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城人編
この世にないはずの部品
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サンスとリゴは現地の人に案内して貰って土砂崩れの危険性のある現場に来ていた。
「これは今まで何もなかった方が不思議ですね」
サンスが苦く零せば、工事担当者もそれに同意した。
「俺にはよく分かりません」
リゴが正直に言った。
「仕方ありませんよ。僕はもう何度もこういう下見には来ていますからね。分からないうちは勉強してください」
「はい」
ヘルメットをかぶり、危険性の度数は高く、着工は出来るだけ早い方がいいだろうという話になった。
「民家が少し離れているのが幸いですが、そのせいでここの危険性に気が付くのが遅れましたね」
サンスが話している横で、リゴは溝に何か落ちているのに気が付いた。しゃがみ込むとそれを手に取る。円柱のような形で、穴が六ケ所貫通している。穴の大きさは同じ、並びも円を描くように均等。リゴは子どもの玩具かと思った。
「ルスカルト君、どうかしました? 」
「いや、見慣れないものが落ちていたので、つい。すいません」
よそ見していたのをリゴは謝った。サンスはリゴの手にあるのを見ると目の色を変えた。すかさずポケットからハンカチを取り出すと広げた。
「ルスカルト君、それをここへ」
「え? 」
「早く! 」
「あ、はい! 」
リゴは言われるがままにハンカチに拾ったそれを置いた。サンスは手早く包むとポケットにしまった。
「このことは誰にも話してはいけませんよ」
「え? 」
「あとで説明します。帰ったら四局長の所へ一緒に来てください」
「サンスさん! こっち見てください! 」
サンスは呼ばれその場から離れた。リゴはただ茫然と立っていた。
午後の街のシズが見回りに行き帰ってくると、リョークとアシスがオドーから何か資料を受け取っていた。
「よく読んでおけよ」
二人が返事をすると、オドーはフロアを出て行く。
「見回りお疲れさん」
すれ違いざまオドーはシズとカザンに声をかけてくれ挨拶を返す。そしてリョーク達の後ろを覗く。
「何か命令か? 」
「ああ」
リョークが資料を高く上げる。
「窃盗グループだってよ」
「窃盗? 」
「ここ最近同じ手口の窃盗が続けざまに五件。全部老人相手」
アシスが呆れた口調で資料に目を通している。
「老人相手にするなんてえげつねぇな」
シズはジャケット椅子にかけると給湯室へ行く。
「お茶入れるけどカザン飲むか? 」
「僕は結構です」
冷たい紅茶を持ってシズが席に戻ろうとすると、リゴとサンス副局長と会った。
「お疲れ様です。もう帰ってきたんっすね」
シズが声をかける。
「ああ、思ったより早く終わったんだよ。それよりハクエン局長いるかな?」
「いると思いますよ」
シズが目をやれば局長席に座っている。
「局長」
シズが呼べば、ハクエンは顔を上げた。
「お客さんですよ」
「サンス」
ハクエンがサンス傍までいく。
「どうかしたか? 」
「少しお時間いいですか、別室で」
サンスの神妙な様子にハクエンは頷く。
「……分かった」
ハクエン局長は振り返るとセッシサン副局長を呼んだ。
「お前も来い」
セッシサンは立ち上がる。サンス副局長とハクエン局長がフロアを出ていく。
「今日夕食もしかしたら遅れるかも」
リゴがシズに耳打ちする。
「何かあったのか? 」
「俺にもまだよく分からない」
リゴはセッシサン副局長と一緒に出ていった。シズは席に戻ると喉を鳴らして紅茶を飲む。
「やばそうだね」
後ろの席のカラミンが呟いた。
「え? 」
カラミンは頬杖をついてリゴ達が出ていた方を見つめていた。
「やばそうな香りがするね……」
最後にセッシサンが入ると部屋の鍵を閉めた。
「何があった?」
ハクエンがサンスに目を向ける。サンスはポケットからハンカチ包んだあれを出すとテーブルに置いた。
「今日の視察でルスカルト君が見つけました」
セッシサンがリゴを見るが、リゴは困惑の表情を浮かべるしか出来なかった。サンスがハンカチの口を解くとそれは姿を見せた。ハクエンは目を見張る。セッシサンはそれを見て舌打ちをした。
「面倒なもん見つけやがって」
「へっ、あ、すいません。見慣れないものだったのでつい」
訳が分からずリゴは慌てて謝った。
「見慣れなくて当然だ。民間人が見つけるよりずっとマシだ」
ハクエンがフォローする。
「そうですね。お手柄ですよ。少し自信なかったんですけど、二人の反応でこれが間違いなく本物だって今確信しました。」
そう笑うサンスにリゴはもう首を捻るしかなかった。
「落ちていたのはこれだけか?」
「周辺にはなかったです。きちんと捜索してないので見逃したかもしれませんが……」
「明日、うちから人をやるか。誰がいいかな、セッシサン」
「オドーの所は今詐欺グループ任せていますからね。カラミンの部隊が妥当じゃないですか? 」
「そうだな」
「あ、あのっ! 」
リゴが手を上げて話を割った。
「俺が拾ったそれはいったい何なんですか? 」
三人がこっちを見る。リゴは緊張に背筋を伸ばした。
「俺は実物を見るのは初めてだ。挿絵でぐらいでしか見たことない」
「ここにいる全員がそうだろう。サンスも知っているのが驚きだ」
「僕は本の虫なんで。セッシサンが知っていたのも僕は驚いてますよ。意外に勉強しているんですね」
「うっせぇ。グリンカ、お前が見つけたこれはな、リボルバーのシリンダーだ」
「リボ? え? シリンダー? 」
聞いたことのない単語にリゴはまた首を捻る。そんなリゴにサンスが優しく答えた。
「銃の部品ですよ」
「これは今まで何もなかった方が不思議ですね」
サンスが苦く零せば、工事担当者もそれに同意した。
「俺にはよく分かりません」
リゴが正直に言った。
「仕方ありませんよ。僕はもう何度もこういう下見には来ていますからね。分からないうちは勉強してください」
「はい」
ヘルメットをかぶり、危険性の度数は高く、着工は出来るだけ早い方がいいだろうという話になった。
「民家が少し離れているのが幸いですが、そのせいでここの危険性に気が付くのが遅れましたね」
サンスが話している横で、リゴは溝に何か落ちているのに気が付いた。しゃがみ込むとそれを手に取る。円柱のような形で、穴が六ケ所貫通している。穴の大きさは同じ、並びも円を描くように均等。リゴは子どもの玩具かと思った。
「ルスカルト君、どうかしました? 」
「いや、見慣れないものが落ちていたので、つい。すいません」
よそ見していたのをリゴは謝った。サンスはリゴの手にあるのを見ると目の色を変えた。すかさずポケットからハンカチを取り出すと広げた。
「ルスカルト君、それをここへ」
「え? 」
「早く! 」
「あ、はい! 」
リゴは言われるがままにハンカチに拾ったそれを置いた。サンスは手早く包むとポケットにしまった。
「このことは誰にも話してはいけませんよ」
「え? 」
「あとで説明します。帰ったら四局長の所へ一緒に来てください」
「サンスさん! こっち見てください! 」
サンスは呼ばれその場から離れた。リゴはただ茫然と立っていた。
午後の街のシズが見回りに行き帰ってくると、リョークとアシスがオドーから何か資料を受け取っていた。
「よく読んでおけよ」
二人が返事をすると、オドーはフロアを出て行く。
「見回りお疲れさん」
すれ違いざまオドーはシズとカザンに声をかけてくれ挨拶を返す。そしてリョーク達の後ろを覗く。
「何か命令か? 」
「ああ」
リョークが資料を高く上げる。
「窃盗グループだってよ」
「窃盗? 」
「ここ最近同じ手口の窃盗が続けざまに五件。全部老人相手」
アシスが呆れた口調で資料に目を通している。
「老人相手にするなんてえげつねぇな」
シズはジャケット椅子にかけると給湯室へ行く。
「お茶入れるけどカザン飲むか? 」
「僕は結構です」
冷たい紅茶を持ってシズが席に戻ろうとすると、リゴとサンス副局長と会った。
「お疲れ様です。もう帰ってきたんっすね」
シズが声をかける。
「ああ、思ったより早く終わったんだよ。それよりハクエン局長いるかな?」
「いると思いますよ」
シズが目をやれば局長席に座っている。
「局長」
シズが呼べば、ハクエンは顔を上げた。
「お客さんですよ」
「サンス」
ハクエンがサンス傍までいく。
「どうかしたか? 」
「少しお時間いいですか、別室で」
サンスの神妙な様子にハクエンは頷く。
「……分かった」
ハクエン局長は振り返るとセッシサン副局長を呼んだ。
「お前も来い」
セッシサンは立ち上がる。サンス副局長とハクエン局長がフロアを出ていく。
「今日夕食もしかしたら遅れるかも」
リゴがシズに耳打ちする。
「何かあったのか? 」
「俺にもまだよく分からない」
リゴはセッシサン副局長と一緒に出ていった。シズは席に戻ると喉を鳴らして紅茶を飲む。
「やばそうだね」
後ろの席のカラミンが呟いた。
「え? 」
カラミンは頬杖をついてリゴ達が出ていた方を見つめていた。
「やばそうな香りがするね……」
最後にセッシサンが入ると部屋の鍵を閉めた。
「何があった?」
ハクエンがサンスに目を向ける。サンスはポケットからハンカチ包んだあれを出すとテーブルに置いた。
「今日の視察でルスカルト君が見つけました」
セッシサンがリゴを見るが、リゴは困惑の表情を浮かべるしか出来なかった。サンスがハンカチの口を解くとそれは姿を見せた。ハクエンは目を見張る。セッシサンはそれを見て舌打ちをした。
「面倒なもん見つけやがって」
「へっ、あ、すいません。見慣れないものだったのでつい」
訳が分からずリゴは慌てて謝った。
「見慣れなくて当然だ。民間人が見つけるよりずっとマシだ」
ハクエンがフォローする。
「そうですね。お手柄ですよ。少し自信なかったんですけど、二人の反応でこれが間違いなく本物だって今確信しました。」
そう笑うサンスにリゴはもう首を捻るしかなかった。
「落ちていたのはこれだけか?」
「周辺にはなかったです。きちんと捜索してないので見逃したかもしれませんが……」
「明日、うちから人をやるか。誰がいいかな、セッシサン」
「オドーの所は今詐欺グループ任せていますからね。カラミンの部隊が妥当じゃないですか? 」
「そうだな」
「あ、あのっ! 」
リゴが手を上げて話を割った。
「俺が拾ったそれはいったい何なんですか? 」
三人がこっちを見る。リゴは緊張に背筋を伸ばした。
「俺は実物を見るのは初めてだ。挿絵でぐらいでしか見たことない」
「ここにいる全員がそうだろう。サンスも知っているのが驚きだ」
「僕は本の虫なんで。セッシサンが知っていたのも僕は驚いてますよ。意外に勉強しているんですね」
「うっせぇ。グリンカ、お前が見つけたこれはな、リボルバーのシリンダーだ」
「リボ? え? シリンダー? 」
聞いたことのない単語にリゴはまた首を捻る。そんなリゴにサンスが優しく答えた。
「銃の部品ですよ」
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