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学校編
視線と帰省
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三人で食堂に行き夕食を食べ終え着替えると、シズはランニングに出かけた。城の門を出て広場を走る。シズは学校にいくようになって身体は明らかに変わったし体力もすこぶるついた。やっぱり自己流よりもちゃんとしたところで訓練をすると違うとシズは実感した。
シズは視線を右に向ける。後ろは向かず走り続ける。シズが気が付くようになったのは先月ぐらいからだ。実際はいつからかは知らないが、シズはここいらずっと誰かに見られている。訓練のおかげそういうことに気が付くようになったのだとシズは思っている。街に出ると、つけたられたりする気配を敏感に感じる。学校生活の中でも視線を感じることは、ほぼ毎日だ。
シズは見られる理由に思い当たるのはカーネス関連しかない。けどそれならなぜ城の中でも視線を感じるのかと、シズは考える。思い当たる人物はひとりだった。
「私、バリミア達と駅に行くけど途中まで一緒に行く?」
トランクに服を詰めながらアシスが聞いてきて、シズは行くと返事をした。トランクにシズも荷物を詰めるがアシスに比べるとすかすかだった。
「シズ、部屋のドアないから貴重品も持っていきなよ。鍵がかからない部屋ってこういう時不便ね」
「お前がいうか」
ドア壊した張本人にシズは文句を言う。荷物をまとめ部屋を出ると寮の入り口にバリミアとリョーク、リゴがいた。
「お待たせ。シズも途中まで一緒にくるって」
「あら、お見送りしてくれるの?」
バリシアが喜ぶ。
「駅まで行かねぇぞ」
「あら、冷たい」
バリシアはくすくす笑いながら歩き出す。
「カンダは里帰り近くていいね」
リゴがこれから乗る混んだ列車を想像してか羨ましそうにした。
「近すぎるのもつまらないよ」
「はは。それもそうかもね」
リゴが笑う。
「まあ、座れる席があればいいけどよ」
リョークはトランクを振り上げると背中にせおった。それからみんなの郷土料理について聞い、てお土産よろしくと伝えてシズは皆と別れた。そして仮の家に戻った。
「シズ!たくましくなったな!」
キミドリアパートに戻ると久しぶりのジャモンが抱きしめてきた。抱かれ心地が良くなっている。シズはジャモンのお腹をつまんだ。
「お腹大きくなった?」
ジャモンは微笑んでお腹を叩いて揺らした。
「優しさが詰まっているからね」
「ただのメタボだろ。現実見ようぜ」
ジャモンは少しショックを受けたようで、ウォーキング始めると言った。夕飯にオヤコドンをまた作ってくれた。今回は少し中華風だったがそれも美味しかった。オヤコドンを食べながら、シズは九十七期生の集合写真の中に自分と同じ顔がいたことをジャモンに話した。
「九十七期生の悲劇は知っているよ。とても大きな事件だったからね。けどその事件生存者はゼロじゃなかったかい?」
「そうなんだよ。それでこっちと私の世界では三年の時差があるのかと思ったけどどう思う? 」
ジャモンは唸って考えるとそれは微妙だなと言った。
「微妙? 」
「その九十七期生の写真に写っていたのがシズのドッペルゲンガーだと仮定したら、そのドッペルゲンガーはまだ学生だ。まだ城人ではない」
「うん」
「けどシズが会ったドッペルゲンガーは城人の制服を着ていたんだろう?」
「ああ! 」
そうだ。なんでそこに気が付かない。さすが馬鹿だと、シズは落ち込む。
「けどじゃあ、」
「実は生き残っていたとか?」
ジャモンが声を小さくして、言った。
「けど死体はちゃんと人数分見つかったってバリミアが言ってた」
「国の力を使えば誤魔化しようはあるよ」
九十七期生の悲劇は国も絡んでいる。国じゃなくても何か大きな力が関わっている。カザンが言っていたことをシズは思い出す。あのドッペルゲンガーはその大きな力の一部なのだろうかとシズは考えた。
「シズは、学校生活の中で城人さんと会うことはあるかい? 」
「まあ。教官も城人だし、城の中歩いてれば結構すれ違ったりはする」
「誰にも声はかけられなかったかい? 」
「いや」
シズが首を横に振る。ジャモンは難しい顔をした。
「やっぱりおかしいね。城人の制服着ていたのならドッペルゲンガー並みのそっくりシズを見て驚くことも話かけてくる人がいないなんて」
シズもそれは思っていた。城で暮らすようになって誰か自分に驚かないか期待していたが、今のところない。
「実は城人じゃない、とかねぇよな? 」
それなら学校に入った努力がぱあだ。
「それはなんとも言えないけど……。気が付いていても声をかけられないとか?」
「なんで?」
シズが首を傾げる。
「なんでだろうね」
それ以上はジャモンも降参らしく、話はそこで終わった。
夜になり柔軟体操をすると、シズはいつものようにランニングに出かけた。年の瀬が近いせいか夜のわりに人は多くいた。その間をすり抜ける。そして意識をすれば私を追いかける視線を察する。走るスピードを上げ、いつもより走る距離を短くした。曲がり角を何度も曲がりキミドリアパートに駆け込むと、シズは部屋に戻った。
「あれ、早いね」
ジャモンに返事することなく、シズは窓の傍までいくとカーテンを浮かし窓の外を見る。髪の色、服装は良く分からないが知っている横顔が街角に消えた。
「カル・セドニ……」
城の中で感じる視線。唯一シズの顔を見て反応した城人。答えはこんなに近くにあるのにシズはドッペルゲンガーの名前ひとつ知れない。セドニを崩すためには今の状況では直接は厳しい。他にいい方法をこの長期休暇の間に練らないといけないとシズは思った。
シズは視線を右に向ける。後ろは向かず走り続ける。シズが気が付くようになったのは先月ぐらいからだ。実際はいつからかは知らないが、シズはここいらずっと誰かに見られている。訓練のおかげそういうことに気が付くようになったのだとシズは思っている。街に出ると、つけたられたりする気配を敏感に感じる。学校生活の中でも視線を感じることは、ほぼ毎日だ。
シズは見られる理由に思い当たるのはカーネス関連しかない。けどそれならなぜ城の中でも視線を感じるのかと、シズは考える。思い当たる人物はひとりだった。
「私、バリミア達と駅に行くけど途中まで一緒に行く?」
トランクに服を詰めながらアシスが聞いてきて、シズは行くと返事をした。トランクにシズも荷物を詰めるがアシスに比べるとすかすかだった。
「シズ、部屋のドアないから貴重品も持っていきなよ。鍵がかからない部屋ってこういう時不便ね」
「お前がいうか」
ドア壊した張本人にシズは文句を言う。荷物をまとめ部屋を出ると寮の入り口にバリミアとリョーク、リゴがいた。
「お待たせ。シズも途中まで一緒にくるって」
「あら、お見送りしてくれるの?」
バリシアが喜ぶ。
「駅まで行かねぇぞ」
「あら、冷たい」
バリシアはくすくす笑いながら歩き出す。
「カンダは里帰り近くていいね」
リゴがこれから乗る混んだ列車を想像してか羨ましそうにした。
「近すぎるのもつまらないよ」
「はは。それもそうかもね」
リゴが笑う。
「まあ、座れる席があればいいけどよ」
リョークはトランクを振り上げると背中にせおった。それからみんなの郷土料理について聞い、てお土産よろしくと伝えてシズは皆と別れた。そして仮の家に戻った。
「シズ!たくましくなったな!」
キミドリアパートに戻ると久しぶりのジャモンが抱きしめてきた。抱かれ心地が良くなっている。シズはジャモンのお腹をつまんだ。
「お腹大きくなった?」
ジャモンは微笑んでお腹を叩いて揺らした。
「優しさが詰まっているからね」
「ただのメタボだろ。現実見ようぜ」
ジャモンは少しショックを受けたようで、ウォーキング始めると言った。夕飯にオヤコドンをまた作ってくれた。今回は少し中華風だったがそれも美味しかった。オヤコドンを食べながら、シズは九十七期生の集合写真の中に自分と同じ顔がいたことをジャモンに話した。
「九十七期生の悲劇は知っているよ。とても大きな事件だったからね。けどその事件生存者はゼロじゃなかったかい?」
「そうなんだよ。それでこっちと私の世界では三年の時差があるのかと思ったけどどう思う? 」
ジャモンは唸って考えるとそれは微妙だなと言った。
「微妙? 」
「その九十七期生の写真に写っていたのがシズのドッペルゲンガーだと仮定したら、そのドッペルゲンガーはまだ学生だ。まだ城人ではない」
「うん」
「けどシズが会ったドッペルゲンガーは城人の制服を着ていたんだろう?」
「ああ! 」
そうだ。なんでそこに気が付かない。さすが馬鹿だと、シズは落ち込む。
「けどじゃあ、」
「実は生き残っていたとか?」
ジャモンが声を小さくして、言った。
「けど死体はちゃんと人数分見つかったってバリミアが言ってた」
「国の力を使えば誤魔化しようはあるよ」
九十七期生の悲劇は国も絡んでいる。国じゃなくても何か大きな力が関わっている。カザンが言っていたことをシズは思い出す。あのドッペルゲンガーはその大きな力の一部なのだろうかとシズは考えた。
「シズは、学校生活の中で城人さんと会うことはあるかい? 」
「まあ。教官も城人だし、城の中歩いてれば結構すれ違ったりはする」
「誰にも声はかけられなかったかい? 」
「いや」
シズが首を横に振る。ジャモンは難しい顔をした。
「やっぱりおかしいね。城人の制服着ていたのならドッペルゲンガー並みのそっくりシズを見て驚くことも話かけてくる人がいないなんて」
シズもそれは思っていた。城で暮らすようになって誰か自分に驚かないか期待していたが、今のところない。
「実は城人じゃない、とかねぇよな? 」
それなら学校に入った努力がぱあだ。
「それはなんとも言えないけど……。気が付いていても声をかけられないとか?」
「なんで?」
シズが首を傾げる。
「なんでだろうね」
それ以上はジャモンも降参らしく、話はそこで終わった。
夜になり柔軟体操をすると、シズはいつものようにランニングに出かけた。年の瀬が近いせいか夜のわりに人は多くいた。その間をすり抜ける。そして意識をすれば私を追いかける視線を察する。走るスピードを上げ、いつもより走る距離を短くした。曲がり角を何度も曲がりキミドリアパートに駆け込むと、シズは部屋に戻った。
「あれ、早いね」
ジャモンに返事することなく、シズは窓の傍までいくとカーテンを浮かし窓の外を見る。髪の色、服装は良く分からないが知っている横顔が街角に消えた。
「カル・セドニ……」
城の中で感じる視線。唯一シズの顔を見て反応した城人。答えはこんなに近くにあるのにシズはドッペルゲンガーの名前ひとつ知れない。セドニを崩すためには今の状況では直接は厳しい。他にいい方法をこの長期休暇の間に練らないといけないとシズは思った。
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