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学校編
ベグテクタでお別れ
しおりを挟む遠い遠い昔。この世界のどこかのおはなし。
あるところにリチというお姫様がいました。リチ姫は王子と結婚をしてこの国にやってきました。リチ姫は毎日花を眺めるために城の花園を散歩していました。
ある日、リチ姫がいつものように花園を散歩していると何かに躓きました。見れば銀にきらきらと光り何かが動いていました。そしてその何かは顔を上げるとリチ姫はその美しさに息を飲みました。それが銀の妖精とリチ姫のはじめての出会いでした。
妖精は迷子になっていました。いつもは綺麗な泉に住んでいるとリチ姫に話しました。少し冒険をしようと遠くまで飛んできて迷子になり疲れて寝てしまったと話しました。親切なリチ姫は妖精を泉まで連れていってあげる約束をしました。リチ姫は付き人にこの辺りに綺麗な泉はどこにあるかと聞きました。すると付き人はこの城に美しい泉がありますと言って、リチ姫を案内しました。そしてそこが妖精の住処だったのです。そこの泉は透き通る水色をしていてそれはそれは美しい泉でした。
それからティー姫は毎日妖精に会いに行きました。妖精も毎日会いに来てくれるリチ姫が大好きになりました。そして心を通わせるようになったのです。
そのうち妖精に変化が生まれました。妖精は日に日に大きくなっているのです。気が付けばリチ姫よりも大きくなっていました。そしてもうひとつ、妖精は魔法を使えるようになっていました。その魔法はとても恐ろしいものでした。リチ姫はだんだん不安になりました。なにかとても怖いことが起きるかもしれないと思ったのです。
そしてある日王子に妖精が見つかってしまいました。リチ姫は大事な友人だから殺すことはしないで欲しいと何度もお願いしました。王子はその願いを受け入れました。けれど本当はとても恐ろしいことを考えていました。
王子はやっつけたい国がありました。あまりその国となかよくはなかったのです。王子は妖精がそれに利用できないかと考えたのです。王子は妖精がリチ姫を愛していることを知りそれを利用しようと考えました。
王子はリチ姫をその国に旅行に行かせました。これからは仲良くしたいから君にも協力して欲しいと。何も知らないリチ姫は喜んで引き受け、その国に出かけました。
それから三日経つと王子は焦った様子で妖精のいる泉に駆け込みいいました。リチが旅行先で殺されてしまった。騙されたんだと崩れ落ちました。妖精は顔を真っ赤にするとその国へ飛んで行きました。怒り狂った妖精は、その国に悪い魔法をかけてしまいました。人々は叫び苦しみます。
街の様子に気が付いたリチ姫はその仕業は妖精のせいだとすぐに分かりました。リチ姫は城の屋上に行くと妖精を呼びました。何度も何度も呼びました。それでも気が付いてくれません。リチ姫は泣きだしました。泣き叫び妖精を呼ぶと妖精は我に返りました。そして一目散にリチ姫の所へ来ました。そして妖精は自分が王子に騙されたことを知りました。妖精は涙を流しとんでもないことをしてしまったと謝りました。リチ姫はこのまま二人でどこかへ逃げようと言いました。妖精は首を横に振り帰るべきところへ帰ると言いました。そして空遠くに飛んで行きました。そしてリチ姫も消えてしまいました。その二人がどうなったか、誰も知らないそうです。
「そこで終わり? 」
「そうだ。私も同じ事を言った。その国は、王子はどうなったのだと。そうしたらいつか私にも分かる日が来ると言われた」
大人になったら分かるってことか? 妖精が王子殺したとか? シズは考える。
「けどこれは秘密のおとぎ話だそうだ。本当に信頼している者にしか聞かせてはいけないと言われた」
そんな話に、シズは思えなかった。シンデレラ的な話と同じように聞こえた。唐突に終わるし、おとぎ話にしても少し雑だ。
「誰にも話してはいけないぞ」
「分かってますって」
「無論お前の秘密も話さない」
「信用してます」
「ここでしたが、王子」
声をする方を見ると、ブルーのベグテクタの城人の制服を着た男が立っていた。
「アペーテ」
サファ王子が苦い顔をして男を呼んだ。アペーテは赤ワイン色に似た色の髪を七三に分けて目も口も鼻も細かった。けれどどこか色気がある男だった。
「今回は手を焼きました。共犯者がいたとはね」
アペーテはじろりとシズを見た。
「すいません」
シズは頭を下げた。
「この者は私に付き合ってくれただけだ。おかげで楽しい時間を過ごせた。帰って勉強するよ」
サファ王子がベンチからおりる。そしてシズを振り返った。
「それでは今日はありがとう。いい思い出ができた。無事に帰れることを願っている」
そう微笑むと、サファ王子はアペーテの後ろにいた何人かの付き人のところへ行った。あっさりしたお別れだ。
「うちの王子の戯れに付き合って頂きありがとうございます。心配しなくても、無事に帰れますよ。私が案内します」
「え? あ、はい」
王子が言ったのは元の世界に無事帰れるようという意味だ。シズが少し笑えばアペーテが怪訝そうにしていた。
温室を出てアペーテが城まで連れて行ってくれた。
「あなた、シズ・カンダさんですよね?」
「え? なんで、知ってるんですか? 」
「引率のセドニさんからあなたが見当たらないと報告がありました」
「あー」
シズが苦笑いする」
「ちょっとだけ焦っていたように見えましたよ」
「焦る? 」
シズが聞き返す。
「ええ。あまり困らせては駄目ですよ。捜すのは大変なんですから」
その言葉にアペーテの日々の大変さが出ていた。心の中で頑張れとシズは言っておいた。シズは城に戻るとセドニにねちねち言われ、次の日、バリミアとの買い物巡り地獄に落ち、へとへとになってアベンチュレへと帰った。
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