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城人編
国境を越えた夜
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「君本当にデリカシーないね」
王がデザートは部屋で食べると食堂を後にすると、アザムはデザートをシズに譲り、部屋に戻った。アザムの分のデザートをシズが食べているとラリマが呆れた顔で言った。
「なんでだよ」
「アザムは養子だ。話じゃ十一歳の時にアザム家に養子になったらしい。それまでは色々大変だったみたいだよ。それなのに彼に幼少期の話を振るなんて」
「いや、私だって養子だし」
そう言えばラリマは目を見開いた。この設定のことは知らなかったのだと、シズも驚いた。シズの幼少期は普通に親もいてプロレスばっかやって楽しい小学生だったか。病弱設定でプロレスやっていたなんて、シズは言えなかった。
「ってか、最初に小さい頃の話振ってきたのマッシュじゃんか」
「だって話題が見つからなかったから……」
ラリマは明らかにしょげた。マッシュと呼んでいるのにいつものようにマッシュじゃない!とは言わない。さらに俯いて小声で、
「……悪かった」
とラリマは謝った。シズはええーと漏らした。
「お前さぁ、良い奴か悪い奴かはっきりしねぇな。そういうの一番、扱いめんどくせぇんだよ。どっちかにしろよ」
「お前本当にデリカシーないな! 」
シズはデザートを食べ終えて部屋に戻った。走る景色を見ながらここはどこだろう、私はいったい何をしているんだろうと考える。ざわめきというか、虚しさというのか、足が地面に着かない気持ちになることがこの世界に来てから何度か来る。おとぎ話の中にいる。それはまだ拭いきれない。今この瞬間、自分の生命はちゃんと存在しているのか。していないと言われても「そんな気がした」とシズは答えそうだと思った。
その夜、特急列車はやっと国境を越えてインデッセに入った。
「アザムはちゃんとシズ・カンダと話が出来ているかなー」
ハクエンはシャツの袖を捲りながら九局フロアの窓から見える夜空に呟いた。
「あまり親しくなさそうですからね。不自然に話しかけても怪しまれるでしょう」
カルカはしわくちゃなハクエンのジャケットをハンガーにかけた。
「しかし九十七期生の写真にシズ・カンダのそっくりが写っているなんて情報、俺の耳には入ってこなかったんけどね」
「我々の耳に入れる不都合があったのでしょう。しょせんよその人間です」
「クールだねぇ、三十路のカルカは。それで、シズ・カンダは九十七期生の悲劇に関係あると思うか? 」
「まだなんとも言えませんよ。とりあえず証拠が必要です。あいつの情報通り、『ライター』があの人なら周辺を引き続き洗います。証拠隠滅の漏れがきっとどこかにあるはずです。うまくいけばシズ・カンダが絡んでないかどうか分かるかもしれません。それにあいつにもう一度話してみます」
「よし、俺の出番か! 」
「違います。局長は書類を終わらせることだけに集中してください」
「……いやだ」
「いやでもしてください」
「カルカ副局長、上司に優しさが足りません」
「これ以上の優しさは業務外です」
「ええー」
「……今現在あなたの残業手伝っているのは最上級の優しさではありませんかね」
「……ガンバリマス」
四局フロア。
「では、明日からお休みさせて頂きます」
書類整理を終えるとカザンは珍しく残業しているカラミンに声をかけた。
「そっか。明日からか、カザンの長期休暇」
「田舎に帰るのか? 」
帰り支度しているリョークが聞いた。
「いえ、ちょっと旅行に」
リョークはにやにやしてカザンをつついた。
「女か? 」
「一人です」
なんだ、とリョークはつまらなそうな顔をした。カザンは引出しから四つ折りにされた紙を出すとポケットに入れてリョークと途中まで帰った。
王がデザートは部屋で食べると食堂を後にすると、アザムはデザートをシズに譲り、部屋に戻った。アザムの分のデザートをシズが食べているとラリマが呆れた顔で言った。
「なんでだよ」
「アザムは養子だ。話じゃ十一歳の時にアザム家に養子になったらしい。それまでは色々大変だったみたいだよ。それなのに彼に幼少期の話を振るなんて」
「いや、私だって養子だし」
そう言えばラリマは目を見開いた。この設定のことは知らなかったのだと、シズも驚いた。シズの幼少期は普通に親もいてプロレスばっかやって楽しい小学生だったか。病弱設定でプロレスやっていたなんて、シズは言えなかった。
「ってか、最初に小さい頃の話振ってきたのマッシュじゃんか」
「だって話題が見つからなかったから……」
ラリマは明らかにしょげた。マッシュと呼んでいるのにいつものようにマッシュじゃない!とは言わない。さらに俯いて小声で、
「……悪かった」
とラリマは謝った。シズはええーと漏らした。
「お前さぁ、良い奴か悪い奴かはっきりしねぇな。そういうの一番、扱いめんどくせぇんだよ。どっちかにしろよ」
「お前本当にデリカシーないな! 」
シズはデザートを食べ終えて部屋に戻った。走る景色を見ながらここはどこだろう、私はいったい何をしているんだろうと考える。ざわめきというか、虚しさというのか、足が地面に着かない気持ちになることがこの世界に来てから何度か来る。おとぎ話の中にいる。それはまだ拭いきれない。今この瞬間、自分の生命はちゃんと存在しているのか。していないと言われても「そんな気がした」とシズは答えそうだと思った。
その夜、特急列車はやっと国境を越えてインデッセに入った。
「アザムはちゃんとシズ・カンダと話が出来ているかなー」
ハクエンはシャツの袖を捲りながら九局フロアの窓から見える夜空に呟いた。
「あまり親しくなさそうですからね。不自然に話しかけても怪しまれるでしょう」
カルカはしわくちゃなハクエンのジャケットをハンガーにかけた。
「しかし九十七期生の写真にシズ・カンダのそっくりが写っているなんて情報、俺の耳には入ってこなかったんけどね」
「我々の耳に入れる不都合があったのでしょう。しょせんよその人間です」
「クールだねぇ、三十路のカルカは。それで、シズ・カンダは九十七期生の悲劇に関係あると思うか? 」
「まだなんとも言えませんよ。とりあえず証拠が必要です。あいつの情報通り、『ライター』があの人なら周辺を引き続き洗います。証拠隠滅の漏れがきっとどこかにあるはずです。うまくいけばシズ・カンダが絡んでないかどうか分かるかもしれません。それにあいつにもう一度話してみます」
「よし、俺の出番か! 」
「違います。局長は書類を終わらせることだけに集中してください」
「……いやだ」
「いやでもしてください」
「カルカ副局長、上司に優しさが足りません」
「これ以上の優しさは業務外です」
「ええー」
「……今現在あなたの残業手伝っているのは最上級の優しさではありませんかね」
「……ガンバリマス」
四局フロア。
「では、明日からお休みさせて頂きます」
書類整理を終えるとカザンは珍しく残業しているカラミンに声をかけた。
「そっか。明日からか、カザンの長期休暇」
「田舎に帰るのか? 」
帰り支度しているリョークが聞いた。
「いえ、ちょっと旅行に」
リョークはにやにやしてカザンをつついた。
「女か? 」
「一人です」
なんだ、とリョークはつまらなそうな顔をした。カザンは引出しから四つ折りにされた紙を出すとポケットに入れてリョークと途中まで帰った。
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