シリウスをさがして…

もちっぱち

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誤解がとけた

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屋上のドアを開けると、頬に風が強く打った。

髪が宙に靡く。

ベンチに陸斗と康範が座っていた。

こちらに気づくと手を上げて声をかけた。

「紬,こっちおいで。」

 
 いつもの陸斗がそこにはいた。

 想像していた陸斗と違う。

 美嘉と付き合ってる素振りはない。


 紬の勘違いだった。


「…美嘉ちゃんに怒るって言ったの?」


「え、何の話? 森本さん、紬に何か言った?」


「あ~、それは…。紬ちゃんが来ないと私が陸斗先輩に怒られるって言ったんです。そう言うこと言わないと紬ちゃん,来ないと思って…。」

「俺,かなり悪いやつみたいじゃん。何も言ってないからね。1人で過ごしたいこともあるだろうからと思って放任してました。羊の放牧のごとく…。」



「私は羊?!」


広い柵の中の羊だと思って接しているらしい。


「でも、来てくれてよかった。ライン全然来ないから、どうしたんかなと思ってた。意味ないスタンプも来ないし。」


「えー、陸斗も送ってくれない。」 


「俺は英単語覚えるので頭がいっぱいなの。」


バックから単語帳とメガネを取り出して勉強してる素振りを見せた。


「嘘だー。」


 笑みがこぼれる。
 会話をするのが久しぶりで胸を撫で下ろした。

 こんなに話して安心することってあるんだと思った。


「ちょっと、康範先輩聞いてくださいよー、最近洸さんからライン来たんですけど、これって見込みあります??」

「俺に聞くの?まー、嫌がってはないよね。」

 

 その会話を聞いた紬は不思議そうに紙パックのイチゴ牛乳を飲んだ。

陸斗はその様子に気づいて、近くにあった紙パックを渡した。

「ごめん。もろかぶりだけど、お土産。」


 学校のラウンジで買ったであろう違うメーカーのイチゴ牛乳の紙パックを手渡した。


「ありがとう。」


何気ない優しさが嬉しかった。


「そういや、森本さんに、洸の連絡先教えてたのよ。最近、別れたって?彼氏さんと。だから、教えたんだけど、別にいいよね?」

 片手でおにぎりを食べながら話す。


「え!? 美嘉ちゃんに洸さんを、すすめたの? だ、大丈夫かな。洸さん…誰にでも優しくするから。」


 たまごサンドを頬張って、むせそうになった。


(私の勘違いは洸さんと付き合うって話だったのか。なんだ、良かった。美嘉ちゃん、陸斗と付き合うのかと思った。)


「俺も気になったんだけど、洸がいいらしいのよ。会ったことあるんだって?」


「うん。お店のリニューアルオープンの時に会ってて、洸さん、美嘉ちゃんに話しかけてたから。」


「ふーん。お互いに知ってはいたのね。まあ、それは2人に任せよう。んで? 紬は? 気持ちの整理ついたの?」


ベンチに座りながら後ろに両手をついて聞く。


紬はサンドイッチを食べ続ける。


「輝久のことだよね。何か彼女できたって言ってて、近づかないでって言われたから…ショックで怒って、離れたよ。陸斗を大事にしなって上から目線で言われた。」


「ふーん。」


(彼女はいなそうだな、まあ、それが利口だな。輝久,やるじゃん。)



「んじゃ、俺,大事にしよ?」


左手で紬の右手を掴んで握りしめた。


「うん。大事にするよ。でも、受験勉強するって言ってたから避けてた。邪魔しちゃ悪いって思って…。」


 陸斗は紬の額にデコピンした。




「学年首席をなめるなよ!勉強しなくても受験なんて受かるし。紬が気楽な気持ちでいられるように言ったの。もし、輝と付き合っても待ってるよって言ったじゃん。天然だな,紬は。気づかないんだから。」


「え?? 輝久と私が付き合うの?陸斗と別れないで?そんな道理に合わないことできないよ!!」


「クソ真面目~。逆に引くわ~。」


 陸斗は両手を上にあげて呆れた様子だった。



「好きになるのに道理とか道徳とか関係ある?真っ直ぐに進んだって良いんじゃんか。俺はそのつもりだったよ。紬は幼馴染の縁を,切りたくないって言うもんだから泳がしておくかって思った。何,好きじゃないの?輝久はこれっぽっちも?」


「嫌いじゃないけど、恋人ではない。兄妹みたいな…でも、どうしようって思ったけど、ハッキリ言われたから諦めたよ、それはね。」


「曖昧な感じではいられないんだね。…大変だね,それはそれで。」


「私なんてもモテないし、陸斗みたいにいろんな人と関わりないから、曖昧な付き合い方なんてわからないよ。」



「俺は好きでモテてる訳じゃねえよ。声かけられるから好きじゃない人でも、対応するしかないっしょ。俺と生きる世界が違うからなぁ~むしろ、うらやましいよ。」



「え?陸斗先輩って許容範囲広くないですか?」



「でしょ?俺,優しすぎるでしょ?ほら、森本さん、分かってくれてるよ。紬は俺の優しさ気づいてはくれないんだよね…まあ、そんなもんだよ。一昔前の俺はどこに行ったんだろ。」



「…ああー、黒歴史の話か。」


 康範は横で話し出す。



「それは紬ちゃんショック受けるかも。わかりやすく言うと優しくはない陸斗もいたって訳よ。」


「だってさ、普通他に彼氏できたら別れるか別れないでとか言うのを良いよって言うのって相当の自信がないと無理だし,不安になるっしょ。それを許すって私ならそう言われたらどこにも行かないよ~。恋の駆け引きってやつじゃないですか。」


「そうそう。ガツガツ行きすぎるのは良くないし引き過ぎも良くない。ほどよくね!俺はそれを学んだのよ。」



「優しくない陸斗…見てみたい気もする。あまのじゃくなのかな。でも、今のままでいいかな。」


「紬…見てるところ違う気がする…。っと言うわけで、日曜日出かけるよ。ね?俺へのお詫び、分かった?俺の言うことは、絶対!」


 紬の右手を天高くあげた。

 急に引っ張られて驚いた。


「え、どこに行くの?」

「そうだなあ~。考えとく。」

「良いなあ、俺バイト入ってたわ。」

「え、それって私もですか?」

「あ、ああ。洸誘う?4人で行く?ごめんな、康範。埋め合わせするからな。」

「絶対だぞ、陸斗。」

「わかったよ、んじゃ、洸に連絡しておくわ。」

「えー。緊張するなあ。」


 そう言いつつも内心はすごくワクワクしていた紬だった。



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