もしも清少納言が現世に表れたら酷評されるだろうな…と思いながらの猫日記

伊藤 苺

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ねこまんま

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私が産まれた時ウチには既に何頭か犬がいて彼らにとっては赤ん坊の私が新参者でした。


中でもジローちゃんと言う
雑種のオスの中型犬は
穏やかな性質の頭の良い子で日光浴がてら庭に出ると母はジローちゃんに
私の乳母車の傍らに居る様に
守り役を命じていたそうです。


母の言葉に忠実に任務遂行中のジローちゃんと私が一緒に写る写真がありますが
確かに賢そうな面立ちの犬でした。


赤ん坊の事だから
時にはジローちゃんに迷惑な接し方もしたに違いありませんが
一度も吠えたり牙を見せたりした事もなく
常に大人(成犬)の対応で接してくれていた様です。


お陰で私は犬に恐怖心を持つ事無く動物好きの人生を歩み始めました。




私が3,4才の頃どの様な経緯でウチへやって来たのかは
定かではありませんが
私が名付けた
チッチと言うお腹が真っ白なメスの猫がいました。



チッチもジローちゃんに負けず劣らず良く出来た子で
予測不能な子供の行動に
シャー!とも言わずに遊び相手になってくれていたのを良く覚えています。


お陰で私は猫に恐怖心を持つ事なく動物好きの人生を歩み始めました。



当時犬は番犬としての役割があるので外で暮らすのが常識で
飼い主と飼い犬との間には
明確な主従関係がありました。


その一方で猫は家の中と外を自由に行き来して
飼っていると言うよりも

「ウチに猫がいる」

そんな感覚でした。


実際に猫は昼間は縄張りの巡回
夜間は猫の集会と多忙で
家を空ける事が多く
1番大切なお世話のはずの餌やりさえ
どのタイミングで
何を与えていたのか
ハッキリと思い出す事が出来ません。


当時猫の餌と言えば
ご飯にカツオ節のねこまんまが定番だったので
与えるとしたらそれですが
本当に猫にお米とカツオ節で良かったのでしょうか?


確かにカツオ節は好きそうでしたが
小さな捕食者は外の世界で
リアルなねこまんまで
お腹を満たしていた様です。

外から戻り縁側で

「うまかったにゃ~」

と、満足気に肉球の手入れをしたり
顔をフキフキしている様子は
今日の狩の成果を思い出して
ニコニコしている様にも見えました。


何を獲物にしていたのかは
想像すると怖いので止めておきます。



その頃は人と猫との関係を
円滑にする魅力的なごはんも
遊び道具もなかったので
どうコミュニケーションを取っていたのか?と思いますが
自由に外へ出ていた猫は
巡回で好奇心は満たされるので家で人間とじゃれ合ったりしなくても
それで満足していたのでしょう。



しかし外へ出れば他の猫と
衝突したりピリピリする場面にも出くわし
好奇心を満たすなんて
ハッピーな状況ばかりではなかったでしょう。


なので家は次の行動に備えて休める安息の場所でしょう。


だとしたら余程暇を持て余していない限り子供の相手なんて面倒くさかった事でしょう。




小型の肉食獣としてのプライドと習性を持ちながらも
絶対に危害を与えてこない人間に気を許してくれて
ちょっと都合良くなった生活を

「悪くない」

としてウチの猫でいてくれて

「シャー!」

を言わなかったのも

「敵として認めてないから」

そんな風にあしらわれていたのかも知れません。


けれどチッチは日向で
丸くなり昼寝をする姿を
見せてくれたり
ただ丸くなるだけではなく
お日様に当てた
干したての布団の上で
「今温々中なので
邪魔しないでね~」
と絶対に退かないスタンスで昼寝を続けたりも得意でしたが
抱っこをさせてくれたり
冬は布団に入って来たりして
私を猫好きにした功績の大きい子です。







年を重ねた野性寄りのチッチは
本能に従ったのか
ある日私達の前から姿を消して二度と会う事はありませんでした。


チッチの姿がないのは
寂しかったけれどそのうちにひょっこり帰って来るかも…と思わせてくれたのは
猫なりの恩返しだったのかも知れません。
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