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平和編
偶然たる幸運
しおりを挟むあ、ティアラをしたままだった。思い出したシズは、はずそうと思ったら、仮面の男が現れた。男は問答無用で拳を振り上げてきた。
「あんなにお姫様扱いだったのに、随分扱いがガサツになったな。逆ギレか? 」
「事態が事態ですので。少し眠っていただこうかと」
穏やかな口調と共に、再び殴ってき、シズは背面に反って避けると、そのままブリッジをしてバク天を決めながら顎を蹴り上げた。そのまま手をついて、立ち上がるとふらついた相手の腹に一発蹴りをいれ引き、すかさず懐に飛び込むと腹を殴った。男は咳き込みながら倒れた。シズはティアラをはずすと、男の頭巾の上から無理矢理かぶせた。
「かわいそうだからそれあげる」
やっと、式場のひとつ下、シズが軟禁されていた部屋の階に来れたが、仮面の男達がぞろぞろと沸いてくる。
「お前ら今までどこに隠れてたんだよ。どんだけうじゃうじゃいたんだよ。悪寒が走るぜ」
シズは黒光りのあれを想像する。
「これから先は行かせません」
シズは人数を数える。五人、いや六人いる。このまま下にいくには、やっぱり隠し通路を使った方がよさそうだとシズは考える。右足を下げる。敵が距離を詰めてくると、腰を入れて顔面を狙って蹴り上げたが避けられた。もう一度、回し蹴りで顔を狙うふりをして、もう一周回って、横腹を蹴り飛ばすと、仲間の方へ飛び、倒れた。途端、後ろから羽交い絞めにされた。両肘を閉めて、後頭部で敵の顔面を打ち付けてやると拘束が緩んだ。その間に正面からもうひとり来た。左手で背後の奴の右手を取りながら、正面の奴の蹴り飛ばし、
「おりゃあああっ! 」
背後の奴をそいつの上にシズは投げ飛ばした。
「くそっ! 」
一応、シズに杖を使ってこなかったようだが、しびれを切らし、仮面の男が杖を振り下ろしてきた。シズは頭を抱え、左の膝を床につけてしゃがみ、杖を攻撃を左によけ、右足を敵の足の間にいれる。そして右手を上から大きく振りかざすと、相手の股間に振り上げた。男は声にならない叫びを上げながら膝が曲がった時を逃さず、足を引っ張り背後に倒れさせた。すぐさま立ち上がると、最後のひとりの背中に回る。
「人生二回目はお前だ」
「え? 」
手を回し、男の腰の前でしっかり組むと持ち上げ、そのまま反り投げる。尻もちをつくことなく、するりと立ち上がる。前より綺麗に決まった、ジャーマンスープレックス。
「やっべ、今の超カッコイイ」
シズは床に倒れている人数を数える。五人。ひとり逃げたか。部屋に入ると、まっすぐ本棚の方へ行く。深呼吸をする。やはり今日は一段とそわそわする。式の前に、頬の内側を噛んでいた。しょぼい痛みだが、地味に気になる。これで正気を保っていられるだろうか。隠し扉の通路を開ける。背後に人の気配がした。仮面の男が花瓶を振り上げていた。シズはとりあえず頭を守ろうと腕で覆った。痛みを待ったが、来ない。そして花瓶が割れる音に遅れて、どさりと人の倒れる音がした。床に仮面の男が倒れている。その後ろに、仲間であるはずの仮面の男が立っていた。
「本当にビビるぐらいに、ミトスにそっくりだな」
敵であるはずの男は、まじまじとシズを見て、仮面と黒の頭巾をはずした。そこから鮮やかな色の髪が見えた。月明かりでははっきりと言えないが、オレンジの髪だった。
「お前、ルバ・ソーか? 」
「お前は、シズ・カンダだな。サルファーから聞いたよ。ミトスのそっくりちゃん」
ルバは微笑んだ。そして開いたドアの方を振り返る。
「アベンチュレのヨンキョクが来てる。お前を助けに」
「お前はどうしてここに? どうやって紛れ込んだ」
再び私をみたルバは微笑みを崩さない。冷たいよな、諦めたような、悟ったような、狂ったような、ピエロみたいな微笑だ。
「神の団の男をひとり捕まえてね。入れ替わった」
「そいつ、生きてるのか? 」
「ああ。閉じ込めてるだけさ」
そしてシズに指をさした。
「それ、隠し通路? 」
シズの後ろを指さした。
「ああ。ここから下に行けば、外に出れる。一緒に逃げるか? 」
隠し通路をさしていた指を、ルバは上に向けた。
「あいつはまだ、てっぺんにいるだろう? 」
カバンサがアルガーだと分かっている。ここにいるのだから当たり前だろう、とシズは考える。
「運よく今のあいつの素性が分かってね。やっとここまで来た」
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