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学校編
七副局長との再会
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朝、シズは一時間近くかけて柔軟体操をする。
「喧嘩ってパンチの強さとか、瞬発力とか握力があった方がいいとか色々いうけど、俺は粘りが大事なんだと思うんだよ。一発で相手倒せるなんて滅多にねぇからな。粘り勝ちだ。粘るってことは決着まで時間がかかるってこととイコールだ。だから殴られる。だから、受け身が大事だ。けどやっぱ咄嗟にちゃんとした受け身がとれないことってあるだろ? そういう時のために身体は柔らかい方がいいんだ。怪我をするリスクが低くなる。お前がいくら男勝りだっていっても身体のつくりは,女だ。それですげぇ不利なんだよ。だから身体ぐらいフラゲになれ」
カケルはクラゲみたいになれと言いたかった。勝利をフライングゲットとか言いたかったのかもしれないこともない。どっちにしろシズもカケルも頭は基本的に馬鹿だった。この話をしたのは中学の頃だ。珍しくカケルが真面目に話して、シズも一理あるなと素直に受け取り授業中退屈になれば、柔軟体操をしていた。そのせいか体育以外オール1だった。1番は嫌いじゃないから、シズは気にしてはいない。
ヨンキョクになるための試験、バリミアの話じゃ女子はほぼいないと考えていた方がよさそうだとシズは考えた。
女は男に比べてすげぇ不利。どう頑張っても、どうにもならない違いをカバーするにはできることで男との差を縮めることだ。そう考え、シズは柔軟に力をいれるようになった。そしてシズの強みはやっぱり足だ。しっかり柔軟体操をしたあと、消化の良い朝御飯を食べ一時間以上走りにいく。身体がしっかりしていく自覚がシズは徐々に大きくなっていく。
「お前、どういうつもりだ」
ランニングから戻ってくるとキミドリアパートの入り口に怖い顔したセドニが立っていた。前と同じ漆黒の軍服を着ている。
「あんたこそどうしたんだよ」
上がった呼吸を整えながらシズ言うと、セドニはこっちへどすどす歩いてきた。
「なぜヨンキョクになりたいんだ? 」
「え、なんで知ってんだよ」
「俺は今回試験官をする。書類を見ていたらお前のものがあった」
「あんた試験官なの?マジで?じゃあ私のことちょいっと受からせてよ」
「ふざけるな」
ちっっと、シズは舌打ちをして、怠そうにズボンのポケットに手を入れた。
「別にいいじゃねぇかよ。心機一転ちゃんと働こうって、こう必死に輝く若者が希望を持って、こう努力してんだよ。今だって私、超走ってきたよ。結構なハイペースで」
セドニは黙ったままシズを見下ろす。シズはわざとため息を吐いて頭を掻いた。
「あんたそんなこと聞くために朝っぱらここまできたの? 」
「お前はなぜヨンキョクになりたいんだ? 」
セドニはシズの質問を無視する。
「ジャモンがやってみろって」
「ジャモンって、お前の保護者のか? 」
「ああ」
堅物が信じてくれそうな事実をシズは話した。
「私運動神経いいからさ。ジャモンが受けてみろって。私ずっと引きこもりだったからよ」
嘘のこっちの事実を話す。シズは女優な気分だった。
「プー太郎のままでいられないだろう? 」
セドニは忌々しい表情を浮かべるとシズを力強く指さした。
「受けたければ受ければいい」
なんでお前にそんなこと言われなければならない、とシズは苛立った。
「けど俺はお前を確実に落とす」
橋から飛び降りたのが受験にそんなにネックになるのかよ。そう、シズは思って、納得した。七局でエリート。自分を落とすなんて簡単にできるかもしれない、とシズは焦る。
「私、更生しましたよ」
自分で言ったが、シズは自分が自分でめちゃくちゃ胡散臭かった。これじゃあ焼け石に水だ。セドニの顔は真顔のままだ。焼け石にガスバーナー。
「私もうヨンキョクになるしかないんだよ」
「そうだとしても落とす」
「引きこもりだったって言っても家の中で超身体鍛えてたから。超アクティブな引きこもりだから体力も身体もしっかりしてる」
「それでも落とす」
「ほらこんなに柔らかいよ。クラゲみたいだろ」
シズは身体を前に倒して掌を地面につける。
「そうだな。でも落とす」
「さっきから落とす落とすってお前は漂白剤か! 」
シズは起き上がり叫んだ。
「分かったよ! 成績残せばいいんだろ! お前が落とせないぐらいの好成績見せてやるよ!! 」
シズは宣言してやった。落ちるわけにはいかない。
「悪いが、落とす」
宣言はセドニの胸に届かなかった。セドニを抜かし、シズは立ち去る。
「おい」
呼び止めれ、シズは立ち止まった。セドニは試験の前にわざわざここまできて試験を落とすなんていいにきた。シズはそれが違和感で仕方なかった。
「なんでそんなに私を落としたいんだよ。なにが気に入らないんだよ」
いちいち言わなくても、黙って落とせばいい。シズはやはり、セドニを怪しんだ。
「顔か? 」
シズは挑発してみた。セドニは振り返る。
「存在だ」
そう言い捨て、セドニは足早に去っていった。シズは喧嘩は売らない。だけど売られたら買う。それはどこでも変わらない。国民局七局カル・セドニ。意地でも城人になってやる。頑固汚れなめんなよ。シズはそう鼓舞した。
「喧嘩ってパンチの強さとか、瞬発力とか握力があった方がいいとか色々いうけど、俺は粘りが大事なんだと思うんだよ。一発で相手倒せるなんて滅多にねぇからな。粘り勝ちだ。粘るってことは決着まで時間がかかるってこととイコールだ。だから殴られる。だから、受け身が大事だ。けどやっぱ咄嗟にちゃんとした受け身がとれないことってあるだろ? そういう時のために身体は柔らかい方がいいんだ。怪我をするリスクが低くなる。お前がいくら男勝りだっていっても身体のつくりは,女だ。それですげぇ不利なんだよ。だから身体ぐらいフラゲになれ」
カケルはクラゲみたいになれと言いたかった。勝利をフライングゲットとか言いたかったのかもしれないこともない。どっちにしろシズもカケルも頭は基本的に馬鹿だった。この話をしたのは中学の頃だ。珍しくカケルが真面目に話して、シズも一理あるなと素直に受け取り授業中退屈になれば、柔軟体操をしていた。そのせいか体育以外オール1だった。1番は嫌いじゃないから、シズは気にしてはいない。
ヨンキョクになるための試験、バリミアの話じゃ女子はほぼいないと考えていた方がよさそうだとシズは考えた。
女は男に比べてすげぇ不利。どう頑張っても、どうにもならない違いをカバーするにはできることで男との差を縮めることだ。そう考え、シズは柔軟に力をいれるようになった。そしてシズの強みはやっぱり足だ。しっかり柔軟体操をしたあと、消化の良い朝御飯を食べ一時間以上走りにいく。身体がしっかりしていく自覚がシズは徐々に大きくなっていく。
「お前、どういうつもりだ」
ランニングから戻ってくるとキミドリアパートの入り口に怖い顔したセドニが立っていた。前と同じ漆黒の軍服を着ている。
「あんたこそどうしたんだよ」
上がった呼吸を整えながらシズ言うと、セドニはこっちへどすどす歩いてきた。
「なぜヨンキョクになりたいんだ? 」
「え、なんで知ってんだよ」
「俺は今回試験官をする。書類を見ていたらお前のものがあった」
「あんた試験官なの?マジで?じゃあ私のことちょいっと受からせてよ」
「ふざけるな」
ちっっと、シズは舌打ちをして、怠そうにズボンのポケットに手を入れた。
「別にいいじゃねぇかよ。心機一転ちゃんと働こうって、こう必死に輝く若者が希望を持って、こう努力してんだよ。今だって私、超走ってきたよ。結構なハイペースで」
セドニは黙ったままシズを見下ろす。シズはわざとため息を吐いて頭を掻いた。
「あんたそんなこと聞くために朝っぱらここまできたの? 」
「お前はなぜヨンキョクになりたいんだ? 」
セドニはシズの質問を無視する。
「ジャモンがやってみろって」
「ジャモンって、お前の保護者のか? 」
「ああ」
堅物が信じてくれそうな事実をシズは話した。
「私運動神経いいからさ。ジャモンが受けてみろって。私ずっと引きこもりだったからよ」
嘘のこっちの事実を話す。シズは女優な気分だった。
「プー太郎のままでいられないだろう? 」
セドニは忌々しい表情を浮かべるとシズを力強く指さした。
「受けたければ受ければいい」
なんでお前にそんなこと言われなければならない、とシズは苛立った。
「けど俺はお前を確実に落とす」
橋から飛び降りたのが受験にそんなにネックになるのかよ。そう、シズは思って、納得した。七局でエリート。自分を落とすなんて簡単にできるかもしれない、とシズは焦る。
「私、更生しましたよ」
自分で言ったが、シズは自分が自分でめちゃくちゃ胡散臭かった。これじゃあ焼け石に水だ。セドニの顔は真顔のままだ。焼け石にガスバーナー。
「私もうヨンキョクになるしかないんだよ」
「そうだとしても落とす」
「引きこもりだったって言っても家の中で超身体鍛えてたから。超アクティブな引きこもりだから体力も身体もしっかりしてる」
「それでも落とす」
「ほらこんなに柔らかいよ。クラゲみたいだろ」
シズは身体を前に倒して掌を地面につける。
「そうだな。でも落とす」
「さっきから落とす落とすってお前は漂白剤か! 」
シズは起き上がり叫んだ。
「分かったよ! 成績残せばいいんだろ! お前が落とせないぐらいの好成績見せてやるよ!! 」
シズは宣言してやった。落ちるわけにはいかない。
「悪いが、落とす」
宣言はセドニの胸に届かなかった。セドニを抜かし、シズは立ち去る。
「おい」
呼び止めれ、シズは立ち止まった。セドニは試験の前にわざわざここまできて試験を落とすなんていいにきた。シズはそれが違和感で仕方なかった。
「なんでそんなに私を落としたいんだよ。なにが気に入らないんだよ」
いちいち言わなくても、黙って落とせばいい。シズはやはり、セドニを怪しんだ。
「顔か? 」
シズは挑発してみた。セドニは振り返る。
「存在だ」
そう言い捨て、セドニは足早に去っていった。シズは喧嘩は売らない。だけど売られたら買う。それはどこでも変わらない。国民局七局カル・セドニ。意地でも城人になってやる。頑固汚れなめんなよ。シズはそう鼓舞した。
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