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過去編
城の人々と、ミトスの運命
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「我々が見守っていた家族だ。けれど、全員死んでしまってね。君の片割れはあの有名な九十七期生で死んだんだよ。君と顔がまったく同じだ。異性でそれだけ顔が似ているなんて、まるでコインだ」
コイン。ミトスの頭にコーネスが蘇る。
「やはり、世界の運命には抗えない! 君は生まれ変わりだ。神に愛されたあの方と瓜二つ。そしてその可憐さ。それがインデッセに現れるなんて。我々はやっとたどり着いた。最高だ! 」
カバンサは狂ったように興奮した。ミトスはそれを隙とみて、メモにまた鉛筆を走らせた。
【さきほどからおっしゃられている我々とは? 】
カバンサは喉を鳴らしながらにたにたとした。ミトスは不快感がふつふつと出てきていたのを抑え込んだ。カバンサはミトスに近づいた。そして耳に唇を寄せて、ミトスが求めていた正解を囁いた。
「神の団だよ」
近いうちに迎えにきます。カバンサは別れ際に、そう言った。口調は丁寧に戻っていた。ミトスは店から少し離れた所で降ろされ、車を見送った。城に潜りこんだスパイはインデッセだった。そしてそれにはスイド家が関わっている。そして、神も。ミトスはルバを思い出す。青少年学校の寮でミトスがルバにアルガー塾出身者がなぜルバに風当たりがきついか尋ねたときのことだ。アルガーという男が戦争をやりたがっていたと話していた。
(「インデッセにいる神を奪いたいようだ。まあ、まだいるっていうのはアルガーが勝手に言っているだけで、スフェン達を焚き付けるための虚言だと思うが」)
アルガーも「神の団の」一員とミトスは仮定した。そうすれば、「神の団」の目的は戦争をすることだ。この世にはいないはずの「神」を使って。けれど、なぜそれにスイド家が関わる。片田舎の家族がだ。けれどその答えを慌てて探す必要はなかった。ミトスにはあてがあった。スパイもインデッセの人間であることが分かった。けれど誰かさんまではまだ分からない。それでもミトスはもうインデッセを旅立つ決意をしていた。王の夜の相手をするならば、男であることは隠せない。ベグテクタへ行こう。そう決めた。
店の寮に戻ると、ミトス宛てに手紙が来ていた。差出人に見覚えはなかった。プライトからだろうか、と思ったがそれにしては不用心過ぎた。ベッドに座るとミトスは手紙を開いた。
【パイラさん。突然のお手紙申し訳ございません。私、ジェーダでございます】
ミトスは息を飲み、続きを読んだ。
【私を信じて、私のお願いを聞いて欲しいのです。秘密を漏らす危険を冒してあなたに手紙を書きました。突然こんなことを申しても、あなたが困るのは分かっています。それでも私を信じて欲しいのです。単刀直入に言います。インデッセを出て行って欲しいんです。そして、カバンサという男に何を言われても言う通りにしないでください。
あの男は恐ろしい男です。詳しいことを省きますが、あの男はヨールを自分に心酔させて操っています。ヨールは未熟なまま王になり、少し心が弱い所があります。そこを付け入れられたのです。こんなことを言ってもあなたは信じてくれないでしょう。とにかく、リッド・カバンサだけには気を付けて、逃げて欲しいのです。あの男はインデッセに神がいると信じているような愚か者です。そしてオードの大火でなくなった、ルリに心酔しているのです。ルリの肖像画は戦後ほとんどが焼却されてしまいましたが、実はインデッセに数点ひっそりと残されています。私も何度か見たことがあります。その、ルリの肖像画の顔と、あなたは瓜二つなのです。きっと、カバンサはあなたに近づくでしょう。どうか逃げてください。年寄りの戯言だと思わずに信じて欲しいのです。この手紙は私の付き人が回収しにきます。読んだら外へ出てください。あなたに声をかけるでしょう。どうか、お願いします。】
ミトスは素早く手紙を畳むと封筒に戻す。そしてメモを書いて外へ出た。裏道へ回ると、肩を叩かれた。振り向くと女がいた。女は黙って、手を出した。ミトスはその上に手紙を置く。そしてメモを開き、女に見せた。
【信じます、とお伝えください】
女は頷くと背を向けた。ミトスはその後すぐに、インデッセを出た。
コイン。ミトスの頭にコーネスが蘇る。
「やはり、世界の運命には抗えない! 君は生まれ変わりだ。神に愛されたあの方と瓜二つ。そしてその可憐さ。それがインデッセに現れるなんて。我々はやっとたどり着いた。最高だ! 」
カバンサは狂ったように興奮した。ミトスはそれを隙とみて、メモにまた鉛筆を走らせた。
【さきほどからおっしゃられている我々とは? 】
カバンサは喉を鳴らしながらにたにたとした。ミトスは不快感がふつふつと出てきていたのを抑え込んだ。カバンサはミトスに近づいた。そして耳に唇を寄せて、ミトスが求めていた正解を囁いた。
「神の団だよ」
近いうちに迎えにきます。カバンサは別れ際に、そう言った。口調は丁寧に戻っていた。ミトスは店から少し離れた所で降ろされ、車を見送った。城に潜りこんだスパイはインデッセだった。そしてそれにはスイド家が関わっている。そして、神も。ミトスはルバを思い出す。青少年学校の寮でミトスがルバにアルガー塾出身者がなぜルバに風当たりがきついか尋ねたときのことだ。アルガーという男が戦争をやりたがっていたと話していた。
(「インデッセにいる神を奪いたいようだ。まあ、まだいるっていうのはアルガーが勝手に言っているだけで、スフェン達を焚き付けるための虚言だと思うが」)
アルガーも「神の団の」一員とミトスは仮定した。そうすれば、「神の団」の目的は戦争をすることだ。この世にはいないはずの「神」を使って。けれど、なぜそれにスイド家が関わる。片田舎の家族がだ。けれどその答えを慌てて探す必要はなかった。ミトスにはあてがあった。スパイもインデッセの人間であることが分かった。けれど誰かさんまではまだ分からない。それでもミトスはもうインデッセを旅立つ決意をしていた。王の夜の相手をするならば、男であることは隠せない。ベグテクタへ行こう。そう決めた。
店の寮に戻ると、ミトス宛てに手紙が来ていた。差出人に見覚えはなかった。プライトからだろうか、と思ったがそれにしては不用心過ぎた。ベッドに座るとミトスは手紙を開いた。
【パイラさん。突然のお手紙申し訳ございません。私、ジェーダでございます】
ミトスは息を飲み、続きを読んだ。
【私を信じて、私のお願いを聞いて欲しいのです。秘密を漏らす危険を冒してあなたに手紙を書きました。突然こんなことを申しても、あなたが困るのは分かっています。それでも私を信じて欲しいのです。単刀直入に言います。インデッセを出て行って欲しいんです。そして、カバンサという男に何を言われても言う通りにしないでください。
あの男は恐ろしい男です。詳しいことを省きますが、あの男はヨールを自分に心酔させて操っています。ヨールは未熟なまま王になり、少し心が弱い所があります。そこを付け入れられたのです。こんなことを言ってもあなたは信じてくれないでしょう。とにかく、リッド・カバンサだけには気を付けて、逃げて欲しいのです。あの男はインデッセに神がいると信じているような愚か者です。そしてオードの大火でなくなった、ルリに心酔しているのです。ルリの肖像画は戦後ほとんどが焼却されてしまいましたが、実はインデッセに数点ひっそりと残されています。私も何度か見たことがあります。その、ルリの肖像画の顔と、あなたは瓜二つなのです。きっと、カバンサはあなたに近づくでしょう。どうか逃げてください。年寄りの戯言だと思わずに信じて欲しいのです。この手紙は私の付き人が回収しにきます。読んだら外へ出てください。あなたに声をかけるでしょう。どうか、お願いします。】
ミトスは素早く手紙を畳むと封筒に戻す。そしてメモを書いて外へ出た。裏道へ回ると、肩を叩かれた。振り向くと女がいた。女は黙って、手を出した。ミトスはその上に手紙を置く。そしてメモを開き、女に見せた。
【信じます、とお伝えください】
女は頷くと背を向けた。ミトスはその後すぐに、インデッセを出た。
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