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平和編
憎悪は報われない※残虐描写注意※
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※※流血・残虐描写注意※※
「上へどうぞ。船を準備しております」
海上で別れるらしい。舌打ちをする。
「陸で別れると、シラーから聞いたけど? 」
カーネスが聞く。どうやら予定と違うらしい。
「ええ、その通りです。人目を避けるため、小舟に乗り返るのです。シズ様も上へ」
カーネスはしばし白い仮面の男を見つめた。その眼差しは少し疑っているようだった。
「わかった」
カーネスはベッドからおりると足早に、部屋の外へ出た。
「シズ様も」
「へいへい。シズ様も降りますよ」
こんなところで反発するつもりはない。城まで行くと決めたのだから。
「申し訳ありませんが、両腕を出して頂けませんか」
「え、ああ、はい」
シズはいちいち聞くのも癪だと素直に出すと、手かせを付けられてぎょっとした。その先には鎖もついて仮面の男が握っている。
「は? 」
「海に飛び込まれても困りますので」
男は優しく言った。これが「様」を付けて呼ぶ人間の扱いかよ、とシズは顔を引き攣らせる。
デッキに出ると、久々に直に太陽を浴びたせいか、シズは顔を背けてしまった。
「眩しいですか?」
鎖を持った音が気遣ってくるが、無視をした。海の上にはロープで繋がれた小舟が浮いていた。五人乗れればやっとだ。まず神の団の人間がひとり乗り込む。そして次にカーネス。次は自分だと思い歩けば、鎖を持った男が動かない。なんだと思えば人が倒れた音がした。小舟を見れば、カーネスが左手で仮面の男の顔を掴んでいた。
「ごめんね。仮面をつけてても無駄なんだ。この能力は恐ろしいよ」
カーネスは「うらがえし」の拒否反応で死んだ男を海に捨てた。
「お前、なんで!! 」
シズが叫ぶ。
「お前を助ける為なんて勘違いしないでね。僕はスイド家の人間がいない世界がむちゃくちゃになろうがもう構わない。勝手に戦争やって、勝手に死にな。けど、どう考えても僕を素直に返すつもりないよね? 普通に考えて、僕をここで始末するためでしょう? 」
カーネスは笑みを浮かべ、目を光らせる。そうか。はじめから小舟に移る予定なんかなかったのか。これはカーネスを殺すため。カーネスの右手にナイフが握られていた。さっき殺した男から奪ったのだろう。カーネスは刃を、船同士をつなぐロープにかける。
「ここは穏便に行きましょう。あなた達は城に帰って僕を始末したと主に報告すればいい。僕は二度とインデッセの土地は踏まないと約束しよう」
神の団の男達か顔を見合わす。仮面をつけた顔でお互いの心中なんて読めるものなのだろうか。
「……よろしいでしょう」
この船のリーダーらしき人物があっさりと許した。
「ありがたき幸せ。それでは、さようなら」
カーネスはロープを切る。小舟は離れて行く。鎖を握る男の横顔を見る。口元は緩んでいた。「おい、カーネス! 罠だ! 」
シズは思わず叫んだ。なんでだ。あんな奴助ける義理はないのに。カーネスが顔を歪めると同時に、海面から出て来た、小舟に仮面の男が乗り込んだ。さっきカーネスを殺した奴とは違う奴だった。最初から海中に潜ませていた。男はカーネスの右手を捻り、ナイフを落とした。カーネスはつかさず、左手を出す。しかしその手も掴まれる。同時に骨が折れる音が、シズの耳まで届いた。一度ではない。何度もだ。カーネスが悲鳴を上げる。それを気に掛けることなく、カーネスを掴んだ男は腰から何かを出した。最初それが何かわからなかった。目を凝らす。そして息を飲んだ。それは普通の奴よりは小さい。小さいけれど、それは立派な斧だった。
「これ以上はご覧になられない方が……」
鎖を持った男が、シズの目を隠そうとしたが、振り払った。
「カーネス!! 」
シズの声がまるで合図かのように、斧は振り降ろされた。斧を持った男はすぐに左手を海に捨てた。次にカーネスの髪をつかむと顔を海上に押し付けた。カーネスは暴れたが、じきに動かなくなった。そしてカーネスを、海に捨てた。カーネスが落ちていったあとの水面に血が滲み動く。斧を持った男も血しぶきを浴びていた。喉が震える。
「ご気分が悪くなられましたね。ベッドでおやすみを……」
残虐な殺人をした後に、優しく自分に声をかける。なんだこいつら。
「殺すにしてもあそこまでする必要あんのかよ!! 」
カーネスは殺されても仕方ない男だろう。シズもあいつを悪だとして憎んだ。だけど、これはえぐすぎる。
「あの左手であの男は多くの人間を殺し、運命を翻弄しました。これは報いなのです」
リーダーの男が淡々と語る。
「これもまた正義です」
「なにが正義だ! てめぇらの都合だろうが! 都合を正義にすり替えるなよ! 」
「興奮しないでください。不安にならずともあなたの命は守ります」
「不安で死ねるなら死にてぇよ、頭がおかしくならないうちにな! 」
シズが喚いても通じない。これが狂気か。
「上へどうぞ。船を準備しております」
海上で別れるらしい。舌打ちをする。
「陸で別れると、シラーから聞いたけど? 」
カーネスが聞く。どうやら予定と違うらしい。
「ええ、その通りです。人目を避けるため、小舟に乗り返るのです。シズ様も上へ」
カーネスはしばし白い仮面の男を見つめた。その眼差しは少し疑っているようだった。
「わかった」
カーネスはベッドからおりると足早に、部屋の外へ出た。
「シズ様も」
「へいへい。シズ様も降りますよ」
こんなところで反発するつもりはない。城まで行くと決めたのだから。
「申し訳ありませんが、両腕を出して頂けませんか」
「え、ああ、はい」
シズはいちいち聞くのも癪だと素直に出すと、手かせを付けられてぎょっとした。その先には鎖もついて仮面の男が握っている。
「は? 」
「海に飛び込まれても困りますので」
男は優しく言った。これが「様」を付けて呼ぶ人間の扱いかよ、とシズは顔を引き攣らせる。
デッキに出ると、久々に直に太陽を浴びたせいか、シズは顔を背けてしまった。
「眩しいですか?」
鎖を持った音が気遣ってくるが、無視をした。海の上にはロープで繋がれた小舟が浮いていた。五人乗れればやっとだ。まず神の団の人間がひとり乗り込む。そして次にカーネス。次は自分だと思い歩けば、鎖を持った男が動かない。なんだと思えば人が倒れた音がした。小舟を見れば、カーネスが左手で仮面の男の顔を掴んでいた。
「ごめんね。仮面をつけてても無駄なんだ。この能力は恐ろしいよ」
カーネスは「うらがえし」の拒否反応で死んだ男を海に捨てた。
「お前、なんで!! 」
シズが叫ぶ。
「お前を助ける為なんて勘違いしないでね。僕はスイド家の人間がいない世界がむちゃくちゃになろうがもう構わない。勝手に戦争やって、勝手に死にな。けど、どう考えても僕を素直に返すつもりないよね? 普通に考えて、僕をここで始末するためでしょう? 」
カーネスは笑みを浮かべ、目を光らせる。そうか。はじめから小舟に移る予定なんかなかったのか。これはカーネスを殺すため。カーネスの右手にナイフが握られていた。さっき殺した男から奪ったのだろう。カーネスは刃を、船同士をつなぐロープにかける。
「ここは穏便に行きましょう。あなた達は城に帰って僕を始末したと主に報告すればいい。僕は二度とインデッセの土地は踏まないと約束しよう」
神の団の男達か顔を見合わす。仮面をつけた顔でお互いの心中なんて読めるものなのだろうか。
「……よろしいでしょう」
この船のリーダーらしき人物があっさりと許した。
「ありがたき幸せ。それでは、さようなら」
カーネスはロープを切る。小舟は離れて行く。鎖を握る男の横顔を見る。口元は緩んでいた。「おい、カーネス! 罠だ! 」
シズは思わず叫んだ。なんでだ。あんな奴助ける義理はないのに。カーネスが顔を歪めると同時に、海面から出て来た、小舟に仮面の男が乗り込んだ。さっきカーネスを殺した奴とは違う奴だった。最初から海中に潜ませていた。男はカーネスの右手を捻り、ナイフを落とした。カーネスはつかさず、左手を出す。しかしその手も掴まれる。同時に骨が折れる音が、シズの耳まで届いた。一度ではない。何度もだ。カーネスが悲鳴を上げる。それを気に掛けることなく、カーネスを掴んだ男は腰から何かを出した。最初それが何かわからなかった。目を凝らす。そして息を飲んだ。それは普通の奴よりは小さい。小さいけれど、それは立派な斧だった。
「これ以上はご覧になられない方が……」
鎖を持った男が、シズの目を隠そうとしたが、振り払った。
「カーネス!! 」
シズの声がまるで合図かのように、斧は振り降ろされた。斧を持った男はすぐに左手を海に捨てた。次にカーネスの髪をつかむと顔を海上に押し付けた。カーネスは暴れたが、じきに動かなくなった。そしてカーネスを、海に捨てた。カーネスが落ちていったあとの水面に血が滲み動く。斧を持った男も血しぶきを浴びていた。喉が震える。
「ご気分が悪くなられましたね。ベッドでおやすみを……」
残虐な殺人をした後に、優しく自分に声をかける。なんだこいつら。
「殺すにしてもあそこまでする必要あんのかよ!! 」
カーネスは殺されても仕方ない男だろう。シズもあいつを悪だとして憎んだ。だけど、これはえぐすぎる。
「あの左手であの男は多くの人間を殺し、運命を翻弄しました。これは報いなのです」
リーダーの男が淡々と語る。
「これもまた正義です」
「なにが正義だ! てめぇらの都合だろうが! 都合を正義にすり替えるなよ! 」
「興奮しないでください。不安にならずともあなたの命は守ります」
「不安で死ねるなら死にてぇよ、頭がおかしくならないうちにな! 」
シズが喚いても通じない。これが狂気か。
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