アオイナツ物語

伊藤 苺

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お泊まり後日談(櫻井家)

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「あら、知ってたわよ。
おばさん夫婦の家から通ってるんでしょ。
ご両親お亡くなりになったんですってね。
お気の毒だわね。
ショーゴさんはまだ小学生だったそうじゃない。」


合宿に出掛けるのでサクッと朝食を済ませようとしたのに手が止まる展開になった。


「えっー!何でそんなに詳しいの?」

昨日スミコさんにお土産に貰ったトマトが朝食に出たので何となく先輩の境遇に触れたら母親の方が詳しそうだと判明した。


「だって父母会で一緒だもの。
言っとくけど直接聞いた訳じゃないわよ。いつも来てる方はおば様だってお仲間に聞いたんだからね。」

「なん?僕知らなかったけど。」

「腹減った、疲れた、眠い
しか言わない人にそんなデリケートな話したって仕方ないじゃない。
あんた人の話聞かないでそう言う所パパにそーっくりなんだから。」


人の話聞いてないって、ちょっと前にそれを反省したばかりだけどこんな重要な案件を知るチャンスを逃していたのかと思うと人の話はちゃんと聞かないと損失が生まれるんだ、と学習した。

僕だってもういい年頃だ。
大人の事情に疎いままでは居られない。
親の話ってまだらっこしいだけだもんねーと思うのは子供なんだと今度こそ反省しました。
たった今から人の話はちゃんと聞きますから知ってる情報は全部出して!




「じゃあ教えてあげるけど、ねえ、あんた分かってるの?あんたが普通と思ってる事が普通じゃない人もいるんだからね。」

前置きされた。


「今ね、ショーゴさんが進学しないって言い出しておばさん夫婦は困っているらしいのよ。

野球はともかくお勉強良く出来るんだから確実に推薦で
行かれるのに大学でやりたい事がないの一点張りなんですって。

お兄さんが高校を卒業して就職してお祖母さんの家を出たから
ショーゴさんは家に残ってお祖父さんお祖母さんの世話をしたいんですって。

優しいのはいいけど今時の若い子がそれだけの理由って事あるかしら?
お祖母様もそんな風に言われたら複雑でしょ。
大学行かないの自分のせいみたいになっちゃったら亡くなった娘さんに申し訳ないって。
そりゃそうよね。
気持ち分かるわー。
でね、みんなで進学を勧めてるけどなかなか首を縦に振らないんですって。

あ、首を縦に振るって意味分かる?」


「分かるよ。子供扱いすんなよ。」


「あらっ?それが教えて下さいって態度なの?
やめよっかなー、人の噂話なんて良くないし。」


「あ、ごめんごめん。もう生意気言いません。
けどー、進学しないとはチラッ聞いたけど先輩どうするつもりなんだろう。」


「それがねー、
(待ってました感満載じゃん!)

亡くなったお父さんの知り合いの人がやってる野球の施設?
バッティングセンターとかで働かせて貰うって勝手に決めちゃってるらしいのよ。そこなら通えるからって。」

「そうなんだ…」
(レア情報ありがとう!)


「それでね、ショーゴさんが進学しないって本当の理由とかってあんた分からないかな?
ちょっと聞いてみなさいよ。
仲良いんでしょ。

(仲良くなったの一昨日からだけど)

あ、そうそうショーゴさんのお祖父さんってお婿さんだけど資産家なんですってね。
お金の心配はしなくていいって言ったけどやっぱりダメなんですって。

ねー、きっと何か別の理由があるのよ。それ探ってらっしゃい。」


「僕が?それ聞くの?なんでそんな話になるの。
しかもお祖父さんの話まで
それもお仲間経由な訳?」


「あ、進学しないって困ってるって言うのはね、夕べショーゴさんのおばさんに電話で聞いたのよ。
1時間も喋っちゃた。

だってほらー、お祖母様に直接お礼言おうとしたらお泊まり許可の電話、あんたの携帯からだったじゃない。
だからね、電話番号聞きたかったのよ。

そしたら畑仕事で朝早いからもう寝てるし、合宿手伝いにいらっしゃるの? 
そんな様な事言ってたって。

だからね直接お礼言いに私も合宿に顔出すからお祖母様がいらしたら連絡するのよ。分かった?

あ、そうそう手ぶらって訳には行かないからお礼に何か買って来なきゃ。
甘い物とかお好きかしら。
もぉー、片付かないからさっさと食べて。
でもってとっとと出掛けなさい。
遅刻したらマコちゃんに叱られるわよ。」


(うへー、さっさとさせなかったの自分のくせに
しかもこれだけ喋って最後は命令かよ)

人の話を聞くのって忍耐が必要だ。


で、ミッションなんだっけ?















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