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#005

生徒会長

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 事態は僕の知らないところで、僕の想像以上に早いスピードで進んでいたようで、気が付けば「偽物VS学校の悪魔」の構図が出来上がっていた。



 ここに来て僕は学徒がうわさする「学校の悪魔」がどういうものか理解していた。それについて理解したのは僕だけではなく、隣で鬼の形相を浮かべる正体不明の化け物もまた生徒にばらまかれた鏡の一件でその殺しの法則に気が付いたようで、自分の爪を噛みながら河内森キョウコの華奢な足で掃除用具室に転がっていたバケツを勢い良く蹴りあげた。

「今まで気にもしなかったが……、チッ!あいつ、私達をピンポイントで殺して回っていたのか……っ」

 僕としてはラッキーな他ないな。ただ、学校の悪魔が正義のヒーローだと分かった今、いつまでも偽物側についておくのはあまりよろしくはない。下手すりゃ僕も偽物だと疑われて殺されてしまうかもしれないからね。

 でも、ここでひとつ問題がある。

 僕が「学校の悪魔」側に容易に寝返れないことだ。寝返ったことがバレたら偽物の秘密を知っている僕は真っ先に殺されてしまうだろう。かと言って、さっきも言った通り寝返らなくても「学校の悪魔」に偽物だと勘違いされて殺されるリスクがある。

 わざわざ鏡を全校生徒の下駄箱に入れてまで偽物を見つけ出そうとするくらいだ、向こうもこっちが組んでいる事にはとっくに気が付いているのは自明だった。

 なら、やはりダブルスタンダード的な立ち回りが必要になってくるわけなんだけど、正直なところ今の僕にはどうすればいいのかさっぱり分からないな。せめて、学校の悪魔が味方についてくれるという保証があれば僕の方も動くことができるんだけど、そう都合よくもいかないだろう。

 この河内森キョウコの偽物が先に学校の悪魔を見つけ出し殺すという可能性もあるが、誰もその存在を知らない学校の悪魔をそう簡単に見つけ出せるとは思えない。現に、件の下駄箱鏡は二か月以上も続いたというのにその手掛かりすら見つけられていなかったからね。

 どうしたものかな。

「……見つけだす方を優先する。増やすのはその後だ」

 どうやらこの化け物は先に学校の悪魔を見つけ出したいようだった。まぁ、増やしたところで減らされるのだからそう考えるのは当然だろうね。でも、その方法は考えついているのだろうか。

「どうするつもりかな。見張りでも立てたりしてみるかい?」

 それはあまり得策とは言えないけどね。その見張りが殺されるのがオチだ。

 化け物は僕の話など聞いていないのか何の返事もなかったが、その代わりに河内森キョウコに似合わないニヒルな笑みを浮かべた。それが勝算あるからなのか、単に面白くなってきたからなのかは分からない。

 だが、僕としては依然として有利な方につくつもりだ。化け物が先に学校の悪魔にたどり着いたのなら化け物側につくし、学校の悪魔が先にこの化け物にたどり着いたのなら寝返る。大切なのは僕が殺される可能性を少しでも下げることなんだ。

 この後の展開がどう転ぶかで変わってくるが、今のところ優勢なのはやはり化け物側だろう。ドッペルゲンガー的偽物の存在に気が付いているのは僕と学校の悪魔くらいなもんだとは思うが、学校の悪魔の存在を知っているのはこの学校全員なのだ。更に、ここ最近では自殺者に見せかけた偽物の死体の数も急激に増えている。まずボロを出すなら向こうだ。

 それに、こちら側は別段。学校の悪魔だと思った生徒を殺して、それで自殺死体が減らなければまた新たに疑わしいやつを殺せばいいだからね。数を打てばいつかは当たるのさ。

 対して向こうは下手に殺すことは出来ないはずだ。今までの傾向見ると間違いなく偽物だけを狙って殺しているからね。そいつは学校の悪魔なんかじゃなくてそれこそ学校のヒーローなんだ。普通の人間を殺したりなんかはしないだろう。

 であれば、今もこうして化け物に脅されている僕の事も助けて欲しいところだけどね。
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