【完結】ヤンキー少女、異世界で異世界人の正体隠す

文字の大きさ
上 下
104 / 241
逃亡編

ヘミモル村にて調査

しおりを挟む
「へぇ、シズちゃんの紹介で」
 レアーメが宿にやってきたカラミンとカザンに嬉しそうに言った。
「そう、カンダにいい宿があったからぜひって」
 嘘っぱちを口にしてカラミンは微笑んだ。
「ご飯は美味しいから期待してください! シズちゃん元気ですか? 」
「そこそこね」
 カラミンは微笑みを崩さない。
「なら良かった。ところでお二人はもしかして兄弟ですか? 」
「やめてください」
 カザンは即答した。
「ねぇ、やめてくださいはおかしくない?普通に違いますでよくない? 」
「職場の上司と部下です」
「え、スルー? 」
「そうですか、似てないと思いました」
「よかったです」
 カザンは安心した。
「よかったって言うのもおかしいよね? 」
「じゃあもしかしてシズちゃんと同じ城人さん? 」
 レアーメが尋ねる。
「はい」
「わあ、カッコイイ! 」
「うん。ちょっと会話に上司挟もうか、カザン」
「あ、そういえば朝電話が。うちの母が取ったんですが、カラミン様宛てにハクエン様という方から」
「俺に? 」
 レアーメはメモをカラミンに渡す。メモには至急折り返し連絡が欲しいとあった。
「電話は? 」
「ラウンジに公衆電話が」
「ありがとう。カザン、先部屋に行っていいよ。ついでに俺の荷物も部屋に運んどいて」
「はい」
 カラミンはラウンジの公衆電話から国民局に電話し、四局に繋ぐように頼んだ。
「はーい、四局」
 電話に出たのはセッシサンだった。
「カラミンです」
「おお、無事に着いたか」
「さっき宿に。ハクエン局長から連絡あったんですけど」
「局長は今席をはずしてるよ。当分帰ってこないだろう」
「何かあったんですか? 」
「カンダが逃げた」
 カラミンが息を飲んだ。
「外部に手引きした人間がいるのは確かだ。九局もうちも捜しているが見つからない」
「外部って」
「さあな。九局は何かしら掴んでいるかもしれないが、こっちに教えてくれるわけないしな。お前らもそっちでやる事満足したら早く帰って来い。カンダの生まれはフェナだ。九局がそっちに行くだろう」
「そうですね」
 カラミンは眉間に皺を寄せた。タイミングが悪い時に逃げたなとシズに心の中で悪態をついた。
 電話を切ると、カラミンは早に宿の二階に上がった。部屋からカザンとレアーメが談笑しているのが聞こえ、部屋に入る。
「ああ、カラミンさん。カラミンさんの部屋は隣になります。荷物はテーブルの上に置いてます」
「ありがとう」
「カラミンさん、レアーメさんはカンダさんがここに来た時、村を色々案内したそうですよ」
「案内したっていってもステアの家と墓地だけですけどね」
「そこ俺達にも案内して欲しい」
 カラミンが頼むと、レアーメは驚いた。
「いい、ですけど」
「そして悪いけど、もしかしたら今夜中にここを発つかもしれない。こっちの勝手な都合だから宿代は払う」
「ハクエン局長から何か急の連絡でも? 」
 カザンが尋ねる。
「カンダが逃げた」
 カザンが目を見開く。
「逃げた? 」
 状況が分からないレアーメは首を傾けた。カラミンはレアーメの前に向き直る。
「仕事の事だから、全ては説明できないけどカンダは今危ない立場にいるんです」
「シズちゃんが? 」
「それがミトス・スイドと関係があるかもしれない」
「ミトスと?」
 レアーメは半信半疑だった。
「二人は偶然にしてはそっくり過ぎる。瓜二つだ。それで、ミトス・スイドも実はやばい事に関わっていたかもしれない。もしかしたらそれを調べにカンダはここに来たかもしれないんだ」
 レアーメは黙って考えた。
「……言われればシズちゃんミトスの事やけに気にしてたかも」
「そのカンダが今行方不明で、その手がかりがこのヘミモル村にあるかもしれない。だから協力してくれませんか? 」
 カラミンの頼みにレアーメは悩みながら頷いた。
「分かりました。それならステアも居た方がいいと思うので。一緒に来てください」
 レアーメに連れられてカラミン達はステアの家に行った。道中カラミンはカザンに耳打ちした。
「九局がここに来るだろう」
 カザンは頷いた。ステアの家に着き、レアーメは玄関でステアに分からないなりに状況を説明した。
「シズちゃんとミトスが? 」
 ステアも半信半疑だった。
「その、ミトス・スイドは実は双子だったって事は? 」
 カザンが尋ねるとステアはすぐに手をぶんぶん振った。
「それはない。うちのばあちゃんがとり上げたんだけどそんな事は言ってなかった。あ、」
「何か? 」
「え、いや、ばあちゃんがよく冗談言ってたんだよ。ミトスは生まれた時に女だったって」
 カザンとカラミンは目を合わせる。
「いや、冗談だよ! 冗談! 」
「ミトス・スイドの出産に立ち会ったのは誰か分かるかい? 」
 カラミンが尋ねるとステアは唸った。
「うちのばあちゃんと、ミトスの父さんと伯父さんじゃないか?あとミトスのじいちゃん、ばあちゃん」
「ミトス・スイドの身内は誰かこの村に残っていないのかな? 」
「残念ながらカラミンさん。ミトスの祖父母はミトスが幼い頃に立て続けになくなってるし、両親とテオおじさんはミトスが十二歳の時に交通事故で」
「天涯孤独ですか……」
 カザンが零す。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

処理中です...