【完結】ヤンキー少女、異世界で異世界人の正体隠す

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学校編

はじめての友達

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 城前広場にあるフーメンのお店に入った。フーメンとはざっくりといえば麺だ。昨日の昼にシズは初めて食べたが少し醤油ラーメンに近いけどちょっとうどんぽいものだった。フーメンにも色々あって、温かいのも冷たいのもある。スパゲッティみたいに炒める奴もある。だいたいおいしい。アベンチュレは小麦の産地で、パンや菓子などの粉物の料理がいわゆる郷土料理だった。
「私のことバリミアでいいから。シズでいい? 」
「ああ」
「シズは年齢は? 」
「十八」
「同じ」
 シズはそんな気はした。バリミアの顔をちらり見る。別世界に来ようがカケルとの縁は切れないようだと、シズは思った。
「じゃあ城人になるのお互い今年がラストチャンスだね」
「え? あー、そうだな」
 アベンチュレ青少年学校の受験資格は十五歳から十八歳までだ。ちなみに城人の定年は四十五歳と日本の感覚にしてはとても早い。国民局を退職したあとは城人を目指す受験生ための塾を開いたり、民間の企業に再就職したりする。地方で農業をする人もいる。長くいればそれだけ力を持つ。それを防ぐために人の回転を早くする。シズはジャモンと勉強した。
「バリミアは今まで受けたことあるのか?」
「ううん。今年が初めて。シズも?」
「うん」
「お待たせー。魚介フーメンのお客様は?」
 バリミアが手をあげる。
「はいはい。じゃああなたがチキンフーメンね。熱いから気をつけてね」
 昼時で忙しいのか店員は足早に去っていく。シズはチキンをひとつ頬張る。
「シズはどこの局志望?」
「ヨンキョク」
「女の子なのに?」
 シズはチキンを飲み込む。
「女がヨンキョク目指すって珍しいのか?」
「んー、どうだろ。けどやっぱり男が行くって感じかな。いないことはないと思うけどね」
「そっか。まあいいけど。バリミアはどこいくんだ?」
「ちゃんとはまだ決めてない。けどアオクラス志望」
「賢いんだな」
 将来就きたい局に応じて入りたいクラスを選ぶ。
 一・二・七・八局志望はアオクラス。極端にいえばエリートコース。頭が良くなければまず無理。
 三・五・六局はキイロクラス。このクラスも頭はいいがアオクラスと違い商業的なことや国民と密接になる局なので、問題処理や応対などについても学ぶ。
 そして四局はアカクラス。他の二クラスと違い実践の授業が多い。普通も授業ももちろんある。
 そして監察の九局は、九局長が直々にクラス関係なくスカウトにくる。
 クラス分け信号機みたいだなとシズはジャモンに言ったが通じなかった。
「勉強好きだし。地元の学校でもトップだったから城人目指してみようかなって。それに、アオクラスに行けば出世コースだし。お金好きなの私」
 真顔でいうバリミアにシズは声を出して笑った。金への執着もカケルに似てる。
「シズはなんでヨンキョク?」
「んー」
 シズは言葉を考える。「コイン」の話なんてしたらバリミアは気味悪がるだろう。
「捜してる人がいるんだ」
「カケルって人?」
「え?」
「だって私のことカケルって人と間違えた時すんごい顔してたから、シズ」
 ああとシズは苦笑いをした。
「カケルじゃない。カケルの居場所は分かってる」
「そうなの?じゃあ今度会わせてよ!どれだけ私とそっくりか見てみたい」
 シズもふたりを並べてみたいと思った。
「会わせてやりたいけど無理だな。居場所が分かってても、行けないんだ。その場所にいくにはムカつく男を捕まえなくちゃいけなくて」
「それが捜してる男?」
「そう。まっとうじゃない男だからさヨンキョクにでもしたら御用にできるかなって」
 ふーんとバリミアは麺をすする。
「事情抱えてんのね」
 そうです。おとぎ話みたいな深刻な事情を抱えてるんですよ。シズは心中で言った。
「ふたりで合格しましょう。シズとは馬が合いそうだから学校でも仲良くしたいわ」
 そう笑う顔はやっぱりバリミアはカケルそっくりだった。あいつは私がいなくても元気でやってるんだとシズは思った。私とジャモンの「コイン説」が正しければカケルとバリミアはコインだ。今日、バリミアと出会ったことでむしろこの「コイン説」にシズは確信を増した。
「私も。今日会えてよかったよ。マジで」
 シズは自分がいなくなった世界で私の周りはどうなったのだろうと考える。死んだことになってるか。それか男になったぞと納得されているのか。それはありえないな、とシズは思う。
「いや、ちょっとありえそうだな」
「なにが?」
「なんでもねぇ」
 早く帰らないと。シズはそう、何度も思う。
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