【完結】ヤンキー少女、異世界で異世界人の正体隠す

文字の大きさ
上 下
46 / 241
城人編

捜査一日目

しおりを挟む
「こら、カンダ! 危ないからヘルメットの紐ちゃんと絞めなさい! 」
 カラミンにシズは注意され、紐をきつくした。そしてまた山の斜面と睨めっこする。
「カザン! 溝の方は何かある? 」
 溝の中を探るカザンにカラミンが声を張る。
「今のところは何もありません」
「ってか、見ても分かる自信ないっすよ。銃ならまだしも、部品なんて」
「こら、カンダ! 銃って単語出さない! どこで誰が聞いてるか分からないんだから!」 
 あんたの声がでけぇよとシズは呆れる。ふと光に反射した物が、シズの目に入りカラミンに見せた。
「もしかして、これ! 」
「うん、ただの石ころだね」
 シズは無言で遠くに投げ捨てた。

 遡ること昨日の午後五時。
「お、五時。帰ろうっと」
 デスクの上を片付けると、シズは席を立つ。
「俺も上がろっと! 」
 リョークも席を立ち、アシスのデスクの上を覗き込む。
「アシスは? 」
「もう少し資料読み込んでから帰る。夕食までには帰る」
「おお。じゃあ先帰るな」
「残念。君は残業だ」
 いつの間にかシズの目の前にハクエン局長が、シズの肩を叩く。
「カザンにカラミンも、ちょっとこい」
 シズと同じように帰る支度をしていたカザンが荷物をデスクに置いた。カラミンはのんびりと立ち上がる。
「やばい予感的中だね。あーあ」
「まあ、どんまいカンダ! 俺先帰るわー」
 シズはリョークを見送り、ハクエン局長に連れられ別室に向かった。そこには、セッシサン副局長もいた。
「あれ、サンス副局長達は? あの人が絡んでると思ったんですけど」
「そうだ。けどもう帰ったよ。これからお前らに命令を下す。これは内密だ。他の四局員にも漏らすなよ」
 ハクエン局長の声色は部屋の空気を引き締めた。緊張感が漂う中、セッシサン副局長は布に包まれた何かをテーブルの上に置いた。そして広げると部品があった。それを見た途端カラミンさんが渇いた笑いを漏らした。
「想像したよりやばいですけど」
「これは何ですか? 」
 カザンがカラミンに聞く。
「銃の部品だよ」
「え、それってやばいんじゃ……」
 シズはビビる。銃は戦争後に使うことも製造することも禁止になっている。
「かなりやばいよ、カンダちゃん。しかもこれかなり綺麗ですよ。最近作られたってことですよね? 」
 カラミンが尋ねれば、セッシサン教官が頭を掻く。
「今日の視察で六局が見つけた。知っているのは、六局の局長と副局長にこれを見つけたルスカルト」
リゴが見つけたのをシズは知って、納得する。
「そしてここいる五人だ。お前達にこの話をした意味が分かるな? 」
「これを誰が落としたか調べる。そして銃を製造している者をあぶりだす」
「よし。さすがだな」
 ハクエン局長が微笑んで三本指を立てた。
「三日やる。宿ももう手配してある。お前ら三人で調べて来い。頼んだぞ」


「けど、実際三日では厳しいと思いますけど」
 カザンが零す。結局あれからは何も出てこず、シズ達は店に入り昼食を取ることにした。冷製フーメントマトソース和えをシズはすすり込む。白シャツに少し飛んだが上を着れば大丈夫だろう。今日の三人は今日はエンジのジャケットではなく通常の黒い制服を着てきている。
「ごまかすのが三日で限度なんだよ、カザン。せめて一週間こっちに入れればいいけど、それじゃあ九局が勘付くからね。あいつら本当に怖いから」
 シズの頭の中に現れたアザムが鼻で笑う。
「この中途半端な状況でこれが露見したら必要以上に大騒ぎになる。証拠を揃えて上に報告するのが一番なのさ。まあ、安心したまえ。このカラミン様は四局の時期副局長と言われているからね。最年少副局長記録を塗り替えてみせるさ!」
「最年少記録誰が持ってるんですか?」
「セドニ副局長だよ。カザン。27歳でなってる」
あいつやっぱすげぇんだな、と感心しながらシズはフーメンをすする。
「けどそれじゃあもうカラミンさん一年しかないですよ。無理ですよ」
 カザンがトマトを頬張りながら冷たく言った。
「冷静にそういうこと言わないでくれる? まあ、このでかい案件で手柄立てれば俺の夢は近づくから、君達しっかり頑張ってね」
 すげぇやだとシズは思った。

 午後は周辺の聞き込みをすることにした。
「あの人に話聞いてみよう」
 カラミンが顎でさした方には絵描きのおじいさんがいた。
「いけ、カンダ! 」
「……はーい」
 シズは絵描きにすいませんと、声をかけた。
「少しお話聞きたいですけど」
 すると絵描きは掌を出した。どういう意味か分からず、シズは首を捻る。
「絵を描かせてくれたらいくらでも話すよ」
 カラミンを振り返る。
「描いて貰いなよ!それで二人で話聞いておいて。俺、ちょっと食後のデザートにアイスクリーム食べに行くから。じゃあね!」
 カラミンはそう手を振って、近くの喫茶店に入っていった。
「……私あいつだけは副局長にしたくねぇ」
「同感です」
珍しく、ふたりは気が合った。絵描きに金を払い、木箱をひっくり返した物にシズは腰をかけた。絵描きは筆を走らせる。少し経ってカザンが絵描きに質問した。
「土砂崩れの危険性のある山を今度整備するんですけど、」
「ああ、知っているよ。何週間前かにその話を聞いた。昨日城人さんが視察に来ていたらしいね」
「その山ですけど、山賊が出たりとかという噂は? 」
 銃の部品の運び屋に山賊が使われているかもしれない。それはセッシサン副局長が可能性の一つとしてあげていた。
「いいや。聞いたことないね」
「そうですか」
 カザンは期待外れに肩を落とす。
「けど、歩きでインデッセから国境を越えてくる人間は用心棒雇ってここまで来る。そしてここで用心棒は引き返す。何度かこの街に泊まりくる奴がいる。もっと手前で用心棒雇うのやめたらいいのにとわしは思うけど、インデッセの人間は用心深いからね。あの山には熊もいなのに。金の無駄だ」
「はあ」
 シズは力なく頷く。それから絵が描き終わるまで話を続けたが、これといった手がかりは掴めないまま、シズは描いて貰った絵を貰った。
「なかなか上手じゃないですか」
「じゃあやるよ」
 シズはカザンに押し付ける。
「え、いらないですよ」
「私だって自分の顔なんていらねぇよ」
 シズは絵を畳んで、カザンのポケットにねじ込んだ。
「ちょっと! 」
 シズは逃げるようにカラミンがいる喫茶店に入ると、カラミンはアイスを三つも食べていた。シズは張り倒したかった。それから夜まで色々調べたが、結果は芳しくないまま夜になった。そしてカラミンはアイスの食べ過ぎでお腹を壊していた。シズはざまぁみろと思った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

処理中です...