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学校行事のお楽しみ
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残暑が厳しい9月。
衣替えだというのにまだ長袖は暑かった。
高校の生徒たちはほぼ半袖を着ていた。
エアコンをつけないと過ごせない気温だった。
授業中、下敷きやうちわで涼しくしていた。
真面目に長袖を着ていた生徒は丁寧に腕まくりをしていた。
視界が机じゃなく、周りのクラスメイトの顔も覚えるようになってきた紬。だんだんと社交的になってきて、陸斗や輝久以外にも一言二言、話せるようになってきた。
臨時の1時間ホームルームでは来月行われる文化祭の話で盛り上がっていた。
「今回の文化祭で、我がクラスのイベントはお化け屋敷に決定しました。役回りは黒板に書きました。希望するものがあれば、挙手をお願いします。」
「お化け屋敷の案内人から、おばけ役、広報などポスター作り、照明、屋敷中の段ボールにて部屋作成、衣装作り、おばけのスイーツカフェなど、たくさんのお仕事を用意してます。必ず、みなさん参加するようによろしくお願いします。」
席を立ち歩き、友達同士で話し合う者もいた。紬はいつも影の存在で裏方をすることが多かったが、今回は何だか楽しそうだとやる気が出ていた。
「紬ちゃんは、何にするか決めた?」
無性にお肌がツルツルで化粧をばっちりした美嘉が駆け寄ってきてくれた。
「えっと…迷ってて。美嘉ちゃんは何するの? ん、あれ、首に虫さされたの?赤いよ~。」
紬はゆるふわパーマを2つ結びにしていた美嘉の隙間から見える後ろの首に赤く筋のような斑点のようなものが見えた。
そっと指をさした。
美嘉はパシッと蚊を叩くような仕草で隠した。両耳が赤くなっている。
「え、嘘。ほんと? 最近、虫さされやすいんだよね。大きなやつに…へへへ。教えてくれてありがとう。」
(絆創膏貼っておかないと恥ずかしいな。)
「美嘉もお盛んだね。」
いつも美嘉の周りにいる友達の渡辺美由紀と白石瑞季がそばに寄ってきた。
「もう、それは言わないで!紬ちゃんには早い話だから!」
「何、言ってんの。谷口さんもすでに先輩とそう言う仲なんでしょ。気にしすぎだって。」
「え? 何の話?」
紬は美由紀に聞き返すと耳打ちされる。すぐに顔をお猿のように真っ赤になる。
「マジか。あの先輩、見た目より意外と奥手なのか。」
瑞季はボソッと言う。
「2人のこれからが楽しみだね。ところで文化祭なにするの?」
「えっと…私はお化け役やろうかな。貞子みたいなの面白そう。」
美嘉はすすんでお化け役をやろうとする。
「美嘉の場合は、カフェ店員でしょう。お客さん増えそう。私は、ポスターでも描こうかな。」
瑞季は絵を描くのが得意だった。
「えー。メイドカフェみたいな衣装着る感じ?まあ、それでもいいけど。紬ちゃん、どうするの?」
「私は…お化け役がいいかな。何か被れば誰だか分からないしできるかも。」
「何だか、面白くなりそうだね。私、衣装作りするわ。」
クラス全員の役回りが決まった。紬と一緒にお化け役になったのは隣の席の田中だった。話したことがある男子でよかった。
「谷口さん、一緒のお化け役、よろしくね。」
席に戻った際に、声をかけられた。
「あ、こちらこそ。お願いします。」
前よりも自然に会話ができるようになった。何だか少し恥ずかしくなった。
「以上、終わります。みなさん、文化祭を楽しく成功させましょう!!」
「はーい。」
実行委員長はかけ声をかけるとみんないっせいに返事をした。結構まとまりのあるクラスのようだ。
ーーー
昇降口を出ると、キンモクセイの香りが漂っている。
放課後の校庭では陸上部がピストルをうって、50m走をしていた。
その隣で野球部が練習試合をしていた。
バッターが一塁側にヒットをうっている。
靴に履き替えて、耳にイヤホンをつけて、バス停の方に向かおうとしたが、ふと思い出して、進む方向を変えた。
体育館隣の武道館に行こうとしたら、昇降口から出てくる輝久に会った。
「あ。」
「……よっ!」
左手をあげてこちらを見た。
「久しぶり。バス、最近会わないね。」
「あぁ。寝坊してて、疲れているんだよ。」
「大丈夫?」
段差の高いところにいた輝久から、紬がキラキラビジョンに見えた。無意識に上目使いになっている。
本人は自然に見ているつもりだった。
ワイシャツから透けて見えるレースのインナーが目についた。恥ずかしくなって、視線を外す。
「お、俺は別に、平気だけど、そっちは?」
「うん、特に変わりないよ。輝久のおばあちゃん、この間、うちのお店来てくれたみたい。ありがとうって伝えといて。お父さんも喜んでた。」
「あ、あぁ。そうなんだ、伝えとく。」
「んじゃ、また明日。寝坊しちゃいかんよ?」
「…紬、待って。」
輝久は紬の腕を掴んだ。
「まつげ、ついてた。」
右頬についてたまつげをとってあげた。
「あ、ありがとう。」
結構な至近距離だったのに、全然平気そうな顔していた。ドキドキの対象じゃないんだと軽くショックをうけた。
自分自身はこんなにドキドキしまくっているのに。
紬は足取り軽やかに武道館の方へ歩いて行く。
武道館は窓を開けたままで稽古が始まっていた。そっと、お邪魔して見学しようと思った。
出入り口でうろうろしていると防具をつけたキャプテンの斎藤が気づいてくれた。
「見学ですよね。良いですよ、中に入ってください。」
「あ、ありがとうございます。」
紬は、陸斗が父のさとしとちょうど稽古中のそばに座ってた。
2人とも防具をつけて集中していたため、こちらには気づいていないようだった。
威嚇するようなダンッと床を叩きつける音が響き渡る。
竹刀と竹刀がぶつかり合う。
先にさとしが面を狙うが叩きつけて交わされた。
今度は陸斗が胴を狙って当たりそうで当たらない。くるりと回って戻ってきた瞬間に、引き胴を素早く打つ。
陸斗が一本を取った。
お互い向かい合って蹲踞した。立ち上がってさらに後ろを下り、お辞儀して終了した。
床に座り、面を取って手ぬぐいで汗を拭いた時にこちらをジロジロ見てくる視線が気になった。
ちらりと横を見ると、紬が見学に来ていたのがわかった。少しはにかむような笑顔を見せた。喜んでいる。
「陸斗、だいぶコツつかんできたんじゃないか?」
五十嵐先生が言う。
「そうっすか。ありがとうございます。」
「本当、子が親を越すのもあっという間かもしれないですよ。」
「ですね。」
先生と父のさとしは笑いながら言う。
「それより、お父さん。息子さんから聞きましたか?この間の全校集会で…。」
「え?何の話ですか。全然、聞いてないですね。」
「え、あ。ちょっと先生、それ言わないでもらっていいですか…!」
時すでに遅し。後ろを振り返って小さな声で2人は話している。陸斗は冷や汗が止まらない。
「え!? 陸斗、お前結婚すんの?」
「あぁ…そうなるよね。聞けばそうなるんだよ。」
隣に紬が静かに寄った。
「さっきのすごかったね。」
話を聞いてなかったのか、紬はさっきのさとしとの稽古の話をしていた。
「まさか。まだ、しないって。竹刀だけに?なんて…ははは。」
「先輩、つまらないよ。」
「びびったぁ。陸斗がやらかしたのかと思った。どうお詫びすればいいのか一瞬考えたわ。そういうわけじゃないんだよね?」
「え…父さん、先走りすぎだわ。詫びって何を詫びるのよ…。」
五十嵐先生とさとしは顔を見合わせた。状況を読むと、口を塞いで笑いをおさえた。なんと、若干18歳にしてこの対応でなんと可愛いんだと2人は平和だと感じた。
「いざとなったら、ちゃんと塞げよ!なっ!」
肩をバシと叩かれて通り過ぎた。
「何の話だ!?」
陸斗は状況がつかめず冷や汗をかく。
紬も疑問符を浮かべる。
頭がお花畑の2人なのかもしれない。
今日も部活終わりで父のさとしは紬を家まで送ってくれるらしい。恥ずかしさ倍増の陸斗はあえて、助手席に乗った。
紬は後部座席に座る。過剰に意識しすぎてる。冷やかされるのがいやらしい。
「ん?後ろ乗らんの?」
「いいの。今日はこっちで。」
「ふーん。そうですか。」
気まずい空気が流れてラグドールのお店に着いた。イベントが終わり、ガーランドも片付けられていた。何となく寂しい雰囲気だった。
「ありがとうございました。」
紬はお礼を言うと、ささっと自宅の方へ駆けて行った。
後ろ姿を見て
「紬ちゃん、だいぶ元気になったようでお父さんたち喜んでるみたいね。陸斗にすごい感謝してたよ。何か秘訣でもあるの?」
さとしは車をバックさせて本通りに進めた。
「特にこれと言って何もしてないけど…。一緒にいたくらいかなぁ。」
(キスくらいはしたけどそんなの父さんに恥ずかしくて言えるわけないし…。)
対向車のライトが眩しかった。
「そっか。大事にしてやるんだぞ。傷つけないように、レディファーストでな!」
「ああ、うん。それはね。常々思ってますよ。父さんだって、母さんとマネージャーとして働いてたときそんな感じだったんでしょ?」
「ああ、レディーファースト以上に気を回さないといけないからね。本人はどう思ってたか知らないけど、細かいところまで気を使うよ。本当。でもなあ、母さんと本格的に交際したのは大人になってからだから、陸斗にはあーだこーだ、先輩面できないけどな。陸斗は肉食系男子だと思ってたけど、そうでもないんだな。」
「お、女の子は大切にしたいと思うから!父さんと同じで3年間手出さないのと一緒でしょうが。親に似てるんです~。」
「あ、俺のせい?確かに俺は高校の時、紗栄としか交際してないけどな?交際になってなかったらしいけども。陸斗は他にもいたんだろう?ってどんな話してんだよ。ほら、うち着いたからおりて。」
バンと勢いよく車のドアを閉めた。
若いうちはドキドキすることがたくさんあってうらやましいなあと思うさとしだった。
衣替えだというのにまだ長袖は暑かった。
高校の生徒たちはほぼ半袖を着ていた。
エアコンをつけないと過ごせない気温だった。
授業中、下敷きやうちわで涼しくしていた。
真面目に長袖を着ていた生徒は丁寧に腕まくりをしていた。
視界が机じゃなく、周りのクラスメイトの顔も覚えるようになってきた紬。だんだんと社交的になってきて、陸斗や輝久以外にも一言二言、話せるようになってきた。
臨時の1時間ホームルームでは来月行われる文化祭の話で盛り上がっていた。
「今回の文化祭で、我がクラスのイベントはお化け屋敷に決定しました。役回りは黒板に書きました。希望するものがあれば、挙手をお願いします。」
「お化け屋敷の案内人から、おばけ役、広報などポスター作り、照明、屋敷中の段ボールにて部屋作成、衣装作り、おばけのスイーツカフェなど、たくさんのお仕事を用意してます。必ず、みなさん参加するようによろしくお願いします。」
席を立ち歩き、友達同士で話し合う者もいた。紬はいつも影の存在で裏方をすることが多かったが、今回は何だか楽しそうだとやる気が出ていた。
「紬ちゃんは、何にするか決めた?」
無性にお肌がツルツルで化粧をばっちりした美嘉が駆け寄ってきてくれた。
「えっと…迷ってて。美嘉ちゃんは何するの? ん、あれ、首に虫さされたの?赤いよ~。」
紬はゆるふわパーマを2つ結びにしていた美嘉の隙間から見える後ろの首に赤く筋のような斑点のようなものが見えた。
そっと指をさした。
美嘉はパシッと蚊を叩くような仕草で隠した。両耳が赤くなっている。
「え、嘘。ほんと? 最近、虫さされやすいんだよね。大きなやつに…へへへ。教えてくれてありがとう。」
(絆創膏貼っておかないと恥ずかしいな。)
「美嘉もお盛んだね。」
いつも美嘉の周りにいる友達の渡辺美由紀と白石瑞季がそばに寄ってきた。
「もう、それは言わないで!紬ちゃんには早い話だから!」
「何、言ってんの。谷口さんもすでに先輩とそう言う仲なんでしょ。気にしすぎだって。」
「え? 何の話?」
紬は美由紀に聞き返すと耳打ちされる。すぐに顔をお猿のように真っ赤になる。
「マジか。あの先輩、見た目より意外と奥手なのか。」
瑞季はボソッと言う。
「2人のこれからが楽しみだね。ところで文化祭なにするの?」
「えっと…私はお化け役やろうかな。貞子みたいなの面白そう。」
美嘉はすすんでお化け役をやろうとする。
「美嘉の場合は、カフェ店員でしょう。お客さん増えそう。私は、ポスターでも描こうかな。」
瑞季は絵を描くのが得意だった。
「えー。メイドカフェみたいな衣装着る感じ?まあ、それでもいいけど。紬ちゃん、どうするの?」
「私は…お化け役がいいかな。何か被れば誰だか分からないしできるかも。」
「何だか、面白くなりそうだね。私、衣装作りするわ。」
クラス全員の役回りが決まった。紬と一緒にお化け役になったのは隣の席の田中だった。話したことがある男子でよかった。
「谷口さん、一緒のお化け役、よろしくね。」
席に戻った際に、声をかけられた。
「あ、こちらこそ。お願いします。」
前よりも自然に会話ができるようになった。何だか少し恥ずかしくなった。
「以上、終わります。みなさん、文化祭を楽しく成功させましょう!!」
「はーい。」
実行委員長はかけ声をかけるとみんないっせいに返事をした。結構まとまりのあるクラスのようだ。
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昇降口を出ると、キンモクセイの香りが漂っている。
放課後の校庭では陸上部がピストルをうって、50m走をしていた。
その隣で野球部が練習試合をしていた。
バッターが一塁側にヒットをうっている。
靴に履き替えて、耳にイヤホンをつけて、バス停の方に向かおうとしたが、ふと思い出して、進む方向を変えた。
体育館隣の武道館に行こうとしたら、昇降口から出てくる輝久に会った。
「あ。」
「……よっ!」
左手をあげてこちらを見た。
「久しぶり。バス、最近会わないね。」
「あぁ。寝坊してて、疲れているんだよ。」
「大丈夫?」
段差の高いところにいた輝久から、紬がキラキラビジョンに見えた。無意識に上目使いになっている。
本人は自然に見ているつもりだった。
ワイシャツから透けて見えるレースのインナーが目についた。恥ずかしくなって、視線を外す。
「お、俺は別に、平気だけど、そっちは?」
「うん、特に変わりないよ。輝久のおばあちゃん、この間、うちのお店来てくれたみたい。ありがとうって伝えといて。お父さんも喜んでた。」
「あ、あぁ。そうなんだ、伝えとく。」
「んじゃ、また明日。寝坊しちゃいかんよ?」
「…紬、待って。」
輝久は紬の腕を掴んだ。
「まつげ、ついてた。」
右頬についてたまつげをとってあげた。
「あ、ありがとう。」
結構な至近距離だったのに、全然平気そうな顔していた。ドキドキの対象じゃないんだと軽くショックをうけた。
自分自身はこんなにドキドキしまくっているのに。
紬は足取り軽やかに武道館の方へ歩いて行く。
武道館は窓を開けたままで稽古が始まっていた。そっと、お邪魔して見学しようと思った。
出入り口でうろうろしていると防具をつけたキャプテンの斎藤が気づいてくれた。
「見学ですよね。良いですよ、中に入ってください。」
「あ、ありがとうございます。」
紬は、陸斗が父のさとしとちょうど稽古中のそばに座ってた。
2人とも防具をつけて集中していたため、こちらには気づいていないようだった。
威嚇するようなダンッと床を叩きつける音が響き渡る。
竹刀と竹刀がぶつかり合う。
先にさとしが面を狙うが叩きつけて交わされた。
今度は陸斗が胴を狙って当たりそうで当たらない。くるりと回って戻ってきた瞬間に、引き胴を素早く打つ。
陸斗が一本を取った。
お互い向かい合って蹲踞した。立ち上がってさらに後ろを下り、お辞儀して終了した。
床に座り、面を取って手ぬぐいで汗を拭いた時にこちらをジロジロ見てくる視線が気になった。
ちらりと横を見ると、紬が見学に来ていたのがわかった。少しはにかむような笑顔を見せた。喜んでいる。
「陸斗、だいぶコツつかんできたんじゃないか?」
五十嵐先生が言う。
「そうっすか。ありがとうございます。」
「本当、子が親を越すのもあっという間かもしれないですよ。」
「ですね。」
先生と父のさとしは笑いながら言う。
「それより、お父さん。息子さんから聞きましたか?この間の全校集会で…。」
「え?何の話ですか。全然、聞いてないですね。」
「え、あ。ちょっと先生、それ言わないでもらっていいですか…!」
時すでに遅し。後ろを振り返って小さな声で2人は話している。陸斗は冷や汗が止まらない。
「え!? 陸斗、お前結婚すんの?」
「あぁ…そうなるよね。聞けばそうなるんだよ。」
隣に紬が静かに寄った。
「さっきのすごかったね。」
話を聞いてなかったのか、紬はさっきのさとしとの稽古の話をしていた。
「まさか。まだ、しないって。竹刀だけに?なんて…ははは。」
「先輩、つまらないよ。」
「びびったぁ。陸斗がやらかしたのかと思った。どうお詫びすればいいのか一瞬考えたわ。そういうわけじゃないんだよね?」
「え…父さん、先走りすぎだわ。詫びって何を詫びるのよ…。」
五十嵐先生とさとしは顔を見合わせた。状況を読むと、口を塞いで笑いをおさえた。なんと、若干18歳にしてこの対応でなんと可愛いんだと2人は平和だと感じた。
「いざとなったら、ちゃんと塞げよ!なっ!」
肩をバシと叩かれて通り過ぎた。
「何の話だ!?」
陸斗は状況がつかめず冷や汗をかく。
紬も疑問符を浮かべる。
頭がお花畑の2人なのかもしれない。
今日も部活終わりで父のさとしは紬を家まで送ってくれるらしい。恥ずかしさ倍増の陸斗はあえて、助手席に乗った。
紬は後部座席に座る。過剰に意識しすぎてる。冷やかされるのがいやらしい。
「ん?後ろ乗らんの?」
「いいの。今日はこっちで。」
「ふーん。そうですか。」
気まずい空気が流れてラグドールのお店に着いた。イベントが終わり、ガーランドも片付けられていた。何となく寂しい雰囲気だった。
「ありがとうございました。」
紬はお礼を言うと、ささっと自宅の方へ駆けて行った。
後ろ姿を見て
「紬ちゃん、だいぶ元気になったようでお父さんたち喜んでるみたいね。陸斗にすごい感謝してたよ。何か秘訣でもあるの?」
さとしは車をバックさせて本通りに進めた。
「特にこれと言って何もしてないけど…。一緒にいたくらいかなぁ。」
(キスくらいはしたけどそんなの父さんに恥ずかしくて言えるわけないし…。)
対向車のライトが眩しかった。
「そっか。大事にしてやるんだぞ。傷つけないように、レディファーストでな!」
「ああ、うん。それはね。常々思ってますよ。父さんだって、母さんとマネージャーとして働いてたときそんな感じだったんでしょ?」
「ああ、レディーファースト以上に気を回さないといけないからね。本人はどう思ってたか知らないけど、細かいところまで気を使うよ。本当。でもなあ、母さんと本格的に交際したのは大人になってからだから、陸斗にはあーだこーだ、先輩面できないけどな。陸斗は肉食系男子だと思ってたけど、そうでもないんだな。」
「お、女の子は大切にしたいと思うから!父さんと同じで3年間手出さないのと一緒でしょうが。親に似てるんです~。」
「あ、俺のせい?確かに俺は高校の時、紗栄としか交際してないけどな?交際になってなかったらしいけども。陸斗は他にもいたんだろう?ってどんな話してんだよ。ほら、うち着いたからおりて。」
バンと勢いよく車のドアを閉めた。
若いうちはドキドキすることがたくさんあってうらやましいなあと思うさとしだった。
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