【完結】ヤンキー少女、異世界で異世界人の正体隠す

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城人編

バレる

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セドニがエレベーターを呼ぶとガラガラと扉が開いた。そこにはひとり先客がいた。顔見知りだったが、そこまで気にすることなくエレベーターに乗り込んだ。扉が閉まる。
「他国研修お疲れさま、セドニ」
「ありがとう、カルカ」
 セドニとサカルカ、二人は同期で同じアオクラスかつルームメイトだった。
「他国研修って一年目以外の奴らは希望者だろう?あんな面倒なものによく行ったな」
「勉強だ」
「勉強ですか」
 険悪な間があく。
「他に理由があったんじゃないのか?」
 セドニは何も答えない。
「例えば、シズ・カンダとか? 写真の騒動の事聞いたぞ」
 セドニは鼻で笑った。カルカは舌打ちしそうになる。カルカはセドニに鼻で笑われるのが学生の頃から最高にムカついていた。
「さすが九局。些細な事を無理矢理問題にする天才だな」
「仕事だからな」
「嫌われるぞ」
「もう嫌われている」
 チンと鳴り、エレベーターの扉が開く。セドニが先に出る。
「セドニ」
 少し遅れて出たカルカがセドニの背中を呼び止めた。セドニが立ち止まり、少し振り向いた。
「ちゃんとしろよ」
 セドニは無視して歩き出した。カルカは隠れて舌打ちした。

 長期休暇がもうすぐそこまで迫っていた。それを使って、ミトス・スイドの故郷であるフェナのヘミモル村に、シズは行く事にした。それを見回りの時、カザンに報告した。
「じゃあ僕が列車の切符を手配します」
 すると意外な親切が返ってきた。
「え、なんで? 」
「カンダさん、まだ見張られているんでしょう? 」
 インデッセから帰ってきて、シズはまた時々目線を感じることがあった。
「また襲われたら大変ですし、フェナに行くまで見張られたら嫌でしょう」
「嫌だな。鬱陶しい」
「だからカンダさんはカモフラージュにどこか違う行き先の切符を駅で買ってください。お金は少しかかりますけど」
「それは大丈夫」
 金ならある。ミトスがジャモンにくれた金だ。その金でミトスの事を調べに行く。皮肉というか、シズは変な感じだった。
 定時が過ぎてもリョークとアシスはまだ仕事をしていた。例の窃盗グループの件だ。その事でオドー班はここの所ずっと残業だ。
「何かあったら手伝うから。いつでも言えよ」
 帰り際、シズはアシスに声をかける。
「ありがとう、シズ」
「おい! カンダ! 俺も励ませ! 」
「お先にねー」
「くそう! どいつもこいつも! 」
 リョークをからかいかわし、アパートに帰るとバリミアは十月にコーサに行くための準備に追われていた。久しぶりに、シズはジャモンと二人で夕食を食べる。きのこたっぷり生クリームソースのフーメンだ。
「けど凄いよ。名前と故郷まで分かるなんて。やっぱり、シズは凄いね」
 ジャモンはシズを褒めた。
「ほぼカザンのおかげだよ。行ってもなんにもねぇかもしれないけどな」
 見つけた宝箱は空っぽでした、とありえなくもない。
「何もないなんて事は絶対にないよ。人が生きていた跡っていうのは数年じゃ消えないよ」
「そうか」
 まだ元の世界に私の生きていた跡は残っているって事か。それは心強いとシズは喜ぶ。
「あ、そうだ。私がフェナに行くのカザンとジャモンしか知らねぇから。大変だと思うけど、バリミア達には内緒にしといてくれ」
「分かっているよ。けど皆それどころじゃないかな? 」
「確かにな」
 アシスもリョークもバリミアも仕事に忙しい。「リゴは?最近会ってないけど」
 リゴの名前を出すとジャモンはにやにやした。
「リゴ君は、彼女が出来たんだよ」
「え! 嘘! 」
「近所にパン屋あるだろう?そこの看板娘」
「え! あのレモン色のパン屋の? 超可愛い子じゃん! 」
「しかも女の子の方から好きって」
「すげぇじゃん! 」
 リゴの部屋に行ったが、デートの留守のようだった。

 次の日国民局の食堂で、シズがサンドイッチを食べているとカザンが隣にきた。そしてこっそりポケットに入れた。
「日付合っているかどうか帰ったら確認してください」
「助かる」
 それから成行きで一緒に昼を食べて食堂を出た。昼休みのエレベーターはいつものように混んでいて、二人は階段で行こうとした。
「あっれー。カンダとカザンじゃん。何一緒にお昼食べたの? 」
 振り返るとカラミンがいた。後輩たちは、嫌な顔を出さないようにする。
「カンダなんで眉間に皺寄せるの」
 シズの表情筋は我慢しきれなかった。
「お疲れさまです」
 カザンがクールに挨拶をして階段を上ろうとする。
「ちょっと二人で仲良くご飯食べるならさ、先輩も誘ってよ。奢らないけど」
 そこは奢れよとシズは心の中で文句を言う。
「たまには仲間に入れてよ」
 ほカラミンは右腕をカザンの肩に回し、左腕をシズの肩に回した。
「やめてください」
 カザンが本気で嫌がっている。シズも無言で腕を払おうとしたが、ぎゅっとしめられさらに引き寄せられた。カラミンの顔に顔が付く。
「ねぇ」
 甘く重く静かな一言だった。その声色でヤバいとシズは直感した。
「なんか二人でこそこそしてるよねぇ?先輩を差し置いて」
 シズは目線をカザンにやらないようにした。
「別に、何も」
 カザンが素っ気なく答えた。
「九十七期生とオクターについて調べているって、先輩は小耳に挟んだけどね」
 シズは昨日、オドーに聞かれていたことを察した。シラを切るか、白状するか猛スピードで脳内会議をする。
「もし、調べていたとしてもカラミンさんに関係ありますか?」
 カザンは冷たく言った。少し間をあけてカラミンは笑った。不気味だ。
「あるよ」
「ミソーナ! 」
 女の声がカラミンの名前を呼んだ。カラミンの拘束が緩み、ふたりはつかさず逃げる。
「こら! ちょっとまだ話は終わってないよ! 」
「悪いわね、もう私の番よ。昨日約束すっぽかしたでしょ! どんだけ待ったと思ってるの! 」
 結構な美人がカラミンに延々と怒っていた。シズ達は階段を上がる。
「あんな事言ってよかったのかよ」
 調べていたとしても、カラミンには関係ない。結構強気な発言だった。
「大丈夫です。僕が適当にごまかしときます。あなたは興味本位で僕に付き合っていた事にしてください」
「おお。分かった」
 カザンが年下なのを時々思い出して、シズはびっくりする。私、来年二十歳だぞ。私、大人。カザン高校生。シズはなんか、悲しかった。
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