アオイナツ物語

伊藤 苺

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マコトの野望⑧

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先輩の寝息と肩に回された腕の重みが心地良くいつの間にか僕も眠ってしまった様だ。







「ハヤター、もういい加減に起きないと遅刻するぞー。」

朝のルーティン、聞き慣れた言葉だけど声の主が母親じゃない。

えっ?これ夢?

ボサボサの頭を手で撫で付けながら階段を下りるとなんとそこには先輩がバスタオルを持って待ち構えていた。

「あー、またこんな寝グセ付けて。サッサとシャワー浴びてこい。」

「ふぁい。いってきやす。」

フワリとバスタオルを頭から掛けられる。


夢でも寝ぼけまなこってあるんだなーと思いながらシャワーを済ませ部屋に戻ると今度はドライヤーを持った先輩が待ち構えていた。

「お前また扇風機で乾かして寝たな。
ちゃんとドライヤーしてキッチリ乾かせば寝グセ付かなくて朝楽なんだから。」


「あー、だからショーゴ君は朝でも髪サラサラなんだね。」

(はあっ?お前今先輩に向かってショーゴ君って言ったな!
いつからそんな間柄になったんだよ!
しかも髪乾かして貰って何様だよ、羨まし過ぎるじゃないか!)



「ショーゴ君今日仕事遅いの?」

(うわっ、こいつまたショーゴ君って)

「いや、いつも通り。」

「じゃあ待ち合わせしてご飯行く?」

(積極的だな…羨ましいぞ)


「そうだな、それもいいけど
スミコさんが送ってくれた野菜が沢山あるんだ。それとスイカも。だから今日は家で一緒にメシ作ろうよ。」

(微妙に現実とシンクロしてる)

「あー、いいねそれ。」



どうやら寝起きのボサボサ頭はシャワー後毎日先輩にセットして貰っているらしい。

「出来た。」

と言って先輩が最後にスンと僕の髪の匂いを嗅ぐのがこちらの世界のルーティンらしい。

それで終わりかと思ったら背後から先輩の腕が回って来て、こ、これはあの日のバックハグ!
意識が遠くなる。
誰か救急車を呼んで…






「おい、ハヤタしっかりしろ!」


「どうしよう、誰か救急車呼んで!」



あれっ?バックハグされたと思ったら今度は正面から抱っこですか?

「あっ、気が付いたみたい!」

「良かった!おい、分かるか?」

「う、、、」

「無理に動かない方がいい。」

あたた…さっき先輩にポフポフされていた頭が…この痛さは何なんだ?


それに何だか、このザワつきは?



そうだ昼の休憩が終わってグランドに出たら後頭部に何かパコーンと衝撃があってそこで記憶は途絶えて気が付いたら先輩に抱きかかえられていた。

これはこれでいい感じだけど。



近くに平謝りするサッカー部の人達がいた事から推測するに
誰かが蹴ったボールが僕の後頭部を直撃したらしい。

だから頭の夢?

「一応病院へ行った方がいいですね。」

サッカー部の監督とウチの監督で相談して救急車には乗らなかったけれど僕は合宿初日に戦線を離脱した。


病院へ向かう車の中で付き添ってくれた先輩が握る僕の手にキュッと力が込められた。


「死ぬなよ、ハヤタ。」

「これは死なないやつだと思います。」

夢の続き見たいし。


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