔物達にとってみれば人間など餌に過ぎない存在だ。
その為、遥か昔から人間は魔物と戦い続け、自らの生存域を死守することに尽力してきた。しかし、元々生物としての地力が違う魔物相手では、常に人間側は劣勢に甘んじていた。そうして長い年月の果て、魔物達の活動範囲は少しずつ人間の住む土地を侵食しており、人々の生活圏が脅かされていた。
しかし、この大陸には4つの天を突くほどの巨大な樹が点在しており、その大樹には不思議と魔物達は近寄ろうとしなかった。だからこそ魔物よりも弱者であるはずの人間が、長い年月生き残ってきたとも言える。そして人々は、その護りの加護をもたらす大樹の事を、崇拝の念を込めて『神樹《しんじゅ》』と呼んでいる。
これは神樹の麓にある4つの王国の内の一つ、ヴェストニア王国に存在する学院の物語である。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
【完結】勇者学園の異端児は強者ムーブをかましたい
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、pixivにも投稿中。
※小説家になろうでは最新『勇者祭編』の中盤まで連載中。
※アルファポリスでは『オスカーの帰郷編』まで公開し、完結表記にしています。
貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…
美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。
※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。
※イラストはAI生成です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる