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逃亡編
非現実な告白
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昨日、ハクエンが座った席にバライト、カラミンが立っていた所にカルカが立った。
「いやぁ、君とこうやって面と向かってお喋りしたいと思っていたんだよ」
バライトは歯を見せて愉快そうにした。この言い方、さっきの様子からこの男はずっと前から自分を見張ってないにしろ目は付けていたようだと、シズは思った。
「ちょっとじゃあウォーミングアップに。これから俺がいう質問に全て『はい』で答えてね。はいじゃあ、今日俺と会うのは初めてだ」
「は、はい」
シズは戸惑いながらも言われた通りに答えた。
「君は女だ」
「はい」
「髪色はブロンドだ」
「はい」
「君は四局だ」
「はい」
「局長はセッシサンだ」
「はい」
「他国研修でインデッセに行った」
「はい」
「君は学校ではキイロクラスだった」
「はい」
「君の名前はシズ・カンダだ」
「はい」
バライトはそこで手を叩いた。
「質問終了でーす。よくできましたねー」
あきらかにふざけた言い方だった。事実ではない事が混ざった質問。
「じゃあここから俺が個人的に聞きたい事をカンダ君に尋ねます。正しい事を教えてください」
とりあえず、シズは頷いた。
「じゃあ君の生まれは? 」
「……たぶんフェナです」
嘘を言っている気分だ。だからたぶんをシズは付けた。
「たぶん? 」
「養子だったから、です」
「ふーん。育ての親の名前は?」
「アタカマです」
バライトはそこで黙った。そしてシズの目を刺すように見つめた。その瞳に、シズはぞくっとした。にやけているのに瞳孔が開いている。その不気味さにシズはびびる。
「正直にって言ったよね? 」
嘘がばれている、とシズは身構える。
「君は事実ではない事を言う時、斜め左上を見るか、一回瞬きをして俯くね」
「え? 」
「さっきの質問、君の嘘を吐く癖を見抜くためにしたんだよ。だから事実ではない質問を混ぜて君に全て『はい』と答えさせた。城人になる人間は九局が全ての人間の経歴、素性を調べるんだ。カンダのも調べた。君の過去におかしいところは特になかった。けれど君の過去には匂いがしなかったんだよ。過去の存在が感じられない。言ってしまえば嘘くさい。だから九局は君に目を付けていた」
カルカが説明した。どうする? 正直に話してしまうか? けれど異世界から来たとか意味不明な事を言えはもっと今の立場から悪くなるんじゃないか。そこまでシズは考えると昨日届いた赤いリンゴを思い出した。今夜、ここから逃げる。もし逃げたら皆、シズを捜すだろう。きっとジャモンの所へ行く。ジャモンが下手に嘘を吐くとジャモンまでが怪しまれてしまう。ここで事実を話せば、ジャモンも正直に話せる。口裏合わせたと疑いをかけられてしまうかもしれないが、こんなイカれた口裏合わせの話なんてないはずだ。シズはさっきハクエンに殴られたおかげか、頭が少し冷静になったようだ。もう、話しちまおう。今シズは決めた。
「……日本で育ちました」
「ニホン? 村の名前か? 」
バライトが首を傾げた。
「国の名前です」
二人が顔を見合わせ変な顔をしたのがシズは分かった。それにお構いなしで続けた。
「日本の中途半端な田舎で育ちました。私は小さい頃からやんちゃで女に生まれたのが間違いだったってしょっちゅう言われました」
「病弱じゃなかったんだ」
カルカに、シズは頷いた。
「そのうち悪友が出来て、不良になって毎日喧嘩をしていました。あの日も喧嘩帰りでした」
「あの日? 」
バライトが話を急かす。
「十八歳の誕生日の前日でした。私は橋を渡っていました。そしたら鳥が止まった。犬も止まった。その飼い主も止まった」
「止まった? 」
カルカが顔をしかめる。けれどシズはもう最後まで話すと決めていた。
「そしたら漆黒の城人の制服を着た男が目の前に現れたんです。私にそっくりでした。その男が私に聞いたんです。死にたくないか?って。それで死にたくねぇよって答えました。そしたらそいつキスしてきて」
「それは情熱的」
バライトはからかった言い方をした。
「そこで意識を失いました。それで目が覚めたら見知らぬ部屋にいて知らない男がいました。それで君はここでしかもう生きられないって言われました。その男がカーネスです」
「じゃあカンダはコーネス・カーネスに誘拐されたって事か? 」
「いやぁ、君とこうやって面と向かってお喋りしたいと思っていたんだよ」
バライトは歯を見せて愉快そうにした。この言い方、さっきの様子からこの男はずっと前から自分を見張ってないにしろ目は付けていたようだと、シズは思った。
「ちょっとじゃあウォーミングアップに。これから俺がいう質問に全て『はい』で答えてね。はいじゃあ、今日俺と会うのは初めてだ」
「は、はい」
シズは戸惑いながらも言われた通りに答えた。
「君は女だ」
「はい」
「髪色はブロンドだ」
「はい」
「君は四局だ」
「はい」
「局長はセッシサンだ」
「はい」
「他国研修でインデッセに行った」
「はい」
「君は学校ではキイロクラスだった」
「はい」
「君の名前はシズ・カンダだ」
「はい」
バライトはそこで手を叩いた。
「質問終了でーす。よくできましたねー」
あきらかにふざけた言い方だった。事実ではない事が混ざった質問。
「じゃあここから俺が個人的に聞きたい事をカンダ君に尋ねます。正しい事を教えてください」
とりあえず、シズは頷いた。
「じゃあ君の生まれは? 」
「……たぶんフェナです」
嘘を言っている気分だ。だからたぶんをシズは付けた。
「たぶん? 」
「養子だったから、です」
「ふーん。育ての親の名前は?」
「アタカマです」
バライトはそこで黙った。そしてシズの目を刺すように見つめた。その瞳に、シズはぞくっとした。にやけているのに瞳孔が開いている。その不気味さにシズはびびる。
「正直にって言ったよね? 」
嘘がばれている、とシズは身構える。
「君は事実ではない事を言う時、斜め左上を見るか、一回瞬きをして俯くね」
「え? 」
「さっきの質問、君の嘘を吐く癖を見抜くためにしたんだよ。だから事実ではない質問を混ぜて君に全て『はい』と答えさせた。城人になる人間は九局が全ての人間の経歴、素性を調べるんだ。カンダのも調べた。君の過去におかしいところは特になかった。けれど君の過去には匂いがしなかったんだよ。過去の存在が感じられない。言ってしまえば嘘くさい。だから九局は君に目を付けていた」
カルカが説明した。どうする? 正直に話してしまうか? けれど異世界から来たとか意味不明な事を言えはもっと今の立場から悪くなるんじゃないか。そこまでシズは考えると昨日届いた赤いリンゴを思い出した。今夜、ここから逃げる。もし逃げたら皆、シズを捜すだろう。きっとジャモンの所へ行く。ジャモンが下手に嘘を吐くとジャモンまでが怪しまれてしまう。ここで事実を話せば、ジャモンも正直に話せる。口裏合わせたと疑いをかけられてしまうかもしれないが、こんなイカれた口裏合わせの話なんてないはずだ。シズはさっきハクエンに殴られたおかげか、頭が少し冷静になったようだ。もう、話しちまおう。今シズは決めた。
「……日本で育ちました」
「ニホン? 村の名前か? 」
バライトが首を傾げた。
「国の名前です」
二人が顔を見合わせ変な顔をしたのがシズは分かった。それにお構いなしで続けた。
「日本の中途半端な田舎で育ちました。私は小さい頃からやんちゃで女に生まれたのが間違いだったってしょっちゅう言われました」
「病弱じゃなかったんだ」
カルカに、シズは頷いた。
「そのうち悪友が出来て、不良になって毎日喧嘩をしていました。あの日も喧嘩帰りでした」
「あの日? 」
バライトが話を急かす。
「十八歳の誕生日の前日でした。私は橋を渡っていました。そしたら鳥が止まった。犬も止まった。その飼い主も止まった」
「止まった? 」
カルカが顔をしかめる。けれどシズはもう最後まで話すと決めていた。
「そしたら漆黒の城人の制服を着た男が目の前に現れたんです。私にそっくりでした。その男が私に聞いたんです。死にたくないか?って。それで死にたくねぇよって答えました。そしたらそいつキスしてきて」
「それは情熱的」
バライトはからかった言い方をした。
「そこで意識を失いました。それで目が覚めたら見知らぬ部屋にいて知らない男がいました。それで君はここでしかもう生きられないって言われました。その男がカーネスです」
「じゃあカンダはコーネス・カーネスに誘拐されたって事か? 」
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