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学校編
入学試験(昼休憩)
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アベンチュレ青少年学校右棟二階。「アベンチュレ青少年学校入学試験会場」と書かれた張り紙が教室の入り口にでかでかと貼ってあった。シズとバリミアと教室に入る。
「座席表前にあるわ」
バリミアは座席表が貼られた黒板の前で鞄から受験票を出して確かめた。
「アオクラスは入り口側。アカクラスは窓際みたいよ」
「おお、ありがと」
シズの席は一番窓際の後ろから二番目だった。
「どうにか受かるのを信じてるわ」
バリミアはシズに微笑みかけると自分の席へ行った。マークシートとかならどうにかなるかもと考えながら、シズも席に向かう。予想通りというか、アカクラス志望者の列は見事にむさ苦しい男ばかりだった。
「服どうしたんですか?」
キャメル色の猫毛の男が大きい瞳をシズに向けて尋ねてきた。そしてインクで汚した服に視線を落とした。
「ちょっとね」
「アカクラスなら午後実技ですよね?運動着に着替えたらどうですか?」
おせっかいな奴だとシズは思った。
「そうだな」
着替える気なんてないが、シズは適当に流して男の横を通り過ぎた。シズは自分の席の後ろを見るとそこには女子がいた。ブロンドヘアの眉上ぱっつんのボブ。周りをシズが見渡すとアカクラス受験者の女子はこの子と自分だけのようだった。女子は私ひとりじゃなかったようだとシズは思った。シズは席に座り鞄を漁る。筆箱だけを出して鞄は机の横に置いた。どうしようか。神様にでも祈るしかないか。けど、この世界には神様いないんだよな。冷静に考えるとこれは普通に落ちるとシズは現実を受け止めようとする。身体能力重視でも筆記0点だったら落ちる。シズはインクで汚した服を見下ろす。その時教室のドアが開く音がした。シズは反射的に顔を上げる。そして口の中で舌打ちをした。
「筆記用具以外しまえ」
セドニだ。周りが机の上を片付ける。シズはセドニをじっと睨んだ。シズの目線に気がついたか。セドニはシズを見やったがすぐに目をそらした。インクで黒くなった服をシズは握りしめる。意地でも城人になってやるって決めたのに。カッコ悪い。けど、馬鹿なりの意地を見せてやるとシズは決めた。
時間は二時間。問題用紙と答案用紙が裏返したまま配られる。セドニの他に試験官は四人いた。シズの後ろまで配り終えると近くにいた試験官が手を上げる。
「それでは、はじめ」
紙をめくる音が響く。
問一.四ヵ国条約をすべて書きなさい。(三点)
シズは心の中でガッツポーズをした。そして、ジャモンに感謝した。神を創らない。戦機・武器・兵力を持たない。信頼を持ち合う。心配したよりいけるかもしれない。シズは気分は上がった。すぐに二問目に取り掛かった。
「どうだった?」
試験が終わった後席から動かない私のところにバリミアがきた。私は黙ったままバリミアを見た。そして手で顔を覆った。
「まあ、そうでしょうね」
シズは一問目以外ちんぷんかんぷんだった。選択問題はあみだくじで決めた。どうにもならなかった。バリミアが私の肩を叩く。
「まだ落ち込むのは早いわよ。午後があるでしょう。ほら、お昼一緒にいきましょう。あなたもどう? 」
バリミアは私の後ろの女子も誘った。
「別にいいけど」
素っ気ない返事だったが、断ってはこなかった。
「食堂は地下だって。行こう」
バリミアはシズの鞄を持って急かす。シズはため息を零した。ご飯食べて気持ち切り替えようとシズは席を立ち、バリミアとぱっつんブロンドの後ろを付いていく。すると殺気を感じて振り返る。グレーの短髪男がじっとシズを睨んでいた。シズは前に向き直り首を傾ける。
ブロンドぱっつんは名前をアシス・ローズと名乗った。歳は十七だという。シズ達はフーメンを頬張りながらお互い自己紹介をした。
「女なんだ」
アシスは一重の瞳でシズをみた。口調も表情も驚いている様子はなかった。
「シズは男だったらきっとモテモテね。おしいことしたわ」
バリミアはシズをからかい笑った。
「へいへい、そりゃ残念」
シズは適当に流す。
「アシスはペタの人?」
バリミアが尋ねる。
「違う。セレス月海の方」
「げっかい?」
シズは丼を下げてアシスに聞く。アシスは少し驚いた顔をした。
「シズまさか月海分からないの?」
「分からない」
素直に言えばバリミアは絶句した。
「私、引きこもりだったから」
シズは自分をフォローするとバリミアは仕方ないという感じで説明してくれた。
「島、弓なりの形してるでしょ。その内側が月海、外側が日海っていうの。五歳児でも知ってるわよ」
この世界じゃ赤子同然なので。カーネス言われたことをシズは心の中で言い訳に使った。
「バリミアはどこから?」
「インカロ。ペタの隣。アシスはかなり遠くから来てるのね」
「まあね」
アシスが頷く。
「私そろそろいく」
シズはふたりの会話を遮り席を立つ。
「まだ時間結構あるよ」
アシスが時計を見る。
「準備体操には時間をかけるタイプなんだ。じゃあまたあとで」
シズは食べた食器を返却口に返しにいくとまた殺気を感じて振り返る。その殺気はさっきと同じ男が出していた。眉間に深々と皺をつくり、眼光ギラギラでシズを睨み上げてくる。彼の友達らしき人がやめろ、と注意しても頑固にシズを睨んできた。首を傾げながら、シズは食堂を出る。
「座席表前にあるわ」
バリミアは座席表が貼られた黒板の前で鞄から受験票を出して確かめた。
「アオクラスは入り口側。アカクラスは窓際みたいよ」
「おお、ありがと」
シズの席は一番窓際の後ろから二番目だった。
「どうにか受かるのを信じてるわ」
バリミアはシズに微笑みかけると自分の席へ行った。マークシートとかならどうにかなるかもと考えながら、シズも席に向かう。予想通りというか、アカクラス志望者の列は見事にむさ苦しい男ばかりだった。
「服どうしたんですか?」
キャメル色の猫毛の男が大きい瞳をシズに向けて尋ねてきた。そしてインクで汚した服に視線を落とした。
「ちょっとね」
「アカクラスなら午後実技ですよね?運動着に着替えたらどうですか?」
おせっかいな奴だとシズは思った。
「そうだな」
着替える気なんてないが、シズは適当に流して男の横を通り過ぎた。シズは自分の席の後ろを見るとそこには女子がいた。ブロンドヘアの眉上ぱっつんのボブ。周りをシズが見渡すとアカクラス受験者の女子はこの子と自分だけのようだった。女子は私ひとりじゃなかったようだとシズは思った。シズは席に座り鞄を漁る。筆箱だけを出して鞄は机の横に置いた。どうしようか。神様にでも祈るしかないか。けど、この世界には神様いないんだよな。冷静に考えるとこれは普通に落ちるとシズは現実を受け止めようとする。身体能力重視でも筆記0点だったら落ちる。シズはインクで汚した服を見下ろす。その時教室のドアが開く音がした。シズは反射的に顔を上げる。そして口の中で舌打ちをした。
「筆記用具以外しまえ」
セドニだ。周りが机の上を片付ける。シズはセドニをじっと睨んだ。シズの目線に気がついたか。セドニはシズを見やったがすぐに目をそらした。インクで黒くなった服をシズは握りしめる。意地でも城人になってやるって決めたのに。カッコ悪い。けど、馬鹿なりの意地を見せてやるとシズは決めた。
時間は二時間。問題用紙と答案用紙が裏返したまま配られる。セドニの他に試験官は四人いた。シズの後ろまで配り終えると近くにいた試験官が手を上げる。
「それでは、はじめ」
紙をめくる音が響く。
問一.四ヵ国条約をすべて書きなさい。(三点)
シズは心の中でガッツポーズをした。そして、ジャモンに感謝した。神を創らない。戦機・武器・兵力を持たない。信頼を持ち合う。心配したよりいけるかもしれない。シズは気分は上がった。すぐに二問目に取り掛かった。
「どうだった?」
試験が終わった後席から動かない私のところにバリミアがきた。私は黙ったままバリミアを見た。そして手で顔を覆った。
「まあ、そうでしょうね」
シズは一問目以外ちんぷんかんぷんだった。選択問題はあみだくじで決めた。どうにもならなかった。バリミアが私の肩を叩く。
「まだ落ち込むのは早いわよ。午後があるでしょう。ほら、お昼一緒にいきましょう。あなたもどう? 」
バリミアは私の後ろの女子も誘った。
「別にいいけど」
素っ気ない返事だったが、断ってはこなかった。
「食堂は地下だって。行こう」
バリミアはシズの鞄を持って急かす。シズはため息を零した。ご飯食べて気持ち切り替えようとシズは席を立ち、バリミアとぱっつんブロンドの後ろを付いていく。すると殺気を感じて振り返る。グレーの短髪男がじっとシズを睨んでいた。シズは前に向き直り首を傾ける。
ブロンドぱっつんは名前をアシス・ローズと名乗った。歳は十七だという。シズ達はフーメンを頬張りながらお互い自己紹介をした。
「女なんだ」
アシスは一重の瞳でシズをみた。口調も表情も驚いている様子はなかった。
「シズは男だったらきっとモテモテね。おしいことしたわ」
バリミアはシズをからかい笑った。
「へいへい、そりゃ残念」
シズは適当に流す。
「アシスはペタの人?」
バリミアが尋ねる。
「違う。セレス月海の方」
「げっかい?」
シズは丼を下げてアシスに聞く。アシスは少し驚いた顔をした。
「シズまさか月海分からないの?」
「分からない」
素直に言えばバリミアは絶句した。
「私、引きこもりだったから」
シズは自分をフォローするとバリミアは仕方ないという感じで説明してくれた。
「島、弓なりの形してるでしょ。その内側が月海、外側が日海っていうの。五歳児でも知ってるわよ」
この世界じゃ赤子同然なので。カーネス言われたことをシズは心の中で言い訳に使った。
「バリミアはどこから?」
「インカロ。ペタの隣。アシスはかなり遠くから来てるのね」
「まあね」
アシスが頷く。
「私そろそろいく」
シズはふたりの会話を遮り席を立つ。
「まだ時間結構あるよ」
アシスが時計を見る。
「準備体操には時間をかけるタイプなんだ。じゃあまたあとで」
シズは食べた食器を返却口に返しにいくとまた殺気を感じて振り返る。その殺気はさっきと同じ男が出していた。眉間に深々と皺をつくり、眼光ギラギラでシズを睨み上げてくる。彼の友達らしき人がやめろ、と注意しても頑固にシズを睨んできた。首を傾げながら、シズは食堂を出る。
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