220 / 241
平和編
満月の下の婚礼
しおりを挟む「報告させていただきます。使用人に扮していたのはまだ14歳の少年でした。彼は平民で、妹と平民街で買い物をしている時に貴族の女性に声をかけかられ、事情はよく知らずにここへ来たそうです」
「その女性というのは?」
「名は名乗らなかったそうです。黒いマントを羽織り、フードも深く被っていたようで、顔も分からなかったと。彼の母親は病に倒れており、父親は地方貴族の屋敷で使用人として働き、治療費を稼いでいるそうです。事情を知った女性にある人物に飲み物を手渡すだけで、母親の治療費を全額負担するからと雇われたようでして」
おそらくメアリーかルーシーでしょうけど、確認する方法がなさそうね。
「メアリー様には、気分が悪そうな人は3階にある客室へ案内するようにと指示されただけのようです」
「それについてはメアリーも同じように証言しております。ただ、新しい使用人だと思ったという証言については疑念の余地がありますが」
3階までその少年にアルフレッド様を連れてきてもらい、ルーシーと変わって部屋まで連れてくる計画だったのかしら。
「手渡す相手がアルフレッド様だとはいつ指示があったのですか?」
「はい。どうやら自宅に手紙が届いたようで、そこには指示された飲み物を金髪金目の青年にリリーナからだと言って飲ませること。全て飲み切るのを見届けること。数分してその青年の気分が悪くなったら客室へ連れてくること。と記載されていたようです」
その他にも、公爵邸への行き方や着替えは着いてから手渡すこと、この手紙は読んだら焼き捨てるように、と書かれていたそうで。
「公爵邸内にはメイドが入れてくれたそうなのですが、初めて見た公爵家本邸に圧倒されメイドの容姿は覚えていないようです。また、飲ませる相手が殿下であるとは知らなかったようで、知った時は怯えていました」
その少年も何かおかしいと思ったけれど、治療費が必要だから指示通りに動いたみたい。
証拠が何も残っていないから誰も罪に問えないわね。薬草の入ったグラスにはどちらかの指紋が付いているでしょうけど、指紋を取る技術がないし、仮に取れたとしても照合できないし証拠物としてなりたたないのよね…。
私もルーシーから得た情報を共有しておきましょう。
「ホワイトさんですが、メアリーが王都で雇ったメイドとして邸内に入ったと思われます。彼女を同じ馬車に乗せるため、メアリーは私と共に乗るのを拒否したのでしょう。また、彼女が私のドレスを着ていた理由ですが、アルフレッド様が私と間違えるから、だそうです」
「なんだって?」
まぁ…驚くわよね。
「何も分かってないのね、とも言われました。もしかすると二人が協力関係だと思っているのはメアリーだけかもしれません」
「その可能性は高いと私も思います。メアリーはホワイト嬢がリリーナのドレスを着て会場内にいることには気付いていなかったようなので。彼女を公爵邸内に入れたのは脅されたからだと言っていましたが、恐らくその少年を入れるために連れてきたのでしょう」
お兄様も私と同じ考えのようね。やっぱりメアリーの計画を知った上でルーシーはメアリーを裏切るつもりでいるんだわ。それにしても、メアリーはルーシーを信用し過ぎじゃない?
「必ずまた仕掛けてくるだろうな」
早急に薬草の成分を調べ、分かり次第今後の動きを話し合おうと約束し、今日は解散となった。
*
*
「お兄様。メアリーは利用されていることに気付いていないようですが、教えてさしあげないのですか?」
「教えたらメアリーはホワイト嬢を切るだろうな。動きにくくなった彼女は必ず他に使える人間を見つけるだろう。でもそれはメアリーにも言える話だ。このまま二人で動いてもらった方が一番被害が少なく済む」
メアリーが心を入れ替えてくれるといいんだがと言ったお兄様は、どこか寂しそうな顔をしていた。正直私はどっちでもいいけれど、確かに家族を壊したいわけじゃないなと思いながら自室に戻り眠りについた。
------------------
※余談※
利用された少年の母親の治療費はレオニールが利息無しで貸し出し、少年の家族を公爵家の下級使用人として雇った。返済が終わるまで給料は減額支払いになるけど、公爵家の使用人宿舎に食事付きで部屋を与えられ、また家族みんなで住めるので、少年の家族はレオニールに大変感謝しているそう。
レオニールは、この件で恨まれ行動を起こされてから消すよりも、先回りして動いたほうが処理が楽だからそうしただけ。リリーナは兄だけは敵に回したくないと改めて思ったらしい。
「その女性というのは?」
「名は名乗らなかったそうです。黒いマントを羽織り、フードも深く被っていたようで、顔も分からなかったと。彼の母親は病に倒れており、父親は地方貴族の屋敷で使用人として働き、治療費を稼いでいるそうです。事情を知った女性にある人物に飲み物を手渡すだけで、母親の治療費を全額負担するからと雇われたようでして」
おそらくメアリーかルーシーでしょうけど、確認する方法がなさそうね。
「メアリー様には、気分が悪そうな人は3階にある客室へ案内するようにと指示されただけのようです」
「それについてはメアリーも同じように証言しております。ただ、新しい使用人だと思ったという証言については疑念の余地がありますが」
3階までその少年にアルフレッド様を連れてきてもらい、ルーシーと変わって部屋まで連れてくる計画だったのかしら。
「手渡す相手がアルフレッド様だとはいつ指示があったのですか?」
「はい。どうやら自宅に手紙が届いたようで、そこには指示された飲み物を金髪金目の青年にリリーナからだと言って飲ませること。全て飲み切るのを見届けること。数分してその青年の気分が悪くなったら客室へ連れてくること。と記載されていたようです」
その他にも、公爵邸への行き方や着替えは着いてから手渡すこと、この手紙は読んだら焼き捨てるように、と書かれていたそうで。
「公爵邸内にはメイドが入れてくれたそうなのですが、初めて見た公爵家本邸に圧倒されメイドの容姿は覚えていないようです。また、飲ませる相手が殿下であるとは知らなかったようで、知った時は怯えていました」
その少年も何かおかしいと思ったけれど、治療費が必要だから指示通りに動いたみたい。
証拠が何も残っていないから誰も罪に問えないわね。薬草の入ったグラスにはどちらかの指紋が付いているでしょうけど、指紋を取る技術がないし、仮に取れたとしても照合できないし証拠物としてなりたたないのよね…。
私もルーシーから得た情報を共有しておきましょう。
「ホワイトさんですが、メアリーが王都で雇ったメイドとして邸内に入ったと思われます。彼女を同じ馬車に乗せるため、メアリーは私と共に乗るのを拒否したのでしょう。また、彼女が私のドレスを着ていた理由ですが、アルフレッド様が私と間違えるから、だそうです」
「なんだって?」
まぁ…驚くわよね。
「何も分かってないのね、とも言われました。もしかすると二人が協力関係だと思っているのはメアリーだけかもしれません」
「その可能性は高いと私も思います。メアリーはホワイト嬢がリリーナのドレスを着て会場内にいることには気付いていなかったようなので。彼女を公爵邸内に入れたのは脅されたからだと言っていましたが、恐らくその少年を入れるために連れてきたのでしょう」
お兄様も私と同じ考えのようね。やっぱりメアリーの計画を知った上でルーシーはメアリーを裏切るつもりでいるんだわ。それにしても、メアリーはルーシーを信用し過ぎじゃない?
「必ずまた仕掛けてくるだろうな」
早急に薬草の成分を調べ、分かり次第今後の動きを話し合おうと約束し、今日は解散となった。
*
*
「お兄様。メアリーは利用されていることに気付いていないようですが、教えてさしあげないのですか?」
「教えたらメアリーはホワイト嬢を切るだろうな。動きにくくなった彼女は必ず他に使える人間を見つけるだろう。でもそれはメアリーにも言える話だ。このまま二人で動いてもらった方が一番被害が少なく済む」
メアリーが心を入れ替えてくれるといいんだがと言ったお兄様は、どこか寂しそうな顔をしていた。正直私はどっちでもいいけれど、確かに家族を壊したいわけじゃないなと思いながら自室に戻り眠りについた。
------------------
※余談※
利用された少年の母親の治療費はレオニールが利息無しで貸し出し、少年の家族を公爵家の下級使用人として雇った。返済が終わるまで給料は減額支払いになるけど、公爵家の使用人宿舎に食事付きで部屋を与えられ、また家族みんなで住めるので、少年の家族はレオニールに大変感謝しているそう。
レオニールは、この件で恨まれ行動を起こされてから消すよりも、先回りして動いたほうが処理が楽だからそうしただけ。リリーナは兄だけは敵に回したくないと改めて思ったらしい。
0
お気に入りに追加
40
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる