【完結】ヤンキー少女、異世界で異世界人の正体隠す

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逃亡編

危うい味方

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 午後三時。アベンチュレ国民局・一階エレベーター前。
カルカはエレベーターを待っていた。会議から帰ってきたプライトはその背中見て一瞬立ち止まったが、すぐに速足でカルカの隣に並んだ。カルカ一瞬横目でプライトを見た。プライトはポケットから折りたたんだメモを出し黙ってカルカに差し出した。カルカも黙ってそれを受け取る。エレベーターが到着した音が鳴る。
「今夜空けといてくれ」
 カルカは頷く。そしてふたりはそれ以上何も話さなかった。


十月二十六日正午過ぎ。アベンチュレ国民局・四局専用別室。
「なくなっただと!? 」
 ハクエンの声が響く。セッシサンは黙って頷いた。カラミンも目を見開いた。
「気が付いたのはいつですか?」
「確認したのは、三十分前ぐらい。昨日、地下倉庫の鍵が少しの間だけなくなったらしい。その話を聞いたサンスが念のため確認してくれと頼みに来た。そしたら、」
「二セットなくなっていたということか? 」
「そうです、局長」
 ハクエンは頭を抱える。
「サンスにはもう伝えたのか? 」
「セッシサンさんに言われて、カザンに探して来るように頼みました。昼休みで捕まるかどうかは分かりませんけど」
「まあ、わざわざ捜しに来たって時点でサンスも勘付くだろう」
 思い沈黙が流れる。セッシサンが煙草に火を付ける。
「けどこれで内部に敵がいるのは確定ですね」
 カラミンが言えば、セッシサンは煙を吐き苦笑する
「国民局の内部にいる人間が、カルセドニー工場に銃の部品の製造を唆したってことか? 」
「もしかしたら城人にユオ・オーピメンと通じる人間がいるかもしれませんよ」
「それはもう、本当にやばいな。他国に露見したら面目丸つぶれ、国際信用をなくすぞ」
「けど国内なら、上手くいけば露見する前にもみ消せます」
「言うね、カラミン」
 セッシサンは笑う。もう笑うしかないといった切羽詰まったものだ。
「やっぱりインデッセでのカンダ襲撃はアベンチュレの人間ですかね。押収した部品の場所を吐かせるために」
「けどカラミン、じゃあなぜ地下倉庫に隠したのがバレたんだと思う? 」
「城人の人間なら大体検討つくでしょう」
「最初から地下倉庫にあると知っていたんじゃないか?」
 セッシサンとカラミンがハクエンを見る。
「言いたくないが、銃の部品を押収した時に一局長、二局長、八局長に報告した。局長以外の一部の人間も知っているだろう」
 カラミンは同期である二局のタンサが銃の部品を知っていた事を思い出した。
「局長はそこから漏れたと? 」
 ハクエンはセッシサンに重く頷いた。
「けど事件より大分経っています。地下倉庫の鍵がなくなったのが昨日。行動が遅すぎます。それにケースの鍵も、セッシサン副局長しか持っていないのに」
 カラミンは疑問を投げかける。
「その理由は分からん。けどなくなったのは事実だ。犯人は局内にいるのが濃厚。この手は使いたくないが、仕方あるまい」
「局長何か策でも? 」
ハクエンは眉間に皺を寄せて意を決したように言った。
「九局に犯人を捜して貰う。犯人が内部にいるなら奴らの十八番だ」
「本気ですか局長? 」
 セッシサンは頬を引きつらせる。
「本気だ。俺がバライトに直接頼みに行く」
「けどハクエン局長。万が一九局に内部の敵がいたらどうします?」
「おいおいおい、やめてくれ」
 セッシサンが冗談でも考えたくないと、顔を顰めた。
「けどこの状況ではあり得ない事もないでしょう? 九局は内部情報を誰よりも把握している。密かに動く事に長けている局ですし」
「カラミンの考えも危険視のひとつとして正しいだろう。だが、」
 ハクエンは力強くカラミンを見やった。
「バライトは絶対にない」
 そしてハクエンは、力強く言い切った。
「あいつの仕事に対するやる気は湾曲した愛国心みたいなもんだ。国を悪い方に持っていこうなんて、できるはずがない程の九局根性を持っている。勘違いするなよ、あいつを庇っている訳じゃない。あいつは変態だ。九局かんさつの仕事に文字通り人生をかけて楽しいんでいる、究極の変態だ。味方になんかできないが、敵にもしたくない。そういう奴だ」
「そういう奴を味方にしようって話ですか?」
 セッシサンは紫煙を揺らしながら喉を鳴らした。
「いや、ただ協力し、協力して貰うだけだ。一時協定だ」
「ハクエン局長がそこまで言うなら最善策でしょう」
 カラミンも納得し、セッシサンも頷いた。
「この事は俺達三人だけの秘密だ。今度は誰にも報告しない。これから来るサンスとカザンには言うな」
「二人の事も疑っているんですか? 」
 カラミンが思わず聞いた。
「信じているさ。けど最小限にしたい。これでお前らのどっちかが犯人だったら最悪だがな」
「いや、俺はないですよ。疑うならケースの鍵持っていた副局長でしょー」
「おい、カラミン。やめろよ。冗談じゃない」
「そしたら俺が最年少副局長を更新できますね」
「お前まだそれ言ってんのか? 四局内でデモが起こるぞ」
 セッシサンが現実を突きつける。
「地味に傷つく事言わないでくださいよ」
 ドアがノックされ、開く。カザンが顔を出した。
「サンス副局長お連れしました」
 三人は三人同士誰とも目を合わさなかった。
「入って貰って」
 カラミンは微笑んで言った。
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