アオイナツ物語

マコトの野望⑦

熱中症アラートとか運動禁止とか猛暑は夏休みの部活動にも影響を及ぼしている。


強豪チームはそんな事お構いなしに練習に励んでいるのだろうけれど、進化中だけど僕達弱小チームは基礎体力的に不安があるので無理はさせないで下さい、と言う父母会の意向が非常に強い。


それを行動に移して食事当番の名目で集まった親達の監視は中々厳しい。


なので数年前から昼食後には
お昼寝タイムが設けられている。

先輩がお泊まり保育と言うのも無理はない。



だからと言って本当に寝らなくても良いので少し日が陰るまで校舎で涼しくしていればよいらしい。

しかし引退した先輩達は午前中の紅白戦でお疲れの様でグッスリだ。
この世代は元々緩い部活動希望なので仕方ない。


人間の体力ってこんなに早く下り坂にさしかかるのか…を目の当たりにした。


そんな中ショーゴ先輩はさすがにシニアでビッチリ鍛え上げた人なので監視の目があるのでゴロゴロしてはいるが頭は起きている様だ。


満腹になったしスイカでタップリ水分もミネラルも補給したのでゴロっとしようとお昼寝マットなる物を手に空きスペースを探していると先輩のテリトリーに手招きされた。


(えっ？そっち行っていいんですか！)

先輩が隣のスペースに来る様にフロアをトントンしている。

(お昼寝タイムなので小さな声で)

「お邪魔します。」

「な、ハヤタこれ見てみろ。」

言われるままに先輩の隣に腹ばいになりプロ野球選手の投球練習の動画が再生されているスマホを覗き込む。


「体の使い方の研究してるのとか色々あるぞ。」

ふんふん、としばらく見入っていてハッと気が付くと
スースー言ってるこれは寝息でしょうか？
この体制でー！
先輩は右腕を僕の肩に回したまま寝落ちしてしまった。

しっかりホールドされていて動けないけど動きたくない。
しかもこんな至近距離に先輩の顔があったら勿体なくて眠れません。

嗅ぎ覚えのあるいい匂いするし。

眠りたくないけどだんだんと蝉の声が遠退いて行く。