【完結】ヤンキー少女、異世界で異世界人の正体隠す

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逃亡編

芽生えた秘密

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「腕、戻せ」
 ハクエンに言われた通り、カーネスは腕をデスクの下に戻した。カーネスは天井を仰ぐ。
「お前は恐ろしい人間だよ」
「それは私がベグテクタの王族の血をひいているからか? 」
 ハクエン達の視線が刺さるが、シズはカーネスから目を離さなかった。サファ王子の話が本当かどうかは分からないが、シズはカーネスの反応を伺う。だが、顔をこっちにやらない。さっき「二度手間」の話をした時、シズは思い出した。あの日カーネスは、シズの世界にも終戦記念日はあるかと聞いた。今の世の中、平和に感謝している人間なんているのかとぼやいていた。そして人間は平和より争いが好きだと言った。今どこにも戦争はないが、いつか絶対起こると言った。その後で「二度手間」と言ったのだ。
「スイド家は、戦争と何か関係があるのか?」
 カーネスがゆっくりと顔を下し、シズを見つめた。
「私が恐ろしいって事は私が再び戦争を起こす人間だって事か? 」
 睨み合う。カーネスは喉を鳴らした。
「今度長い夜にでも話してやるよ」
この期に及んではぐらかしやがった。シズの冷めていた怒りがこみ上げた。シズはデスクに膝を乗り上げ、カーネスの襟首を掴みあげた。
「死ねばよかったって言うくせにてめぇ私を生かしたな? ハートフィールドも死ねば良かった人間か? あいつこそ本当の理不尽じゃねぇかよ。お前は命屋か? お前が心臓に値段付けてんのか? 」
「カンダ落ち着け」
 ハクエンがシズをデスクから床におろす。
「別に話さないとは言ってないじゃないか」
 カーネスが、シズを見下ろす。
「次の機会に話してやるよ」
 シズは唇を噛む。
「今日はもう終わりだな」
 バライトの声が部屋に響いた。

「カンダ」
 カーネスが出て行ったあとバライトが、シズと同じように床に座った。
「お前の先祖、ベグテクタの王族なのか?」
「いや、分からないです。けどカーネスと初めて会った日あいつ戦争とか平和についてやたら話していたんです。だから適当に吹っ掛けったらなんか当たるかなって。けど失敗しました。すいません」
 バライト局長は唸った。
「うん。なかなか良かったよ。君とコーネス・カーネスを会せてよかった。いくよ、カルカ」
「あ、はい」
 九局の二人が出て行く。
「……どういう事ですかね? 」
 シズが疑問に思う。
「さあな」
 ハクエンが、シズの腕を掴んで立たせた。するとまた誰か入ってきた。
「終わったか」
 シプリン八局長が来た。
「今な。じゃあ頼む」
「十分だけだからな」
「ああ。じゃあカンダまた明日来る」
 ハクエン局長が出て行く。
「十分ってなんの事ですか? 」
「すぐに分かるさ」
 そう言って、シズは拘束室に連れて来られた。逃亡前とは、違う部屋になっていた。シプリン局長がドア開ける。シズはびっくりした。中にカザンがいた。
「十分後にカザンを引き取りに来る」
 シズが部屋に入るとドアが閉められた。シズは気まずそうにカザンを見る。カザンは部屋の真ん中に座っていた。シズは靴を脱いで正座をした。沈黙が流れる。
「話は聞きました。『コイン』の話も。カンダさんが入れ替えられた人間だって事も。あまりにも現実味がない話だから僕に言えなかったんですよね」
 その通りですと、シズは心の中で頷く。
「カラミンさんに、ルバの話をしました」
「え」
「カラミンさんにだけです。それでユオ・オーピメンを機密手配人にしたんです。アルガー塾長と同一人物だとふんで。捕まえられたら、ルバは人殺しにならずにすむと思って」
「……そうか」
 また沈黙が流れる。
「お前には、色々手伝ってくれたのに沢山迷惑かけてごめん。傷つけた」
 やっと謝る事ができた。
「謝られるのも変な感じです。僕達最初は利害一致で利用し合うだけだったんですけどね」
「そうだな。もう共有の秘密もなくなったしな」
「え? 」
「ルバの事を話したって事は九十七期生の悲劇の真相もカラミンさんに話したんだろう? 」
「それは、必然的に」
 カザンが言った。
「だったらもう私達だけの秘密はなくなったな。あんなにバレないようにお互い必死だったのにな」
「そうですね」
カザンは、シズに手を伸ばし頭の後ろを掴むと引き寄せた。そして唇を重ねた。たぶカザンが離れる。
「また秘密できましたね」
 カザンは立ち上がる。
「じゃあこれで僕は失礼します。もうどっかいかないでくださいよ」
 カザンは部屋を出て行く。ドアが閉まる。数秒経って、シズはドアを振り返った。
「え? 」
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