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学校編

買い物

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 目的の本屋に向かいながらバリミアの買う教材リストを見せて貰った。
「うわっ。めっちゃある」
 アカクラスに比べるとアオクラスは準備する本が三倍はあった。
「本当はもう少し早めにきて読んでおきたかったんだけどね」
「熱心ですな」
 シズ達は本屋にいって予約していた本を受け取る。シズはバリミアのも半分持ってあげて、店を出ようとするとドアがあいた。
「あ」
 シズとリョークの声がかぶった。
「お前はシズ・カンダ!」
「フルネームでどうも。リョーク・クド。ってか、お前も受かったんだ」
「あったりまえだろ」
 リョークはシズの頭から足までじろじろ見た。言いたいことはだいたい分かる。
「どんだけ見ても女だよ」
 リョークは図星され頬を引き攣らせた。
「リョークが勝手にライバル視してた例の」
 リョークの横には見知らぬ人がいた。リョークより若干背は低く、こげ茶の髪はすっきりと整えられている。心持ち垂れ目なせいか目つきの悪いリョークが隣いるせいかとても優しい顔つきをしていた。
「どちらさま?」
 バリミアが聞いてきた。シズはリョークを指さす。
「こいつは私と同じアカクラスになる奴だ。隣は、」
「リゴ・ルスカルト。リョークとは同郷なんだ。幼馴染って奴。ちなみにクラスはキイロ」
 リゴ・ルスカルトは自己紹介をするとよろしくねと優しい笑みを浮かべた。するとバリミアはねえ! と声を上げた。
「この後時間あるならお茶しない? 」
「します! 」
 リョークは頬を少し赤く染めてぴしっと右腕を上げた。それをシズとリゴは冷ややかな目で見ていた。

 本屋の近くちょうどカフェがあり四人で入った。シズはソーダ水を注文した。喉が渇いていたのかグラスの半分を一気に飲んだ。そしてリョークがシズのことを男と勘違いしてガンつけてきた話をシズとリゴがすればバリミアは大笑いをした。
「私もはじめて会った時男だと思ってナンパされたと思ったのよね」
「そうなのか!やっぱり俺はおかしくなかった」
「うるせぇ」
 ストローから口を離すとシズは呆れる。
「昼食べてる時もさ、カンダの姿見てめっちゃ睨んでたもんな。あからさますぎて俺止めたよ」
 リゴが苦笑する。シズはリゴの足元にあった本の詰まった紙袋を見る。
「キイロクラスも結構教材多いな」
「アオクラスほどじゃないよ。けどまあ、受かったのは嬉しいけど色々不安もあるよな」
「そうよね。寮生活だし」
 バリミアがリゴに同意する。
「そうか?俺は楽しみしかないぜ」
「リョークは単純だもんな」
「なんだと! 」
 リョークはいつの間にか頼んでいたナゲットを食い散らかしながら叫んだ。
「食べるときは口を閉じろよ汚いな。まあけど、山籠もり研修はないからそこは気持ち的に楽だよな」
 山籠もり研修。そんな修行僧的な事やってたんだとシズは思った。
「九十七期生の悲劇ね」
「なにそれ」
 シズが聞けば三人が驚いた顔をシズにやった。
「でた。元引きこもりの無知識」
 バリミアがそう言えば、リゴがそうなのとまた驚いた。
「病弱の引きこもりだったの。めっちゃ山奥住んでたらしいから」
 シズが弁解した。
「らしいってなんだよ」
 しまった、とシズは焦る。
「住んでたの。住んでた住んでた」
 リョークはシズの適当な弁解を気にせず、今とギャップあり過ぎるだろと零した。バリミアがシズに説明する。
「私達が百期生でしょ。だから三年前。三年前まで入学してすぐ山籠もり研修っていうのがあったの。協調性を高めるためにね。けど大規模な大火事が起こってね。それで引率いった教官も含めて全員亡くなったの」
「全員!? 」
 シズは驚く。まさに悲劇だ。
「それに九十七期生って前例に稀をみない天才集団だったらしいんだよ。有望な人材を失ってしまったっていうこともあって『九十七期生の悲劇』って言われてるんだよ」
 リゴがバリミアの説明に補足する。
「その火事の原因はなんだったんだ? 」
 シズが聞いた。
「それは今も確かなことは分からない。事故だと言われてるし、故意かもしれないって。山賊のせいかもっていう噂もある」
 バリミアが静に教える。山賊とかいるのかよ。じゃあ海賊とかもいるのかな、とシズは考える。シズがふとカフェの窓から外を見るとこのクソ暑いのにエンジのブレザーを着たヨンキョクが巡回していた。
「ヨンキョクになったらあんな暑苦しい恰好で歩かなきゃいけないのか」
 シズの目線の先をリョークが見る。
「夏仕様とかになってんじゃないのか? 」
「だといいけど。ヨンキョクって他の城人と制服違うんだな」
「何言ってんだよ。あのエンジの制服は門番する時とか巡回する時だけだ。民衆からヨンキョクだって見分けがつくように。城の中じゃ他の城人と同じ黒い制服着てんぞ」
「そうなんだ」
 警察だから他の城人と見分けがつかないと助けを求める時とか困るよな、とシズは納得する。
「お前本当に知らないこと多すぎるぞ」
 ガハハと笑うリョークに腹が立ち、シズはナゲットを横取りしてやった。
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