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逃亡編
スパイの理由
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「クレオって九十七期生のアオクラスを担任していた? 」
プライトはカルカに頷く。
「元第一副局長だ。彼女も王子に協力していた。彼女は九十七期生の大半を占めていたアルガー塾生を危険視していた。彼女の報告ではアルガー塾生はダイオ・アルガーに洗脳され国を脅かす危険な思想を持っていた」
「危険な思想? 」
カルカが尋ねる。
「戦争をやりたかったらしい。それはミトスから聞いた話だが」
「ミトス・スイド。スパイの名前ですね」
アンドラ王子とプライトがバライトを見る。王子は微笑んだ。
「名前まで知っているとはね」
「知ったのは最近ですよ、王子。それで? 」
プライトは話を続けた。
「それでクレオは危険分子を一掃する事にした。他の教官二人も巻き添えにしてミトス・スイドだけ生き残らせた。私達がそれを知ったのは全て終わったあとさ。クレオも死んだ」
「そしてクレオの計画を私は引き継いだ。ミトス・スイドを一年間スパイとなる訓練をさせた。その時怪しい動きをしているのがインデッセだと判断が付かなかった。半年かけてインデッセだと分かった時にミトス・スイドをインデッセに潜りこませた」
バライトがプライトを見る。
「女装させて身分を隠して。それを手引きしたのがプライト局長? 」
「プライトは私が引きずり込んだ。渡航記録を操作するのに七局の力を借りたかった」
「無理矢理協力をした訳じゃありません。きちんと同意しました」
プライトは庇われる理由はないと意思を主張した。
「ミトス・スイドは情報を掴んだのか?」
「それなりにね。けど報告を最後にいなくなった」
アンドラ王子は言った。
「消えたんだ。姿を消した。もしかしたらインデッセに正体がばれたのかもしれない。だから驚いた。シズ・カンダの顔を初めて見た時は」
窓から現れたシズ・カンダの姿を見た時、アンドラ王子は驚きを隠せた自信はない。けれどすぐにミトスとは別人と分かった。けれどあまりにも似すぎていた。
「隣にインデッセの王が居たからそれは焦ったね。ミトスの顔を知っているはずだった。だからシズ・カンダが他国研修でインデッセの王から指名された報告を受けた時しまったと思ったよ。けれどどうしようもなかった。実際彼女は襲われた」
「ミトス・スイドと同じ顔である事が理由だと? 」
「私はそう考えている。ミトス・スイドと同一人物だと思われたのではないかと」
「まあ、しっくりくる理由ですね」
バライトはまた一口甘いコーヒーを飲んだ。
「そういえばコーネス・カーネスを捕まえたという報告王子の耳に届いていますか?」
プライトが声を上げて身を乗り出した。
「カーネスって、あのインデッセの機密手配人か!」
「そうです。サウザン氏の娘が主犯である窃盗グループの件に関わっていたようでね。四局が捕まえました。フェナのヘミモル村で」
「ミトスの故郷だな……」
アンドラ王子が呟く。
「そうです。そのカーネス、変な事な能力があるそうで。信じるか信じないかはおたくらしだいですけど、全く同じ顔をした人物を入れ替えられるそうなんですよ。けど条件は二つ。必ず入れ替えである事、そして異性である事」
バライトが説明する。
「じゃあミトス・スイドとシズ・カンダは入れ替えられたという事か?!でもどこからあれだけのそっくりを……」
「違う世界から」
バライトはプライトに言った。プライトは素直に
「は? 」
と言った。
「本人が言っているんです。世界は四つある。この世界はそのひとつだ。他の三つの世界のどこかに自分と同じ顔をした異性がいるんですって」
プライトが不快な表情をする。
「ふざけているのか? 」
「本人が言っているだけだと言っているでしょう。けどコーネス・カーネスはインデッセが手配をしている機密手配人。そしてナコイはシズ・カンダとミトス・スイドとも関係があるそうなんです」
バライトが言った。
「そうなのか?」
アンドラ王子が聞いた。
「そうです、王子。けどいくらコーネス・カーネスを捕まえている事を内密にしても他国の機密手配人だ。なるべく早くインデッセに渡さないと、それこそ国際信用の問題になります。ダルコ氏の件を理由にして引っ張ってもあと一週間です」
その話を聞いてアンドラ王子は顔を険しくした。
「王子、何か? 」
「もしかしたらすでにインデッセにコーネス・カーネスを捕まえた情報がいっているかもしれないよ、九局長」
「どういう意味です、王子? 」
「私がスパイをつくろうと決めたのは城の中で怪しい動きがあったからだ。それから機密情報まではいかないが露見していない情報が他国に流れているのを感じた」
「城の中で怪しい動き? 」
カルカが呟く。
「その怪しい動きがインデッセによるものだと分かった。インデッセの怪しい動きが城の中である。ここまで言えば分かるだろう」
王子の告白にカルカはバライトを見る。
「アベンチュレの城にインデッセのスパイがいる、と」
「そういう事だ、九局長」
「けどなぜインデッセがアベンチュレを? 」
カルカが尋ねる。
「終わったことを終わらすことができないのが、秩序ある世界の欠点だという事だ。インデッセは戦争で神を失った。そして戦争の火種もその神だった。だから表面上は四ヵ国条約で平等を謳っているが裏ではやはりインデッセに負い目を背負わせている。インデッセは神を復活させたいらしい」
「復活ってまさか」
カルカが頬を引きつらせる。
「ミトスの報告ではまだインデッセに神はいるらしいよ。けど何らかの理由で神を動かす事ができない」
プライトはカルカに頷く。
「元第一副局長だ。彼女も王子に協力していた。彼女は九十七期生の大半を占めていたアルガー塾生を危険視していた。彼女の報告ではアルガー塾生はダイオ・アルガーに洗脳され国を脅かす危険な思想を持っていた」
「危険な思想? 」
カルカが尋ねる。
「戦争をやりたかったらしい。それはミトスから聞いた話だが」
「ミトス・スイド。スパイの名前ですね」
アンドラ王子とプライトがバライトを見る。王子は微笑んだ。
「名前まで知っているとはね」
「知ったのは最近ですよ、王子。それで? 」
プライトは話を続けた。
「それでクレオは危険分子を一掃する事にした。他の教官二人も巻き添えにしてミトス・スイドだけ生き残らせた。私達がそれを知ったのは全て終わったあとさ。クレオも死んだ」
「そしてクレオの計画を私は引き継いだ。ミトス・スイドを一年間スパイとなる訓練をさせた。その時怪しい動きをしているのがインデッセだと判断が付かなかった。半年かけてインデッセだと分かった時にミトス・スイドをインデッセに潜りこませた」
バライトがプライトを見る。
「女装させて身分を隠して。それを手引きしたのがプライト局長? 」
「プライトは私が引きずり込んだ。渡航記録を操作するのに七局の力を借りたかった」
「無理矢理協力をした訳じゃありません。きちんと同意しました」
プライトは庇われる理由はないと意思を主張した。
「ミトス・スイドは情報を掴んだのか?」
「それなりにね。けど報告を最後にいなくなった」
アンドラ王子は言った。
「消えたんだ。姿を消した。もしかしたらインデッセに正体がばれたのかもしれない。だから驚いた。シズ・カンダの顔を初めて見た時は」
窓から現れたシズ・カンダの姿を見た時、アンドラ王子は驚きを隠せた自信はない。けれどすぐにミトスとは別人と分かった。けれどあまりにも似すぎていた。
「隣にインデッセの王が居たからそれは焦ったね。ミトスの顔を知っているはずだった。だからシズ・カンダが他国研修でインデッセの王から指名された報告を受けた時しまったと思ったよ。けれどどうしようもなかった。実際彼女は襲われた」
「ミトス・スイドと同じ顔である事が理由だと? 」
「私はそう考えている。ミトス・スイドと同一人物だと思われたのではないかと」
「まあ、しっくりくる理由ですね」
バライトはまた一口甘いコーヒーを飲んだ。
「そういえばコーネス・カーネスを捕まえたという報告王子の耳に届いていますか?」
プライトが声を上げて身を乗り出した。
「カーネスって、あのインデッセの機密手配人か!」
「そうです。サウザン氏の娘が主犯である窃盗グループの件に関わっていたようでね。四局が捕まえました。フェナのヘミモル村で」
「ミトスの故郷だな……」
アンドラ王子が呟く。
「そうです。そのカーネス、変な事な能力があるそうで。信じるか信じないかはおたくらしだいですけど、全く同じ顔をした人物を入れ替えられるそうなんですよ。けど条件は二つ。必ず入れ替えである事、そして異性である事」
バライトが説明する。
「じゃあミトス・スイドとシズ・カンダは入れ替えられたという事か?!でもどこからあれだけのそっくりを……」
「違う世界から」
バライトはプライトに言った。プライトは素直に
「は? 」
と言った。
「本人が言っているんです。世界は四つある。この世界はそのひとつだ。他の三つの世界のどこかに自分と同じ顔をした異性がいるんですって」
プライトが不快な表情をする。
「ふざけているのか? 」
「本人が言っているだけだと言っているでしょう。けどコーネス・カーネスはインデッセが手配をしている機密手配人。そしてナコイはシズ・カンダとミトス・スイドとも関係があるそうなんです」
バライトが言った。
「そうなのか?」
アンドラ王子が聞いた。
「そうです、王子。けどいくらコーネス・カーネスを捕まえている事を内密にしても他国の機密手配人だ。なるべく早くインデッセに渡さないと、それこそ国際信用の問題になります。ダルコ氏の件を理由にして引っ張ってもあと一週間です」
その話を聞いてアンドラ王子は顔を険しくした。
「王子、何か? 」
「もしかしたらすでにインデッセにコーネス・カーネスを捕まえた情報がいっているかもしれないよ、九局長」
「どういう意味です、王子? 」
「私がスパイをつくろうと決めたのは城の中で怪しい動きがあったからだ。それから機密情報まではいかないが露見していない情報が他国に流れているのを感じた」
「城の中で怪しい動き? 」
カルカが呟く。
「その怪しい動きがインデッセによるものだと分かった。インデッセの怪しい動きが城の中である。ここまで言えば分かるだろう」
王子の告白にカルカはバライトを見る。
「アベンチュレの城にインデッセのスパイがいる、と」
「そういう事だ、九局長」
「けどなぜインデッセがアベンチュレを? 」
カルカが尋ねる。
「終わったことを終わらすことができないのが、秩序ある世界の欠点だという事だ。インデッセは戦争で神を失った。そして戦争の火種もその神だった。だから表面上は四ヵ国条約で平等を謳っているが裏ではやはりインデッセに負い目を背負わせている。インデッセは神を復活させたいらしい」
「復活ってまさか」
カルカが頬を引きつらせる。
「ミトスの報告ではまだインデッセに神はいるらしいよ。けど何らかの理由で神を動かす事ができない」
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