158 / 241
過去編
百年の恋、もしくは隠された希望
しおりを挟む
「前のような掌サイズならまだ目を瞑りましょう。しかしそこまで大きくなった生物を城に持ち帰ってメイド長や他の人たちに見つかったでもしたら」
ジルは想像しただけでも恐ろしいと身震いした。ルリが不貞腐れる。
「ダイアス、あんた小さくなることはもうできないの? 」
「もう小さくなることはできない。けどもう少し大きくなったら姿を変えることができるようになるかもしれない」
ルリは目を輝かせた。
「本当? それって人間の姿にもなれるってこと?」
「たぶん。けどまだ今は力が足りない。まだもう少し大きくならないと……」
ジルはショックで倒れ掛かった。そしてぶつぶつと呟く。
「まだ大きくなるんですか……。いつか見つかってしまう前に追い出してしまおうかしら」
「何を追い出すんだい? 」
ジルは後ろを振り返る。そこにはにこやかに立っているスピネ王子と、秘書のペンタゴンがいた。ジルは言葉を一瞬失い、ダイアスが王子から見えないように立ち位置を変えた。
「ルリ。君はなにを見ているんだい? 」
ジルの抵抗も虚しくスピネは、ジルを追い越しルリの元へ歩いていく。ジルはあわあわする。ルリもさすがにやばいとダイアスを隠すように立ち上がった。
「あ、スピネ様。すいません、もうすぐ部屋に戻ろうとしていたところです」
「そうかい。それで、何を背中に隠したんだい? 」
「えっ、あの、その」
ルリがしどろもどろしているうちに、スピネはルリの肩にてをやると横へ避けさせた。そしてスピネの前にダイアスの姿が露わになってしまった。スピネは思わずぎょっとした。見たこともない形の生き物でトカゲにしては大分大きすぎたし、顔も違った。スピネの元にジルが駆け寄る。
「あの、スピネ王子、ルリ様はベグテクタにおりますときから、生き物が大好きでございまして、もうアリから熊までもうそれはそれは愛していまして。だからこのような生き物にも興味を持ってしまいまして、あの、そのう」
ジルは焦り過ぎて擁護のつもりが現状をなにひとつごまかすことができていなかった。
「リチ、こいつは誰だ? 」
空気が読めないダイアスは喋ってしまった。ルリは苦笑いをするしかない。
「この黄色い生物、人の言葉を話すのか? 」
スピネは驚きを隠せない。ペンタゴンが王子に並ぶとペンタゴンは目を見開き王子の肩を抱いてダイアスと距離をとらせた。
「なんなんです! この赤いおどろおどろしい生きものは! 」
「赤? ペンタゴン、こいつは黄色いぞ」
「黄色い? 王子目に異常があるのでは? 」
「私には銀色に見えています」
ルリが説明をした。
「ジルには桃色に見えるそうです」
スピネ達がジルを見ると、ジルは頷いた。ルリはスピネに駆け寄ってすがった。
「王子、お願いです。この子を殺さないで。悪さをするような子ではありません。こんな見た目で人の言葉を話しますし驚かせてしまって申し訳ありません。秘密にして申し訳ありません。でも見つかったら殺されてしまうと思って」
語尾が弱々しくなり泣きそうになっているルリを見上げたダイアスは悲しくなった。悲しみに耐えられずスピネにいった。
「この泉があまりに綺麗で棲みついたんだ。俺は綺麗な水が好きだ。でも別に空でも生きていける。お前が俺を殺すというなら、俺はここから出ていくよ。出ていくからリチを叱らないでくれ。俺のことを殺さないでくれ」
ダイアスは大きな瞳を隠す大きな瞼を悲しげに半分隠した。その姿に王子は愛らしさを感じた。そしてダイアスが神秘的にも見えた。この生きもの使えるかもしれない。スピネはそう考え、ダイアスに微笑んだ。
「殺しはしないさ。だが見つけてしまったら私も無視はできない。まだここに居ていいから少しの間待ってくれないか? 」
ルリは喜び、ダイアスを見るともっと喜んだ。それにダイアスはなぜか照れた。
「さあ、今日はもう部屋に戻っておくれ、ルリ」
スピネは外套を翻す。
「はい! ありがとうございます、王子」
ルリの礼にジルも深々と頭を下げた。
「ダイアス、また来るからどこにも行っちゃだめよ」
「……ああ」
「じゃあ、またね」
ルリはスピネの後を追いかけていく。ダイアスだけが地下の泉に残る。ダイアスは自分と違う名前でルリを呼ぶスピネといなくなる事に、何かモヤモヤとした気持ちを感じていた。そのモヤモヤの名前が嫉妬だということには、ダイアスはまだ分からなかった。
その日の夜、スピネはダイアスのことを考えていた。愛らしさを持つ人の言葉を喋る人ではない生きもの。見る人によって色が違うという神秘的な生きもの。
「スピネ様。あのダイアスとかいう生きもの、どうなさるつもりですか? 」
ペンタゴンが心配する。
「さて、どうしようか? 」
スピネはダイアスを追い出そうという考えはなかった。何か考えの底を刺激するのだ。ペンタゴンは暖炉に薪をくべる。炎を見ながらペンタゴンはあることを思い出した。
「そういえば今民の中で祈願祭が流行っているそうです」
「祈願祭? 」
「はい。来年以降も豊作を願って。火を囲い踊るのです貧しさの心を癒すためでしょう。つらい毎日だと天を味方につけたいのは当たり前のことでしょう」
その言葉を聞いてスピネは閃いた。
「分かったぞ、ペンタゴン」
スピネの目には今までにない熱が宿った。
「何がです? 」
「ダイアスを世界の唯一にする」
「……はい? 」
ペンタゴンは理解できなかった。
「ダイアスを神にする。世界で初めての生きた、神だ」
ジルは想像しただけでも恐ろしいと身震いした。ルリが不貞腐れる。
「ダイアス、あんた小さくなることはもうできないの? 」
「もう小さくなることはできない。けどもう少し大きくなったら姿を変えることができるようになるかもしれない」
ルリは目を輝かせた。
「本当? それって人間の姿にもなれるってこと?」
「たぶん。けどまだ今は力が足りない。まだもう少し大きくならないと……」
ジルはショックで倒れ掛かった。そしてぶつぶつと呟く。
「まだ大きくなるんですか……。いつか見つかってしまう前に追い出してしまおうかしら」
「何を追い出すんだい? 」
ジルは後ろを振り返る。そこにはにこやかに立っているスピネ王子と、秘書のペンタゴンがいた。ジルは言葉を一瞬失い、ダイアスが王子から見えないように立ち位置を変えた。
「ルリ。君はなにを見ているんだい? 」
ジルの抵抗も虚しくスピネは、ジルを追い越しルリの元へ歩いていく。ジルはあわあわする。ルリもさすがにやばいとダイアスを隠すように立ち上がった。
「あ、スピネ様。すいません、もうすぐ部屋に戻ろうとしていたところです」
「そうかい。それで、何を背中に隠したんだい? 」
「えっ、あの、その」
ルリがしどろもどろしているうちに、スピネはルリの肩にてをやると横へ避けさせた。そしてスピネの前にダイアスの姿が露わになってしまった。スピネは思わずぎょっとした。見たこともない形の生き物でトカゲにしては大分大きすぎたし、顔も違った。スピネの元にジルが駆け寄る。
「あの、スピネ王子、ルリ様はベグテクタにおりますときから、生き物が大好きでございまして、もうアリから熊までもうそれはそれは愛していまして。だからこのような生き物にも興味を持ってしまいまして、あの、そのう」
ジルは焦り過ぎて擁護のつもりが現状をなにひとつごまかすことができていなかった。
「リチ、こいつは誰だ? 」
空気が読めないダイアスは喋ってしまった。ルリは苦笑いをするしかない。
「この黄色い生物、人の言葉を話すのか? 」
スピネは驚きを隠せない。ペンタゴンが王子に並ぶとペンタゴンは目を見開き王子の肩を抱いてダイアスと距離をとらせた。
「なんなんです! この赤いおどろおどろしい生きものは! 」
「赤? ペンタゴン、こいつは黄色いぞ」
「黄色い? 王子目に異常があるのでは? 」
「私には銀色に見えています」
ルリが説明をした。
「ジルには桃色に見えるそうです」
スピネ達がジルを見ると、ジルは頷いた。ルリはスピネに駆け寄ってすがった。
「王子、お願いです。この子を殺さないで。悪さをするような子ではありません。こんな見た目で人の言葉を話しますし驚かせてしまって申し訳ありません。秘密にして申し訳ありません。でも見つかったら殺されてしまうと思って」
語尾が弱々しくなり泣きそうになっているルリを見上げたダイアスは悲しくなった。悲しみに耐えられずスピネにいった。
「この泉があまりに綺麗で棲みついたんだ。俺は綺麗な水が好きだ。でも別に空でも生きていける。お前が俺を殺すというなら、俺はここから出ていくよ。出ていくからリチを叱らないでくれ。俺のことを殺さないでくれ」
ダイアスは大きな瞳を隠す大きな瞼を悲しげに半分隠した。その姿に王子は愛らしさを感じた。そしてダイアスが神秘的にも見えた。この生きもの使えるかもしれない。スピネはそう考え、ダイアスに微笑んだ。
「殺しはしないさ。だが見つけてしまったら私も無視はできない。まだここに居ていいから少しの間待ってくれないか? 」
ルリは喜び、ダイアスを見るともっと喜んだ。それにダイアスはなぜか照れた。
「さあ、今日はもう部屋に戻っておくれ、ルリ」
スピネは外套を翻す。
「はい! ありがとうございます、王子」
ルリの礼にジルも深々と頭を下げた。
「ダイアス、また来るからどこにも行っちゃだめよ」
「……ああ」
「じゃあ、またね」
ルリはスピネの後を追いかけていく。ダイアスだけが地下の泉に残る。ダイアスは自分と違う名前でルリを呼ぶスピネといなくなる事に、何かモヤモヤとした気持ちを感じていた。そのモヤモヤの名前が嫉妬だということには、ダイアスはまだ分からなかった。
その日の夜、スピネはダイアスのことを考えていた。愛らしさを持つ人の言葉を喋る人ではない生きもの。見る人によって色が違うという神秘的な生きもの。
「スピネ様。あのダイアスとかいう生きもの、どうなさるつもりですか? 」
ペンタゴンが心配する。
「さて、どうしようか? 」
スピネはダイアスを追い出そうという考えはなかった。何か考えの底を刺激するのだ。ペンタゴンは暖炉に薪をくべる。炎を見ながらペンタゴンはあることを思い出した。
「そういえば今民の中で祈願祭が流行っているそうです」
「祈願祭? 」
「はい。来年以降も豊作を願って。火を囲い踊るのです貧しさの心を癒すためでしょう。つらい毎日だと天を味方につけたいのは当たり前のことでしょう」
その言葉を聞いてスピネは閃いた。
「分かったぞ、ペンタゴン」
スピネの目には今までにない熱が宿った。
「何がです? 」
「ダイアスを世界の唯一にする」
「……はい? 」
ペンタゴンは理解できなかった。
「ダイアスを神にする。世界で初めての生きた、神だ」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
39
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる