【完結】ヤンキー少女、異世界で異世界人の正体隠す

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逃亡編

風邪が流行

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 十月十四日。セドニは定時を少し過ぎた頃に仕事を終えた。そして、プライト七局長の所に行く。
「昼前に頼まれていた集計です。確認お願いします」
「おお。ありがとう。もう帰っていいぞ。明日から長期休暇だな。どこかへ行くのか? 」
「少し遠くに行ってみようかと」
「ほう。土産楽しみにしてるぞ」
 セドニは何も言わず一礼し、帰り支度をした。国民局を後にすると、セドニはそのまま家には帰らなかった。

 バライトが一階でエレベーターを待っていると、ハクエンがやってきた。お互いがお互いに気が付いたが会話をせずに並んだ。エレベーターが来て扉が開く。二人は同時に乗り込んだ。扉が閉まる。その時バライトがくしゃみをした。
「風邪か? 」
 ハクエンが心配する気がない口調で尋ねる。
「誰かが俺の噂をしているだけだよ」
「嫌われ者は大変だな」

「ふん」
 次にハクエンがくしゃみをした。バライトはまた鼻を鳴らした。
「いい奴そうに見える奴程、裏で嫌われていたりするからねー」
「心外だな。俺のは風邪だ。四局も風邪が流行っているんだよ。今日も何人か休んでいてな。こりゃあうつったかもな」
「何人休んでいるんだよ」
「五人」
「四局のくせにヤワだねー」
「九局さんは手厳しいな」
 扉が開く。ハクエンはエレベーターを出ると手を上げた。
「バライトも風邪には気を付けろよ。看病してくれる人いないんだから」
 扉が閉じる。
「結婚してんのがそんなに偉いのかよ! こんちきしょうっ! 」
 扉に向かってバライトは喚いた。
「どう思うおっさん! 」
 エレベーターを操作する男にバライトは同意を求めた。男はめんどくさそうにバライトから目をそらした。
「世の中って本当に冷たい! 」



 昼になりラリマは食堂を行った。フーメンが乗ったお盆を持ち、目当ての人物を捜した。そして隅の席にアザムがアザムのを見つけた。アザムの正面の席がちょうど空いている。
「ここいいかい?」
 顔を上げたアザムは頷いた。ラリマは座るとフーメンを二口三口食べて、咀嚼しながら様子を伺うようにアザムを見た。
「カンダの事どうなっているんだ? 」
 フーメンを飲み込み尋ねる。お茶を飲みながらラリマはアザムを見た。
「どうにもなってないよ」
「けど、九局もカンダの行方捜しているだろう? 見当とかついていないのかい? 」
「見当ついていても他局の人間に教える事はできない」
 アザムは冷たく話を切ってサンドイッチを齧った。素っ気なく思いながらもラリマは元々駄目元で聞いていたため、黙って頷いた。
「四局も捜しているんだろう? クドとかに聞いてみればいい」
 カンダの逃亡は八局の失態でもある。その事を気にしてか、アザムも冷たく離すのは罰が悪いと若干思ったのかそう言った。するとラリマは顔を渋くした。
「クドはいない」
「いない? 」
「風邪だって。あーあ、こんな時に」
 ラリマは八つ当たり気味に呟き、フーメンをすする。
「じゃあローズは? 」
「ローズもいない」
「じゃあ……。カザンは?牡蠣があたって復活していただろう」
「カザンも風邪。朝、トップ局長とカンダ捜索の件どうなっているか聞きに行ったら、四局今風邪が大流行中。季節の変わり目だからな。アザムも気を付けたまえ」
 アザムは眉間に皺を寄せた。カンダに関わる人間が風邪で休んでいる。仮病使って、オードまでカンダを捜しているんじゃないかと、アザム疑った。
「あ」
 ラリマが袖口を見て声を上げた。
「汁が付いてしまった。ハンカチ、ハンカチ」
 ラリマはポケットからハンカチを探る。その時、ラリマのポケットから何かが落ちて、アザムの足元まで行った。
「ああ、すまない。拾ってくれないか」
 アザムは椅子を引くと足元を見た。そこにはマッチが落ちていた。アザムは少し考え拾い、テーブルに置いた。
「ありがとう」
 ラリマはマッチを取るとポケットにしまった。
「……なんでマッチなんか持っているんだ? 」
 アザムは自然を装い聞いた。
「ラリマは煙草吸わないだろう」
「あんな不健康なもの俺がする訳ないだろう。カフェに行った時に貰ったんだ。たまにレジの所に置いてあるだろう? 」
「……そうか」
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