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城人編
九十七期生の悲劇(たったひとりの友人)
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ルバから見ると、ミトスは不思議な奴だった。浮いている訳じゃないけれど、いつもひとりだった。一匹狼というよりも自由気ままな猫のような奴だった。
ルバは学校でスフェン達の事なんとかできるんじゃないかって思っていたけど、それが見事打ち砕かれた。アルガー塾以外の入学者が二十人ぐらいいた。その生徒達ははスフェン達がルバに冷たくしているのに気が付いて、声をかけてくれた。天才へのやっかみもあったとルバは思う。その天才の塾をドロップアウトしたルバを身近に感じたのかもしれない。けれど二週間で態度は変わった。スフェン達がルバのことを悪く吹き込んだ。スフェン達は、優しく接してアルガー塾以外の奴らをいとも簡単に取り込んだ。評判の悪いルバと関わるのをやめたんだ。それでもミトスだけは違った。普通にルバ話しかけ、二人一組になる時はルバに声をかけてきた。話しているうちに、ルバはミトスも家族がいない事を知った。ミトスが十二歳の時に交通事故で亡くなった。身内がいないっていう共通点がルバに心を開かせた。
ある日、学校の廊下をルバが曲がろうとした時、アオクラスの女教官、クレオ教官がミトスを呼び止めて叱っていた。
「スイド君! 君、昨日の小テスト手を抜いたでしょう? 」
「そんなことしないですよ、教官。昨日のは難しかった」
「そんなことないです。満点のトップ入学者の君なら楽勝のテストだったはずよ」
ルバは驚いた。トップ入学者はスフェンだと思っていた。現に入学者代表はスフェンがやった。
「目立ちたくないんです」
「そういってカザン君に入学者代表譲って」
「助かりました。すいません、もう行かないと」
「ちょっと! スイド君」
ミトスは逃げた。ルバが寮に戻るとミトスはいた。ルバは立ち聞きした事を謝り、本当かどうか確かめた。ミトスは聞いちゃったんだ、と笑った。
「本当だよ。内緒だよ」
「なんで隠しているんだよ。アルガー塾の奴らよりお前凄いって事だぞ。それって相当だぞ」
「だって恥ずかしいじゃん」
ミトスは平然と言った。
「は? 」
「入学生代表なんてさ。大勢の前でかしこまって喋るんだよ。嫌だよ俺」
真面目な顔をしてそんな事をミトスは言った。ルバは変わった奴だと思った。そして、不思議に思った事を聞いた。
「お前あんまり名誉とかに興味なさそうだよな。それなのになんで城人になろうと思ったんだ?」
「正直言うと城人には別になりたくないよ」
ミトスは本当に嘘を吐かないとルバは思った。
「本当は小麦を育てたい」
「小麦? 」
「俺、フェナの生まれなんだ。国境辺りじゃなくて、もっと田舎の方にある村。ヘミモル村っていうとこ。俺の村は一面小麦畑でさ、収穫時になると凄い綺麗なんだよ。俺にとっては王都なんかよりずっといい所だよ。俺、畑を耕すのも収穫するのも超上手いんだぜ」
「そんなに好きならなんで城人に? 」
「人を捜しているんだ」
「人? 誰だ? 」
「それは内緒」
ミトスはそう言って笑った。下手に隠したりしない。
「その人を捜すには何が一番いいか考えて、城人の七局になるのがいいかなって。肩書があった方が結構いろんな所に顔広くなるんじゃないかって」
「外国にいるのか? 」
「たぶんね」
「なんでそいつを捜している? 」
「その人を見つけると、自分が見つかる気がする」
「どういうことだ? 」
ミトスは微笑むとルバに近づいた。そしてもうひとつ秘密を教えてやるよと囁いた。ルバは息を飲んだ。
「俺、十八で死ぬんだ」
ルバはミトスの顔を見ると目を見張った。ミトスはデスクに戻ると本を読みだした。なんとなく、ルバは問いただせなかった。なぜ、十八で死ぬんだ?病気か?全然そんな感じじゃないのに。けどただ狼狽えただけで、ルバ何も聞けなかった。
ルバは学校でスフェン達の事なんとかできるんじゃないかって思っていたけど、それが見事打ち砕かれた。アルガー塾以外の入学者が二十人ぐらいいた。その生徒達ははスフェン達がルバに冷たくしているのに気が付いて、声をかけてくれた。天才へのやっかみもあったとルバは思う。その天才の塾をドロップアウトしたルバを身近に感じたのかもしれない。けれど二週間で態度は変わった。スフェン達がルバのことを悪く吹き込んだ。スフェン達は、優しく接してアルガー塾以外の奴らをいとも簡単に取り込んだ。評判の悪いルバと関わるのをやめたんだ。それでもミトスだけは違った。普通にルバ話しかけ、二人一組になる時はルバに声をかけてきた。話しているうちに、ルバはミトスも家族がいない事を知った。ミトスが十二歳の時に交通事故で亡くなった。身内がいないっていう共通点がルバに心を開かせた。
ある日、学校の廊下をルバが曲がろうとした時、アオクラスの女教官、クレオ教官がミトスを呼び止めて叱っていた。
「スイド君! 君、昨日の小テスト手を抜いたでしょう? 」
「そんなことしないですよ、教官。昨日のは難しかった」
「そんなことないです。満点のトップ入学者の君なら楽勝のテストだったはずよ」
ルバは驚いた。トップ入学者はスフェンだと思っていた。現に入学者代表はスフェンがやった。
「目立ちたくないんです」
「そういってカザン君に入学者代表譲って」
「助かりました。すいません、もう行かないと」
「ちょっと! スイド君」
ミトスは逃げた。ルバが寮に戻るとミトスはいた。ルバは立ち聞きした事を謝り、本当かどうか確かめた。ミトスは聞いちゃったんだ、と笑った。
「本当だよ。内緒だよ」
「なんで隠しているんだよ。アルガー塾の奴らよりお前凄いって事だぞ。それって相当だぞ」
「だって恥ずかしいじゃん」
ミトスは平然と言った。
「は? 」
「入学生代表なんてさ。大勢の前でかしこまって喋るんだよ。嫌だよ俺」
真面目な顔をしてそんな事をミトスは言った。ルバは変わった奴だと思った。そして、不思議に思った事を聞いた。
「お前あんまり名誉とかに興味なさそうだよな。それなのになんで城人になろうと思ったんだ?」
「正直言うと城人には別になりたくないよ」
ミトスは本当に嘘を吐かないとルバは思った。
「本当は小麦を育てたい」
「小麦? 」
「俺、フェナの生まれなんだ。国境辺りじゃなくて、もっと田舎の方にある村。ヘミモル村っていうとこ。俺の村は一面小麦畑でさ、収穫時になると凄い綺麗なんだよ。俺にとっては王都なんかよりずっといい所だよ。俺、畑を耕すのも収穫するのも超上手いんだぜ」
「そんなに好きならなんで城人に? 」
「人を捜しているんだ」
「人? 誰だ? 」
「それは内緒」
ミトスはそう言って笑った。下手に隠したりしない。
「その人を捜すには何が一番いいか考えて、城人の七局になるのがいいかなって。肩書があった方が結構いろんな所に顔広くなるんじゃないかって」
「外国にいるのか? 」
「たぶんね」
「なんでそいつを捜している? 」
「その人を見つけると、自分が見つかる気がする」
「どういうことだ? 」
ミトスは微笑むとルバに近づいた。そしてもうひとつ秘密を教えてやるよと囁いた。ルバは息を飲んだ。
「俺、十八で死ぬんだ」
ルバはミトスの顔を見ると目を見張った。ミトスはデスクに戻ると本を読みだした。なんとなく、ルバは問いただせなかった。なぜ、十八で死ぬんだ?病気か?全然そんな感じじゃないのに。けどただ狼狽えただけで、ルバ何も聞けなかった。
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