【完結】ヤンキー少女、異世界で異世界人の正体隠す

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平和編

手紙

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 三人が四局フロアに戻ると、三局員のルビとカラミンが揉めていた。リョークとアシスはエンジジャケットから着替える。
「こういうプライベートなものを、ここで頼むのはやめてください!」
「そんなに怒んないでよ。今度一緒に散歩してあげるからさ」
 そこは食事だろ、と三人は思いながらそれぞれの席に戻る。ルビは真顔になり明らかに怒っていた。その中に、コーヒーをいれてきたオドーが席に戻ってきた。
「まーた、お前なんかやらかしたのか?」
「なにもしてないよ、オドー。ちょっと最近激務だからさ、倒れないように甘味を」
 カラミンのデスクには小包があった。
「オドーさんからも言ってください! この人職場にお菓子の取り寄せしたんですよ!前は服! その前は漫画全二十巻! 持ってくるこっちの身にもなってくださいよ! 」
 毎朝それぞれの局の郵便物を三局員が届けてくれる。
「前よりマシでしょう? 今回軽いし」
「お前いつか殺されるぞ。殺すなら完全犯罪でよろしく。逮捕したくないから」
「最善を尽くします」
 ルビは真顔でオドーに頷く。
「ちょっとやめてよ! ルビ、君は誤解をしてる。君から見たら俺は憎たらしい男かもしれないが、俺ってとっても優しい男なんだ。ねぇ、カザン」
 カラミンはカザンの方にくるりと椅子ごと回った。
「笑えない冗談はただの悪意ですよ」
「そんな悪意に満ちたこと言わないで、カザン」
 カザンは無視して栄養バーを食べ、野菜ジュースで流し込む。
「お前お菓子って、何を取り寄せたんだよ」
「ほら、前にカンダがお土産でくれたルルのクッキー。全種類食べたくてさ」
「……」
 さすがのオドーも言葉を失った。こんな上司には絶対ならないようにしようとカザン達三人は思った。
「今度、私用の物頼んだら燃やしますから。あと、カザン君にも手紙が」
「え?」
 カラミンが後ろでひどいと喚いてるのを無視して、ルビから手紙を受け取った。表には「アベンチュレ国民局四局 カザン殿」とだけ書いてある。よくこれで届いたなとカザンは感心した。
「差出人がちょっと……。たまに逆恨みとか悪戯で変な手紙送ってくる人いるから」
 カザンは裏を見る。そして少し微笑んだ。
「大丈夫です。知ってる人です」
「なら、よかった」
「ああ! カザンには甘い! 」
 カラミンが喚く。ルビがそれを睨んで黙らせると四局フロアを出て行く。カザンは封筒を開けると、一通り読むと一旦手紙を畳んでしまった。オドーのデスクの電話が鳴る。オドーは短い返事を数回すると、電話を切ってカラミンに伝えた。カラミンは椅子にのったままカザンのところまで滑ってきた。
「八局棟に集合」
 カラミンは立ち上がると、椅子をデスクの方に滑らす。椅子はきちんと元に戻った。その後をオドー、アシスとリョークが続く。カザンは手紙をジャケットのポケットに突っ込むと、残りの栄養バーを一気に食べて、水で流し込んだ。口元を拭いながら、エレベーターを待つカラミン達に追いつく。エレベーターが到着すると、扉が開く。するとそこにカルカが乗っていた。
「お疲れ様です」
 カルカのその言葉に一同は同時に「お疲れ様です」と返した。



 一行が八局棟の一室に着くと、バライトが暴れていた。髪を掻きむしり、壁に飛び蹴りをかましていた。それをアザムは冷たい目で見ていた。
「ああ! くそっ! どうにかあいつらの鼻をあかしてやりたい! 」
 バライトはまたわしゃわしゃと髪を掻きむしる。
「バライト、落ち着け」
 ハクエンが宥めるが、効果はほぼなかった。部屋にはバライト、アザム、ハクエン、セッシサン、それとシプリンがいた。
「おお、お疲れ。お前らも座れ」
 腕を組んで窓側のシプリンの隣に座っていた、セッシサンが促す。部屋は小会議室で、四角にテーブルが囲まれていた。バライト以外は座っていた。カザンはドアの近くに座った。
「それで? シラーの尋問を終えた今の現状は? 」
 カラミンがセッシサンに尋ねる。
「九局長のいうところには、最悪だそうだ」
 セッシサンが、オーピメンもとい、アルガーを機密手配人にできないことをカラミン達に説明した。
「なるほど、戦争の共犯か。まんまと引きずり込まれたってことですね」
 カラミンは笑った。焦りの笑いだった。アシスとリョークは戸惑うしかなかった。戦争が起こるかもしれない。それがすぐそこまで来ている。戦争が起こることはもうないだろうと、育ってきたのだ。突然現れた「戦争」にショックが隠しきれなかった。
「戦争なんて誰もがしたくないでしょう? 少し考えればわかるはずです」
 リョークが思わず言った。信じられないといよりは信じたくなかった。
「人間は理性の想像力より欲が強い。欲の為なら想像力だって鈍くするさ」
 セッシサンの語り口調は、教官の頃を思い出させた。鬼気迫る現状があまりにも酷だった。
「けれどもし、その、神を目覚めさせたら、インデッセの国民が、ヨール王を批判し、戦争を反対するでしょう。そうすればヨール王の立場も悪くなるはずです」
 アシスは冷静に意見を述べる。「どうだろうな」とシプリンは呟いた。
「最初は反対するものもいるだろう。インデッセの潜在意識の中で自分達は十二年戦争では、隠れた被害者であるという意識がある民も多いだろう。自分達が犠牲者だと思えたとき、戦争が『正義』だと思い込むことができる。あっという間に戦争に流されるかもしれない。時代に流される」
「シプリンは今の時代に似合わない意見がよく出せるな。ああ、勘違いするな。嫌味じゃない。素直な感想だ」
 ハクエンはシラーの尋問からシプリンの知識と客観的意見に感心していた。四ヵ国条約のマイナス点を冷静に述べれるものは城人でも数人であろう。
「部人の頃にレポートを書いたことがある。それでだ。書き直しを命じられたけど」
「王はどうであれ、民は純粋に神を敬っていた。四ヵ国条約がそもそも間違っているのかもしれないですね」
 カラミンがシプリンと同じ意見を述べると、シプリンは苛立ち舌打ちをした。カラミンはその冷たい態度にええ、と零した。
「なんでも失くせばいいってもんじゃないってことだな」
 セッシサンが簡単にまとめる。
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