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過去編
百年の恋、もしくは隠された希望
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「街が燃えている!! 」
「大火事だ! 」
ルリ達は近くのバルコニーに出た。そして息を飲んだ。水平線から炎で埋め尽くされていた。そしてその炎は城の庭も埋め尽くされていた。火は猛スピードで空から来ていた。嫌な予感にルリは汗が噴き出した。そんなはずはない。だが、それしかない。その姿はダイアスだった。
「お姉さま! 」
騒動で心配したのか、ラズがルリを探しにきていた。
「ラズ! 」
「お姉さま、あれは」
ルリはラズの背後で震えているレイナに気が付いた。
「レイナ? 」
レイナは震え泣き始めた。そしてしゃがみ込んだ。
「申し訳ありません。私のせいです。私の、まさかこんなことを……」
レイナはしゃくりあげた。半分パニックなっている。
「どうしたのレイナ ?落ち着いて、どうしたの? 」
ラズがレイナを問い詰める。レイナはルリを見上げた。それでルリはすべてを察した。
「まさか、スピネ様が」
「申し訳ありません。ルリ様達がダイアスが火を噴くことを話していたのをスピネ様に伝えてしまいました。まさかこんなことになるなんて!! 」
レイナは声を上げて泣き始めた。レイナがルリの部屋に来た時に話を聞かれていたのだ。
「神の名はダイアスというのか。それよりも見捨てられたな、インデッセの王妃よ」
ネプチュナは憐れむわけでもなく淡々とルリに言った。炎はもう城の外まできていた。スピネはここで自分を殺すつもりだった。きっとオードを攻撃するために自分を餌にしてダイアスを使った。妹までも見捨てた。ルリは現実を理解し虫唾が走っレイナによりダイアスの純粋な心を利用した。
「地下道から避難する。安心しろ、見捨てはしない。ただ覚悟はしておけ」
ルリはネプチュナを振り返る。
「屋上への道は? 」
「屋上? 」
「ダイアスをとめます。私の声なら届くかもしれない。火を止めなければ」
「お姉さま、無理です! 死んでしまいます! 」
「それでも止めなければ。ジルあなたも地下へ」
「そんな、ついていきます! 」
「駄目よ。ベグテクタの名誉のために、この事実を覚えておくベグテクタの人間が必要なの」
「ランショうことですか? 」
「今は分からなくても時期にわかるわ。オード王、屋上への道を」
ネプチュナは指をさした。
「そこの扉を開ければ階段がある。塔の上に出られる。上るのに時間がかかる。炎が回ればもう降りてはこれんぞ」
「分かりました。ラズ達をお願いします」
ルリは頭を下げた。ネプチュナは返事をしなかったがしっかりと聞いた。
「待ってください、ルリ様を死なせるわけには! 」
ジルはルリにしがみ付いてとめる。
「ごめんなさい、ジル。もう時間がない。インデッセは取り返しのつかないことをしてしまった。今さらでも止めなければ。私が止めない限り、ダイアスは止まらない。けど、ジル」
ルリはジルの頬を両手で包んだ。
「ありがとう。我儘な主でごめんね。あとはたくします」
頬から手を離すとルリは走り出す。
「ルリ様!! 」
ジルは手を伸ばし追いかけようとするが、ネプチュナが腰に手を入れ止めた。
「彼女はインデッセの王妃だ。彼女に止められるなら止めてもらわないといけない。それが勤めだ。全員連れていけ」
部下たちがジル達を連れて行く。ジルは何度も振り返る。もう主の名を呼べない。唇を噛み締めるしかなかった。
炎は城に辿りつき、あっという間に煙に包まれた。ルリは咳き込みながら階段を上る。ドレスが重たく、スカートをさいた。余分な布は破り捨てた。ヒールはとっくに脱ぎ捨てた。熱さと体力の消失で何度も汗を拭う。視界が歪む。壁をつたいながら上がると外への扉が見えた。力を振り絞り駆け上がるとドアを開け放った。ルリは絶句した。まさに火の海だった。ルリのいる塔の上はまるで海を漂う木の板のようだった。ルリは塀まで走る。そしてダイアスを捜すが煙が邪魔をして見つけられない。
「ダイアス! 」
ルリは絶叫した。
「ダイアス! もうやめて! 私はここよ! ダイアス! 」
ルリは何度もダイアスを呼ぶ。声が枯れる。咳き込む。煙も吸って苦しい。お願い。ルリは祈った。神に祈ったのかもしれない。
「ダイアス!! 」
ダイアスは城を見下ろす。愛しき者の声が聞こえた気がした。
「ダイアス! リチよ! お願いだからもうやめて! ここへ来て!! 」
ダイアスの赤く染まった瞳の色が冷静さに落ち着く。そして、ルリの姿を煙のすき間から見つけると矢のごとく飛んでいった。ルリもダイアスの姿を捕えた。
「ダイアス! 」
「リチ! 」
ルリは塀の上に飛び乗って、ダイアスの鼻を抱いて頬を付けた。
「お前なんて馬鹿なことを……! 」
「スピネが、リチがオードに殺されたって」
やはりルリが予想した通りだった。
「馬鹿ね。私は生きてるわよ」
「そうか。良かった」
炎が燃える中、ダイアスは無邪気に喜んだ。ルリは涙を流した。
「リチなんで泣くんだ」
「ダイアス、お前は悪くない。けどとんでもないことをしたの。もう、あなたは地上では暮らせない」
「え」
「空へゆきなさい。もう地上に戻ってきては駄目。もう、二度と」
ルリは涙をとめることはできなかった。
「ごめんね」
そう言って、ルリはダイアスから離れる。
「さよならよ。人間の残酷さにもうあなたを巻き込むわけにはいかない。空高く飛んでいきなさい」
ルリは塀の内側へ下りる。そして咳き込む。めまいがしてき、息も苦しくなってきた。煙を吸い過ぎたのだ。立っていることが限界に近づいていた。
「嫌だ! リチと一緒がいい! 」
「駄目よ。私は空では生きられない。あなたはもう地上では生きられない。可哀想だけど、あなたはそれだけのことをしたの。私の為だとしても」
ルリはもう自分の命を諦めていた。階段を下りる力はもうない。ラズ達のこの先だけが心配だった。自分だけ逃げてしまう罪悪感があった。最後の力を振り絞り、言った。
「もう火を噴いたらだめ、約束して」
「約束するから、一緒にいて! 」
ダイアスは喚く。ルリはそっと笑った。
「そうね、あとから私も空に行くから。気が向いたら見つけてね」
残酷なことを言った気がした。ルリはその場に倒れた。ダイアスは倒れたルリを咥えると、空高く飛んで行った。
「大火事だ! 」
ルリ達は近くのバルコニーに出た。そして息を飲んだ。水平線から炎で埋め尽くされていた。そしてその炎は城の庭も埋め尽くされていた。火は猛スピードで空から来ていた。嫌な予感にルリは汗が噴き出した。そんなはずはない。だが、それしかない。その姿はダイアスだった。
「お姉さま! 」
騒動で心配したのか、ラズがルリを探しにきていた。
「ラズ! 」
「お姉さま、あれは」
ルリはラズの背後で震えているレイナに気が付いた。
「レイナ? 」
レイナは震え泣き始めた。そしてしゃがみ込んだ。
「申し訳ありません。私のせいです。私の、まさかこんなことを……」
レイナはしゃくりあげた。半分パニックなっている。
「どうしたのレイナ ?落ち着いて、どうしたの? 」
ラズがレイナを問い詰める。レイナはルリを見上げた。それでルリはすべてを察した。
「まさか、スピネ様が」
「申し訳ありません。ルリ様達がダイアスが火を噴くことを話していたのをスピネ様に伝えてしまいました。まさかこんなことになるなんて!! 」
レイナは声を上げて泣き始めた。レイナがルリの部屋に来た時に話を聞かれていたのだ。
「神の名はダイアスというのか。それよりも見捨てられたな、インデッセの王妃よ」
ネプチュナは憐れむわけでもなく淡々とルリに言った。炎はもう城の外まできていた。スピネはここで自分を殺すつもりだった。きっとオードを攻撃するために自分を餌にしてダイアスを使った。妹までも見捨てた。ルリは現実を理解し虫唾が走っレイナによりダイアスの純粋な心を利用した。
「地下道から避難する。安心しろ、見捨てはしない。ただ覚悟はしておけ」
ルリはネプチュナを振り返る。
「屋上への道は? 」
「屋上? 」
「ダイアスをとめます。私の声なら届くかもしれない。火を止めなければ」
「お姉さま、無理です! 死んでしまいます! 」
「それでも止めなければ。ジルあなたも地下へ」
「そんな、ついていきます! 」
「駄目よ。ベグテクタの名誉のために、この事実を覚えておくベグテクタの人間が必要なの」
「ランショうことですか? 」
「今は分からなくても時期にわかるわ。オード王、屋上への道を」
ネプチュナは指をさした。
「そこの扉を開ければ階段がある。塔の上に出られる。上るのに時間がかかる。炎が回ればもう降りてはこれんぞ」
「分かりました。ラズ達をお願いします」
ルリは頭を下げた。ネプチュナは返事をしなかったがしっかりと聞いた。
「待ってください、ルリ様を死なせるわけには! 」
ジルはルリにしがみ付いてとめる。
「ごめんなさい、ジル。もう時間がない。インデッセは取り返しのつかないことをしてしまった。今さらでも止めなければ。私が止めない限り、ダイアスは止まらない。けど、ジル」
ルリはジルの頬を両手で包んだ。
「ありがとう。我儘な主でごめんね。あとはたくします」
頬から手を離すとルリは走り出す。
「ルリ様!! 」
ジルは手を伸ばし追いかけようとするが、ネプチュナが腰に手を入れ止めた。
「彼女はインデッセの王妃だ。彼女に止められるなら止めてもらわないといけない。それが勤めだ。全員連れていけ」
部下たちがジル達を連れて行く。ジルは何度も振り返る。もう主の名を呼べない。唇を噛み締めるしかなかった。
炎は城に辿りつき、あっという間に煙に包まれた。ルリは咳き込みながら階段を上る。ドレスが重たく、スカートをさいた。余分な布は破り捨てた。ヒールはとっくに脱ぎ捨てた。熱さと体力の消失で何度も汗を拭う。視界が歪む。壁をつたいながら上がると外への扉が見えた。力を振り絞り駆け上がるとドアを開け放った。ルリは絶句した。まさに火の海だった。ルリのいる塔の上はまるで海を漂う木の板のようだった。ルリは塀まで走る。そしてダイアスを捜すが煙が邪魔をして見つけられない。
「ダイアス! 」
ルリは絶叫した。
「ダイアス! もうやめて! 私はここよ! ダイアス! 」
ルリは何度もダイアスを呼ぶ。声が枯れる。咳き込む。煙も吸って苦しい。お願い。ルリは祈った。神に祈ったのかもしれない。
「ダイアス!! 」
ダイアスは城を見下ろす。愛しき者の声が聞こえた気がした。
「ダイアス! リチよ! お願いだからもうやめて! ここへ来て!! 」
ダイアスの赤く染まった瞳の色が冷静さに落ち着く。そして、ルリの姿を煙のすき間から見つけると矢のごとく飛んでいった。ルリもダイアスの姿を捕えた。
「ダイアス! 」
「リチ! 」
ルリは塀の上に飛び乗って、ダイアスの鼻を抱いて頬を付けた。
「お前なんて馬鹿なことを……! 」
「スピネが、リチがオードに殺されたって」
やはりルリが予想した通りだった。
「馬鹿ね。私は生きてるわよ」
「そうか。良かった」
炎が燃える中、ダイアスは無邪気に喜んだ。ルリは涙を流した。
「リチなんで泣くんだ」
「ダイアス、お前は悪くない。けどとんでもないことをしたの。もう、あなたは地上では暮らせない」
「え」
「空へゆきなさい。もう地上に戻ってきては駄目。もう、二度と」
ルリは涙をとめることはできなかった。
「ごめんね」
そう言って、ルリはダイアスから離れる。
「さよならよ。人間の残酷さにもうあなたを巻き込むわけにはいかない。空高く飛んでいきなさい」
ルリは塀の内側へ下りる。そして咳き込む。めまいがしてき、息も苦しくなってきた。煙を吸い過ぎたのだ。立っていることが限界に近づいていた。
「嫌だ! リチと一緒がいい! 」
「駄目よ。私は空では生きられない。あなたはもう地上では生きられない。可哀想だけど、あなたはそれだけのことをしたの。私の為だとしても」
ルリはもう自分の命を諦めていた。階段を下りる力はもうない。ラズ達のこの先だけが心配だった。自分だけ逃げてしまう罪悪感があった。最後の力を振り絞り、言った。
「もう火を噴いたらだめ、約束して」
「約束するから、一緒にいて! 」
ダイアスは喚く。ルリはそっと笑った。
「そうね、あとから私も空に行くから。気が向いたら見つけてね」
残酷なことを言った気がした。ルリはその場に倒れた。ダイアスは倒れたルリを咥えると、空高く飛んで行った。
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