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夏休みなので③
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涼しい車内で過ごすうちに平常心に戻りつつある僕はある事を思い出した。
夏の大会で敗退したあの日
先輩の両親が応援に来ていたのかと思ったら
「おじさん、おばさんありがとう。」
試合後グランドを背に
先輩は2人にそう言って頭を下げていた。
おじさん?おばさん?…なんだ。
先輩とその人達の間柄も気になったが
これで最後になる先輩のユニフォーム姿を少しでも長く見ていたかったのに
僕はマコトに引きずられて更衣室へと引き上げてしまった。
途中新しい主将に任命されたマコトが
明日からの練習がどうだの
色々とまくしたてて来たけれどまともな返事をした記憶は一切ない。
(そうだ、あの時の人達の事
聞いてもいいかな?)
落ち着くと話たい事がチラチラと浮かんでくる。
それにしても窓の外の景色は
海辺へ向かっているはずなのに
さっきからトンネルと山ばかりで谷戸毎に集落が点在する景色が続いている。
海って感じじゃないけど…
と少し不安になった所で電車は目的の駅のホームに滑り込んだ。
あれっ?揺られているうちに平行軸がおかしくなった…
トトト、、、と斜面を上る様にドアに向かい降りて電車とホームを観察するとこの駅はかなりのカーブと傾斜で構成されている。
しかもトンネルを抜けて駅なのにホームの先にはまたトンネルが待ち構え周りは山に囲まれていた。
緑濃い山と青い空、それに眩しい程まっ真っ白な積乱雲。
セミも鳴いて完璧な夏のシチュエーション。
お婆ちゃんの家ってこう言う所にあるべきだ。
「着いた?」
到着時間を知らせてあったので先輩からメッセージが入った。
「着きました」
初めて降りるこの駅をもう少し観察したかったけれど
大事な先輩をお待たせする訳にも行かないので改札に向かい駅を出た。
次の瞬間僕は目を疑った。
「お疲れー!」
道路の向こうからこっちだ!
と手招きしているのは紛れもなくショーゴ先輩だけれども
それって?
なんで?神輿担ぐ格好?
私服?ですか?
僕は相当困惑した表情になっていたのだろう。
「今日祭りなんだ。」
察した先輩が補足情報をくれた。
「地元の祭りでさ、抜けられなくてこっち呼んじゃったんだけど、考えたら悪かったよね。
思春期の男子だからな、
祭りとか好きじゃないとかってあったかな?」
「あ、いえ、僕は全然。
(先輩の呼び出しなら何処へでも行きます!)
呼んで貰えて良かったです。
好きです。…あ、祭りとかです。」
(落ち着け。今は祭りの話だ。
コクってどうする!)
「そっか、なら良かった。
実は若手が特に人手不足でさ、誰か暇そうなやつ探して
呼んじゃおーかなーと思ってた
らハヤタからラインが来たんで誘ってしまった。」
(そんなニコヤカに僕を見ないで下さい。
この段階ではまだキュン死したくないですから。)
「立ち話もなんだから車、
乗って。
とりあえず俺んちな。」
ラインをしてしまった以上
まず理由を説明しなければいけないかと思っていたのに
なんだか先輩のペースに巻き込まれて行く。
夏の大会で敗退したあの日
先輩の両親が応援に来ていたのかと思ったら
「おじさん、おばさんありがとう。」
試合後グランドを背に
先輩は2人にそう言って頭を下げていた。
おじさん?おばさん?…なんだ。
先輩とその人達の間柄も気になったが
これで最後になる先輩のユニフォーム姿を少しでも長く見ていたかったのに
僕はマコトに引きずられて更衣室へと引き上げてしまった。
途中新しい主将に任命されたマコトが
明日からの練習がどうだの
色々とまくしたてて来たけれどまともな返事をした記憶は一切ない。
(そうだ、あの時の人達の事
聞いてもいいかな?)
落ち着くと話たい事がチラチラと浮かんでくる。
それにしても窓の外の景色は
海辺へ向かっているはずなのに
さっきからトンネルと山ばかりで谷戸毎に集落が点在する景色が続いている。
海って感じじゃないけど…
と少し不安になった所で電車は目的の駅のホームに滑り込んだ。
あれっ?揺られているうちに平行軸がおかしくなった…
トトト、、、と斜面を上る様にドアに向かい降りて電車とホームを観察するとこの駅はかなりのカーブと傾斜で構成されている。
しかもトンネルを抜けて駅なのにホームの先にはまたトンネルが待ち構え周りは山に囲まれていた。
緑濃い山と青い空、それに眩しい程まっ真っ白な積乱雲。
セミも鳴いて完璧な夏のシチュエーション。
お婆ちゃんの家ってこう言う所にあるべきだ。
「着いた?」
到着時間を知らせてあったので先輩からメッセージが入った。
「着きました」
初めて降りるこの駅をもう少し観察したかったけれど
大事な先輩をお待たせする訳にも行かないので改札に向かい駅を出た。
次の瞬間僕は目を疑った。
「お疲れー!」
道路の向こうからこっちだ!
と手招きしているのは紛れもなくショーゴ先輩だけれども
それって?
なんで?神輿担ぐ格好?
私服?ですか?
僕は相当困惑した表情になっていたのだろう。
「今日祭りなんだ。」
察した先輩が補足情報をくれた。
「地元の祭りでさ、抜けられなくてこっち呼んじゃったんだけど、考えたら悪かったよね。
思春期の男子だからな、
祭りとか好きじゃないとかってあったかな?」
「あ、いえ、僕は全然。
(先輩の呼び出しなら何処へでも行きます!)
呼んで貰えて良かったです。
好きです。…あ、祭りとかです。」
(落ち着け。今は祭りの話だ。
コクってどうする!)
「そっか、なら良かった。
実は若手が特に人手不足でさ、誰か暇そうなやつ探して
呼んじゃおーかなーと思ってた
らハヤタからラインが来たんで誘ってしまった。」
(そんなニコヤカに僕を見ないで下さい。
この段階ではまだキュン死したくないですから。)
「立ち話もなんだから車、
乗って。
とりあえず俺んちな。」
ラインをしてしまった以上
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