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城人編

最悪な予兆

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 明日お前に全部話せるから。
 シズがカザンにそう言えばカザンは驚いた顔をした。そして戸惑ったまま頷いた。信じないかもしれない。けど話すなら明日がベストだとシズは思った。ハクエン局長は何か言いたげだったが明日まで待ってくれそうだった。
 その日の夜、シズは眠れなかった。明日で大きく前進するような、全てが壊れてしまうようなどっちかな気がした。ミトスの故郷に行って現状が行き詰っている。これ以上先に進むには大きい事をしなければいけない。私は帰るんだ。シズはそう自分を励ます。

 シズが早めに四局フロアに行くと、カザンはもう来ていた。
「おはよう」
「おはようございます」
 いつも通りの挨拶を交わす。しばらくしてリョークとアシスが早朝の門番から帰ってきた。シズは時間が進むのがいつもより遅く感じた。シズが落ち着かないでいると、ラリマがやってきた。シズがラリマの顔を見ると絶望を感じた。
「どうしたんだ。そんな絶望的な顔して」
 ラリマが呟いた。声が小さすぎて、シズには聞こえない。
「え? 何て? 」
 シズは聞き返す。
「死んだ……」
「死んだ? 」
 シズはまた聞き返す。
「ハートフィールドが死んだ」
 理解するのに、シズは時間がかかった。シズが何か言うより前にリョークがラリマの腕を掴んだ。
「死んだって、どういう事だよ! 」
 リョークはラリマに怒鳴る。オドーがリョークを落ち着かせる。
「キート、死んだってどういう事だ? 自殺か? 」
 ラリマは首を振った。
「違います。朝起こしいったら死んでいたようです。外傷はないです。前日から体調が悪かったようで、病死かもしれません」
「せっかく捕まえたのによ! 」
 リョークがデスクを拳で叩く。シズはラリマに声をかけた。
「ハートフィールドの遺体、見てもいいか?」
 ラリマは頷いた。
「シプリン局長がお前を連れて来いって。あとオドーさんの班も」
 ハクエンは席を外していて、カラミン班とオドー班で八局棟へ行った。ハートフィールドが入れられていた拘束室の前にシプリン局長とシラーさんがいた。
「悪いな、カンダ。話してもらいたかったが、無理になった」
 シズは返す言葉がなかった。
「本当に病死ですか? 」
 オドーがシプリンに尋ねる。
「はっきりは分からない。けど精神的にはやられていたようだ。仲間からの裏切りのせいかもな」
「仲間からの裏切り? 」
 シズが聞く。
「こいつ仲間に売られて捕まったんだよ」
 リョークが教えてくれたが口調がイラついていた。
「しきりに睡魔に襲われていてね。異常な程だったよ」
 シラーがため息を吐く。拘束室に入り、シズは遺体にかけてあった布をめくった。そこには眠っている男がいた。眠っているようにしか見えなかった。頬に手を触れれば冷たい。
「調書は? 」
「一応。でも信憑性は薄いよ」
 シラーがオドーに調書を渡す。それをカラミンが覗き見する。
「イギリスから来た? イギリスってどこ? 」
 シラーが首を振る。
「調べたがそんな地名はなかった」
 自分と同じ世界から来た。カーネスに連れて来られたんだ。それで死ぬなんてなんてどんだけ運が悪いんだ。可哀想過ぎるにも程があるとシズは悔しがる。
「カンダこいつと故郷がきっと同じって言ってたよな」
 ラリマが聞いてきた。
「いや、違ったみたい」
 ハートフィールドが死んで話せる理由がなくなった。シズは焦る。けどこれ以上カザンを裏切れないと思った。
「年齢は十七。いや、十八歳か」
 オドーの言葉に、シズは顔をあげる。
「こいつ今日が誕生日だ」
 シズの頭の中が一気に冴えた。そしてぬかるみの憶測が真実になった。そんな訳ない。そんな事ありえない。ハートフィールドの顔を見る。一緒だ。シズも誕生日の前日眠気に襲われていた。
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